バザンの小説

田山録弥




 バザンの[#「バザンの」は底本では「バサンの」]田園小説を二三册讀んだ。描寫などに稍々新らしい匂ひのする處がないでもないが、何うも全體の上の感じは餘りよくなかつた。“This, my son”など親と子といふ深い關係を材料にして居りながら、其中心にはねつから觸れたところはなく、其親に背いて巴里に出た息子の末路なども、作者に豫め成心があつて、さうした運命を得させたやうな氣がした。殊に息子の戀に就ての描寫が淺薄で、いかにも斧鑿の痕が歴々と見え透いて居るのは拙いと思ふ。それに、強いて誇大な事件をつくり出すのが、一番厭である。





底本:「定本 花袋全集 第十五巻」臨川書店
   1994(平成6)年6月10日復刻版発行
底本の親本:「定本 花袋全集 第十五巻」内外書籍
   1937(昭和12)年1月18日初版発行
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:きゅうり
2020年11月27日作成
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