御霊うぶや
岩野泡鳴
うごめく は これ 何者 ぞ、
牢獄 に 等しき 闇 を――
ひとつ か と まなこ 据うれば、
その数 は 増して 行く なり、
まとへる ぞ みな 墨ごろも――
黒法師――無為 の 行列。
暗き より 暗き に 入りて、
かへり見る 光 だに なし。
わが霊 の なやむ 産屋 か。
相向ふ かゞみ の 法師、
相映り、幾多 生まるゝ
代 の かげ の 並ぶ その脊 よ。
その脊 をば いくつ 越ゆとも、
この 無言、つひに 死 ぞ なき。
底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社
1970(昭和45)年4月15日初版発行
1979(昭和54)年11月20日新訂版発行
底本の親本:「闇の盃盤」日高有倫堂
1908(明治41)年4月8日発行
初出:「新小説 第十一年第三巻」春陽堂
1906(明治39)年3月1日発行
入力:hitsuji
校正:きりんの手紙
2021年12月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。