長野県の上田市にある上田城は、名将真田幸村の居城として知られているが、その上田城の濠の水を明治初年になって、替え
その日は朝からからっと晴れた好天気で、気候も初夏らしく温い日だったので、人びとはお祭り騒ぎで替え
その日私の父も、面白半分その手伝いに往っていたが、正午近くなって濠の水が膝の下ぐらいに減った時、父の周囲にいた人びとが異様な声を立てた。見ると父のいる処から三
(何だろう)
と、父が思った瞬間、物凄い水音を立てながら、その渦が盛りあがると思う間もなく、全身真紅の色をした動物が半身を露わした。それは、額に太い二本の角のある大きな牛であった。人びとは驚いて逃げ出そうとしたが、牛の方でも驚いたのか、濠から駆けあがって、
今でもその替え乾の時に、現場へ往っていて赤い牛を見たという人がある。私も少年の時によくその話を聞かされたものだが、どうしても信じることができないので、作り話だろうと云って父に叱られたことがある。私の父はいいかげんな事を云う人でないから、