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空の上に、雲雀は唄を唄つてゐる
渦を巻いてゐる太陽の
光波 にまかれて
唄つてゐる――
渦を巻いてゐる太陽の
唄つてゐる――
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雨降りお月さん
死んだ
時雨の降るのに
下駄下され
死んだ母さん、後母さん
水下され
釣瓶が[#「釣瓶が」は底本では「鈞瓶が」]重くてあがらない
死んだ母さん、後母さん
親孝行するから
足袋下され
足が凍えて歩けない
死んだ母さん、後母さん
奉公にゆきたい
味噌下され
死んだ母さん、後母さん
銀行員のFさんは
新しい背広を着て――大足に出ていつた
黒いソフト、光る靴
暖い日の
午前九時頃
曲り角でバツタリ
A子さんと行き逢つた
(オヤ! オヤ!)
すらりとした――
桃割れ、白い歯
Fさんの顔
A子さんの眼
(オヤ! オヤ!)
二人はすれ違ふ
胸の動悸
背戸の畑の柿が赤くなつて来ると毎日烏が集つて来て喰つてゐた
子供に番をさせて置いても
烏は毎日来た
親父は洗濯竿の先へ
鶏の羽根をぶら下げて
柿の木の傍へ
立てて置いた
鶏の羽根が
ふわふわ動いてゐる
烏は遠くから見てゐて
来なかつた
時折、別な烏が来ても
鶏の羽根が動くとすぐに飛んでゆく
親父も子供も
安心して喜んでゐた
一晩風が吹いた
朝の暗い内から柿の木で烏が鳴いてゐた
洗濯竿が畑の中に倒れてゐる
子供は駈けて来て親父に
何処から種が飛んで来たのか
畑の中に
百姓は
抜いて捨てようと思つてゐる中に
夏が来た
曼陀羅華は
葉と葉の
白い花を咲かうとしてゐる
百姓は
花なんか咲かせて置くもんかと
たうとう秋になつて了つた
曼陀羅華の花は
すつかり実になつてゐる
百姓は憤つて――手をかけると
皆んな実は畑の中へ
ぱらぱらはぢけて飛んだ
歳の暮れも押し迫つて来てゐるのに
間借りしてゐる二人は
これからさき、どうすればいいのか
途方にくれてゐる
二人は
小さな火鉢を中にして
痛切に――お互に――暮しませうと云つてゐるが
矢張り涙にくれてゐる
二人は
銀貨だの、米だの、肉だの、炭だの
うしろの田の中に家鴨の子が
一所に連れてつてやるから
勢一杯
雁が云つた
家鴨の子は一生懸命飛んで見たが
体が重くてぼたりぼたり落ちて了ふ
雁は笑ひ笑ひ飛んで行つて了つた
家鴨の子は泣き泣き
親家鴨は
桶の中へ首を入れて水を呑んでゐた
子家鴨は
別な
大声で泣いてゐる
親家鴨は仕様なしに
そつちの方を向いて
聞えぬ振りをしてゐた
ヨーイトマーケ
ヨーイトマイタ――と深川の道路ツ
女の声が唄つてゐる
砂塵を捲いてタクシーは
轣き殺すほどの勢ひに――人々はどやどやと
街路樹の下に
右に左に
下町の深淵の中に沈んでゐる
力のぬけた、だるい顔
ガソリンのむかつく
女の声は唄つてゐる
灰色の中に住んでゐる LABORER の――声は次第に疲れてゐた――印袢纒の女の声は疲れてゐた
冬の日は
枯れ山の芒ア穂に出てちらつくが
帯に襷にどつちにつかず
赤い畑の
石を投げたら二つに割れた
石は
光つてる
しよなりしよなりと
もう光る
生姜畑の闇の晩
背戸へ出て来て
光つてる
特殊部落の――若い娘のお
お喜乃よ
もう晩方だ、
酒場の
アイ、帰るよ、だがな伯父さん
権さん今日は来なかつたか
年配の男は権と同じ工場の
権か、来ない、来ない
ありやあなア、お喜乃よ、権はもう
知らん、知らん、そなことない
伯父さん、お前嘘だらう
お喜乃は暖簾の傍へ寄つて来た
おぬしに、嘘云つてどうする
お喜乃よ、権はなア、工場から暇が出たんだ
お喜乃はすり寄つて年配の男の顔を
伯父さん、そりやアほんたうか
年配の男は黙つてお喜乃の顔を見てゐる。
酒場の中からどんたりどんたり話声が聞えて来る
目の苦茶苦茶した浅黄服を着た男が
オ、お喜乃か、ウム、美い綺縹だな
オイ兄え(年配の男に)
千鳥足で行つて了つた
ホ、権が来だ!
年配の男は、向ふを見ながらお喜乃に
権はひよつこり酒場の前にやつて来た
お喜乃は駈け寄つて権の手を握つた
権さん
お前どうした、工場から暇が出たのか
お喜乃は悲しさうに権の顔を眺めてゐる
権もお喜乃の顔を眺めてゐる
お喜乃の目からはらはらと涙が
権さん、工場やめてどうする
嘘だ、嘘だ
お前大坂へ帰へつちやンだらう
お喜乃はほろほろ声になつてゐる
夕焼の空は一面に赤く燃え立つてゐた
権は何んにも云はずに下を向いて立つてゐる
権さん、お前、大坂へ帰るなら
わたしも、一所に連れてつてお呉れな
又してもお喜乃の声は顫えてゐる
お喜乃は夕方になると赤い花
権はそれつきり遂ひぞ酒場に来なかつた
日比谷公園の
広ツ場に
編みあげの赤い靴を穿き
浅い弱い春の日は
鏡のやうに晴れてゐた
中学生が五六人
テニスネツトを引つ張つて
組に分れて遊んでる
軽くボールはぽんぽんと
向ふにこつちに飛んでゐた
祖母さんは、遠くの方へ
腰をかがめて見せてゐる
テニスコートの
向ふから
足の太い、毛の長い
強さうな
犬がさつさと
美晴子さんは、活動の『忠義の犬』を思ひ出し
丸い目をして見て居つた
あの犬も忠義の犬になるか知ら
同じやうに耳も垂れてゐるし
口も大きいし――
美晴子さんは
目をはなさずに眺めてゐる
中学生のラケツトが
犬の
犬は走つてラケツトを
口に
美晴子さんは
小さな声で祖母さんに
『忠義の犬』の話をした
足の短い
糸のたるんだ風船と空気のぬけた
飛べなくなつた飛行機と共に窓から投げませう
島の人形になるやうに
桐の小函に帆をかけて――大川の水に流してやりませう
井戸端に蚊柱が立つてゐる
早く来て喰はないか
蝙蝠の家は何処だ
山か里か
何故
蚊柱が立たば
迎ひに行くぞ
すぐに来て喰へよ
呼んでも、呼んでも
蝙蝠は居ない
臍をまげて隠れてゐる
臍をまげた蝙蝠に
蚊柱は喰はせるな
早くバケツで水かけろ
螢の親父が飛んでゐる
蚊柱が立つても
蝙蝠に咄すな
呼んでも呼んでも来ない
蝙蝠が来たなら
彼はお針をしてゐる妻君に
爪の伸びた手を出して
鋏を借せと云つた
鋏は妻君の膝のあたりにある
若い妻君は
彼の手を眺めるやうに見て
笑ひながら
鋏をとつて渡した
彼は日の当つてゐる縁側に
パチリパチリ切り初めた
爪は遠くまで飛んで
皆んな庭の上に落ちる
妻君はそーつと彼の
顔を覘いてゐた
彼は爪の奇麗になつた手を出して見せた
若い妻君は黙つて立つて笑つてゐる
彦兵衛が、家の前の畑に
郵便配達が来た
彦兵衛は汚れた手で
葉書を受け取つて眺めてゐる
配達は行つて了つた
電車の車掌に及第した
東京の忰からの葉書だ
彦兵衛の顔はにこにこした
麦鍋が
お霜が畠に
馬を牽いた男が
お霜が土手に足を出して休んでゐると
また弄戯つて通つてゆく
お霜がもう帰らうとすると
藪の中に
男は首を出してゐた
東京で
田舎にはない新言葉
西洋の煙草の名でもあるか知らと
留さんは思つてゐた
留さんが田うなひに出て行つた
頬の赤い
ボーリン衝きの若い監督は
サイノロジーと云つて笑つて行く
留さんは
その晩、夕飯を喰ひながら嬶に咄した
嬶は飴菓子を噛りながら
これも解せずで――首を
お
若い男が
だましに来た
小さな声でだましてゐる
お艶がざぶり湯をかけてやると
男はうろうろしてゐたが
裏から
すーつと逃げて行つた
馬は
がらんがらんと鳴らしてゐる
天の川は北から西へ流れてゐた
六蔵が家の前に立つて
田の稲を眺めながら
群雀の
稲の上に
かぶさるやうに下りた
六蔵は駈けて行つて
群雀はパツと飛び上つて行つて了つた
こんな日が幾日も続いた
田に稲がなくなると群雀は来なくなつた
六蔵は何んにも考へずに
寝そべつて煙草を吹かしてゐる
裏戸が開けつ放しになつてゐる
鶏が
鍋の中から
麦飯をつつき散らして喰つてゐた
隣の
米松は忌々しげに泥手で煙草を吸つてゐる
嬶は
帯の
鶏が厩の前へ駈けて来て立つてゐる
娘
劉さん
赤ん坊が生れたならばどうしませう
何処へたのんで育てませう
劉
ワタシ ワカラナイ アナタ スル ヨロシー
娘
横浜の叔母さん
新しい
娘
叔母さんに断られたらどうしませう
劉
ワタシ クニ トホイ ワカリマセン
娘
悲しいけれど捨てませう
顔の見えない闇の晩
ミルクの
娘
お月夜の晩であつたらどうしませう
お月夜が続いて居たらどうしませう
育てませうか捨てましよか
劉
ワタシ ニホン タツ アナタ タノム
娘
薄情な、薄情な劉さん
思ひ切つて――悲しいけれど捨てませう
ベンチの上に青々と月がさしたら泣くでせう
わたしの顔を屹度眺めて泣くでせう
劉さん
劉さん
その時のわたしの心はどんなでせう
親恋しがりの子雀よ
親が恋しく
海へ来たのか
海へはいつて蛤に
お前のことは
もう忘れてゐるぞ
幾ら待つてゐても
元の親には逢はれないのだ
帰れ、帰れ
海の端で日が暮れたら
子雀よ
ほんたうにはぐれ雀になつて了ふぞ
親の古巣に
妹はどうした、姉は居ないか
もう日は山から暮れて来る
海
子雀は磯にとまつて動かない
だまして山へ帰さぬか
百姓の足は怖いから
見たら逃げろと
親蛙が咄して聞かせた
子蛙は毎日
百姓の足は来なかつた
ある夕方
子蛙が沼の
百姓が鍬を担いでやつて来た
百姓の大きな足が
子蛙の
ずしんずしんと地響を打つて歩いて来る
子蛙は堪らなくなつて
沼の中に飛び込んで顫え顫え隠れてゐた
百姓はずんずん行つて了つた
子蛙が
親蛙は田の中から跳ねて来て
一所に連れて帰つた
怖い百姓の足が毎日田の中に這入つて来た
百姓はたうとう子蛙の居所までも
跡方なしに耕して了つた
それでも子蛙は生れた田の中が
自分の家だと思つて居たら
皆な怖い足の百姓のものだと親蛙に聞かされた
若い女は
水菓子屋の表に立つて
パイナツプルを買つてゐる
若い男は
店の中にはいつて
パイナツプルを買つてゐる
男が取り次いでくれた
パイナツプルを受けとるとき
女の手が顫えた
男の手
女の手
女の手は顫える
真昼間でごわせう
イヤハヤ
むんぐらむんぐら居やあした
畑の土は、
どなもんか
畑ン中は、青空天上、不思議はごわすめえ
喉笛鳴らした、ケーケーケー
こりやまた事かと
追つかけ廻つた、
ぶつ飛びあがつた、飛んだわ飛んだわ
蜻蛉は
地主様の一人娘が
娘に
どどの詰りが
エヘン
孕み女になりやあした
畑ン中の豆ン花
朝つぱらから何事ぶたずに
べろりと咲いてござりやあす
野兎の子と
早く逃げぬか
焼け死ぬぞ
飛んで逃げた
野兎の子はどうした
山の上に走り腐つて逃げたのが
野兎の子でなかつたか
あれは宿なしの山
鼬だと鼻ン先が黒い筈だ
黒いとも、黒いとも
真黒だ
駈けてつて見ろ
山一面に火の海だ
逃げ道がなくなる
野兎の子はどうした
山に居るのか居ないのか
息を切つて逃げて来た
雉の子が飛んでつた山の方へ
夢中になつて走つたぞ
鶏
己の家の
米と麦が
向ひ合つて重ねてあつた
己は背戸の杉山に
懸巣が来て鳴くのが
うれしくて堪らなかつた
己が馬に乗つて野にゆくと
頬白は
藪の上に囀つてゐた
己は座敷の丸窓を開けて
紅い芙蓉の花を眺めながら
毎日、本を読んで遊んでゐた
己が飛行機の話をすると
ほんたうとは思はずに帰つて行つた
己は
村の子供等を集めて
庭の植込の中を歩き廻つて遊んだ
己は日暮方になると
裏の
バーンスの詩の純朴に
己は百年も二百年も
黙り腐つた蝸牛よ、渦を巻いてゐる蝸牛よ
何が恋しい
篠藪に
さら、さら、さらと雨が降る
己は暮らした
蝸牛よ
己に悲しいコスモスの
花と花とに雨が降る
もう、己の家は
蝸牛よ
田も売らう、畑も売らう
篠藪に
さら、さら、さらと雨が降る
己が顔を洗つてゐると
南天の実を食つてゐる
己が売つて了つた馬を
馬は博労に牽かれて門を出ながら
悲しさうに厩の方を振り向いて見てゐた
己は門の外まで駈けて行つて見た
冷たい朝日がさしてゐる
田甫の中を
馬は首を垂れて博労に牽かれて行つた
己は茫然として縁側に腰を掛けてゐた
鵯が南天の木から
己の方を向いて鳴いてゐた
己の家の囲垣は樫の木を売つて了つてから
ほんたうにみそぼらしくなつて了つた
緑青の
霜解の雫がじたじたと落ちてゐる
己が売つて了つた田の中で
己は悲しくなつて田の方を見ないで通つて来た
青々と麦が育つてゐる
己は悲しくなつて畑の方を見ないで通つて来た
己が
真黒になつて茂つてゐる
己は悲しくなつて山の方を見ないで通つて来た
己は悲しくなつてもうこの村には居られない
己は
何故己は死ねずに
この村に居るだらう
己が持つてゐた
質屋の隠居が
毎日持ち歩いて吸つてゐる
己は、それを見るたび胸が一杯になつた
己が着てゐた夏
古着屋の
毎日負ひ歩いて見せてゐる
己はそれを聞くたび胸が一杯になつた
己の家で飼つて置いた鶏を
己が売つてやると
すぐ縊られて喰はれてゐる
己は鶏の羽根を見て胸が一杯になつた
己はもう希望も欲もなんにも無くなつて了つた
生きたくも死にたくもなんともない
この村にさへ居なかつたら
己の心はのんびりしよう
己の家のうしろの沼に風が吹く
実にしみじみ風が吹く
見れば見るほど
風が吹く
山の方から風が吹く
広い河原の
風は鳴り鳴り吹いて来る
己が生れたこの村の
井戸の釣瓶に
風が吹く
風は鳴り鳴り吹いてゐる
己は少年の頃
巣を毀された親雀は、日が暮れて了つても廂の上にとまつてゐたことも覚えてゐる
穀倉は田を売つて了つた同じ年に己が売つて了つた
穀倉の跡には青い
己は庭へ出て見るたび熱い涙が胸にこみあげて来た
己は門の屋根の
己は靴を穿いて
途中で丁爺に遭つた
己は仕方なくて銅の話をした
『お前さまの親御に御恩は返えせねえから、せめて――お前さまのお家でも繁昌させてえと――鎮守様にも御願をたててゐるでがす――』
丁爺は悲しい顔をして己の顔を見てゐた
己もほんたうに悲しくなつた
己は古金屋へ行かずに帰つて来た
己は庭木を売らうと思つて植木屋をよんで来た
丁爺が来た
丁爺の目には涙が一杯に浮んでゐた
己は堪らなくなつて家の中に駈け込んで一人で泣いた
西風が稲の上に毎日吹いた
丁爺は己の家の庭へ来て
いつも悲しい顔で立つて眺めてゐた
己は丁爺に
古くから己の家にあつた紫檀の蓋の湯呑を
『お前さまの形見でがな――』
丁爺も己も一所に泣いた
百姓はうれしさうに馬を牽いて歩いてゐる
己に楽みのない収穫の秋がたうとう来た
己は朝の
ズツクの鞄を
腰の
『お前さま、御無事で暮らして下せえ』と己に云つて泣いてゐた
己が野へ行くたび
藪の上にとまつて鳴いてゐた
頬白よ
己はお前のことをほんたうに懐しく思ふ
己はこの村に家も屋敷もなくなつて了つた
己は東京の友達を
今日は別れだ
頬白よ
お前は達者でゐて呉れよ
己は東京から
二度この村へ帰つて来られるかどうか
今のところでは解らない
帰つて来ないとしても
お前はいつまでも達者でゐて呉れよ
己が東京へ行つて
何処に住むようになるか未だ解らない
本郷に住んでも浅草に住んでも
この村のことは忘れて了つても
頬白よ
己はお前が懐しくて忘られない
畑の麦が黄ばんでも、田の稲が黄ばんでも
この村には
もう己の
お前は何を喰つて暮らすだらう
虫でも拾つて喰つて生きてゐて呉れろよ
己が東京にも
東京に居ないと聞いても
頬白よ
決して悲しんで呉れるな
お前は達者でいつまでもこの村で暮して呉れろよ
東京に来て見たものの――
どうしよう
木更津に――お前の伯父がある筈だ
己も一所に
連れて行つて呉れぬか
猫よ
卯の花が咲く
夏が来た
沼の中に
どつちにしろここには永く居られない
己に約束の夏が来た
この家は明日にも空けて返さねばならぬ
己に余裕の金があらば
せめて夏中でも
ここの葛飾で暮らしたかつた
己はもう諦めて神戸へ行かう
己がたつて行つた
誰が来てこの家に住むだらう
自分の家を
他人の家でも住み馴れた家は恋しい
一生涯借家住ひで暮らさねばならない己は
旅烏のやうだ
去年の夏は東京に居て今年の今は葛飾に居る
他人の知らない涙が
己の胸にはいつも一杯に溜つてゐる
これが自分のものと
己はどんなに嬉しいだらう
また住み馴れたこの家をたつて
知らぬ他国に行かねばならぬ
己に悲しい夏が来た