一國の首都

田山録弥




『一國の主都』と言ふ大きな繪入の書籍を十年前にある處で見たことがある。都府の寫眞が幾つとなく入つて居て、立派な帝王の宮室の寫眞もあつた。そして其各國の都府の光景を當時有名なる作者が書いた。巴里をフランソア・コツペが書き、東京をピエル・ロチが書いて居た。横濱東京間の汽車を、かうした國にも汽車がある! と罵倒して居たのを覺えてゐる。コツペが巴里を書いたのも、この巴里風の純粹のフランス文で、美術の都を描いたのが面白いと思つたので覺えてゐる。





底本:「定本 花袋全集 第十五巻」臨川書店
   1994(平成6)年6月10日復刻版発行
底本の親本:「定本 花袋全集 第十五巻」内外書籍
   1937(昭和12)年1月18日初版発行
※表題の「一國の首都」と本文中の「一國の主都」の混在は、底本通りです。
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2020年5月27日作成
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