ある日、つね子さんが、いつものやうにお庭へ出て、
兎来い 兎来い
赤い草履 買つてやろ
兎来い 兎来い
赤い簪 買つてやろ
兎来い 兎来い
ぴよんこぴよんこはねて来い
赤い
兎来い 兎来い
赤い
兎来い 兎来い
ぴよんこぴよんこはねて来い
と、『兎来いの唄』をうたつて遊んでをりますと、
『今日は、今日は』と云つて一疋の子兎が来ました。
『まア お前は子兎ね』とつね子さんが云ひますと、
『さうです。わたしは子兎ですよ。あなたのお唄が聞えたので参りました』
と子兎はなつかしさうに云ひました。
『あら、わたしの唄が聞えたの。お前のお
『わたしのお家ですか。ほら、お月さまの中にお餅を
『お月さまの中まで唄が聞えたの。』
『そりやアもう、手にとるやうによく聞えますよ。わたしのお友達は皆な真似てうたつてをりますもの。』
『さうなの』と、つね子さんは大へん感心をしまして、赤い鼻緒の草履と赤い花
生れて 初めて
赤い草履 はいた
生れて 初めて
赤い簪さした
お月さんの国へ もう帰らずに
ここのお庭の兎にならう。
赤い
生れて 初めて
赤い簪さした
お月さんの国へ もう帰らずに
ここのお庭の兎にならう。
と、うたひました。つね子さんも、
お月さんの国へ もう帰らずに
ここのお庭の兎におなり
草履 切れたら
また買つてあげよう
赤い簪
また買つてあげよう
ここのお庭の兎におなり
また買つてあげよう
赤い
また買つてあげよう
と、お庭中うたつて歩きました。子兎もつね子さんの後について、お庭中うたつて歩きました。
そのうちに、日が暮れて、
『わたしのお友達が
つね子さん ありがたう
赤い草履 ありがたう
つね子さん ありがたう
赤い簪 ありがたう
お月さんの国へ
遊びにおいで
赤い
つね子さん ありがたう
赤い
お月さんの国へ
遊びにおいで
と、お月さまの中で大勢の子兎がうたつてゐる唄が、ほんたうに