大正八年
澄み渡つた夕暮れの
空に、鳴き鳴き、雁が来た
親の雁は
下を見い見い飛んでゆく
子の雁も
下を見い見い飛んでゆく
親の雁は
先へ先へと飛んでゆく
子の雁も
親の雁が
首を伸して鳴き出すと
子の雁も
首を伸して鳴いてゐる
雁は鳴き鳴き、夕暮れの
空を渡つて、飛んでゆく
[#改ページ]
大正九年
どぶどぶ沼に
鳴いてる
どぶどぶ沼は
ぴかぴか
光る
子供の
ぱつたぱつた
遠い遠い国へ
帰つて
行つた
石団子持つた
石地蔵さまの
お
石団子 投げろ
あつち向いて投げろ
ほウ ほウ 鳥が
お山で啼いた
もう日が暮れる
お
世界で一番 よい
子供の 小父さん
アンデルセン
かしこい日本の 子供らに
お話 聞かそと
字々かいた
学校の うしろで遊んでだ
雀も お話
聞きに来い
お寺の
盗まれた
種なしだ
和尚さん竹藪
掘つて見た
掘つても掘つても
種なしだ
よくよく種なし
竹藪だ
和尚さん「これは」と
あきらめた
コツコ コツコ 鳴いた
親鶏 鳴いた
子鶏も鳴いた
あつち見て鳴いた
こつち見て鳴いた
親鶏 子鶏
コツコ コツコ 走れ
下駄買つてはかしヨ
[#改ページ]
大正十年
蜂 蜂 飛んで来た
頭の用心
御用心
下駄ぬいて投げろ
投げても駄目だ
頭の用心 御用心
鳩の家は どこだ
馬に乗つて 往つたか
歩いて 往つた
ほんとか 嘘か
何にしてたツけ
こつち見てたツけ
貰はれました 貰はれました
小さい時に
貰はれました
お
お馬に乗せて
貰はれました
どの山越えた どの川越えた
お馬に乗せて
貰はれました
お馬も
小さい時に
貰はれました
ここの井戸は
底なし井戸で
昔 お
雨の降る夜に
一ツ目小僧が
ざツざツざツと
雨の降る夜に出た井戸だ
お化が棲んでた
ここの井戸は
地獄につづいた古井戸だ。
チラポラ チラポラ
麦の穂は
畑さ 畑さ
出てたつけ。
この頃
スツチヨン チヨン
スツチヨン チヨン。
姉さま この下駄
いつ
それ見ろ それ見ろ
いつ貰ろた。
云はねえもんだ 云はねえも
麦の穂は
畑さ チラポラ
出てたんべ。
米
米搗いて見せろ
一升 米搗いた
二升 米搗いた
米搗き
もつと搗いて見せろ
三升 米搗いた
五升 米搗いた
米搗き
麦搗いて見せろ
一斗 麦搗いた
二斗 麦搗いた
米搗き
もつと搗いて見せろ
くたびれました
くたびれました
兎はどちらへ ゆきました
十五夜お月さんに つれられて
遠い 遠い お国へ
ゆきました。
お月さんの
お
お月さんに つれられて
行つたのよ
兎は 帰つて来ないわね
お月さんの子供になつちやつて
兎は帰つて
来ないわね
お月さんのお国で ぽつたんこ
よいよい も一つ ぽつたんこ
お餅ついて 兎は
ゐるんだよ。
道楽雀 子供をさがせ
啼いたでないか
向の山は 道楽雀
天狗さん
ゐるよ
天狗さん羽根を 山一杯に
ひろげて
干した
「お
急いでさがせ
道楽雀
ぽつこ下駄はいて
向の山見てる
とんぼの母さん
がんぎりお
父さんとんぼも
がんぎりお眼
とんぼの
がんぎりお眼
子供のとんぼも
がんぎりお眼
とんぼのお眼は
がんぎりお眼
お眼が頭で
光つてた。
畑の中さ
柿の種を
誰が捨ててつた
雀が捨てた
雀が捨てた
拾つて捨ててつた
倉の前の
こぼれた
誰が持つてつた
桑の木畑に
とまつて啼いてた
雀が持つてつた
渡り鳥が
渡つて来て
飛んでつた
山の上の
立枯れ
飛んでつた
子供の鳥は
飛んでつた
親の鳥は
飛んでつた
三羽も 五羽も
順々にならんで
飛んでつた
[#改ページ]
大正十一年
大きい木の葉は
後になり
風に吹かれて
駈けてゆく
木の葉のお使ひ
駈けてゆく
ころころ転げて
駈けてゆく
凧 凧 水汲んだ
ザンブザンブ汲んだ
田舎の一軒家の
井戸から汲んだ
ザンブザンブ汲んだ
凧 凧 風吹いた
汲んだ水まけた
田舎の一軒家の
畑さ まけた
釣瓶で 柄杓で
ザンブザンブまけた
今年は ポチの
ポチは いくつに
なつたでせう
丁度 三つに
なつたでせう
七つで 学校へ
ゆくでせうか
学校はありません
場所 広い道路。(異人さんの門前)
時 小春凪の日曜日。
登場者 きよ子さん。(七八つ位の少女)
つね子さん。(お友達の少女)
赤い帽子を冠つた白い毛の犬。
青い帽子を冠つた褐色 の犬。
大勢の少年と少女。
時 小春凪の日曜日。
登場者 きよ子さん。(七八つ位の少女)
つね子さん。(お友達の少女)
赤い帽子を冠つた白い毛の犬。
青い帽子を冠つた
大勢の少年と少女。
きよ子さん
『赤い帽子冠つて
犬が出て来たよ
つね子さん
『異人さんの 犬だから
遠くで見てゐませう。
きよ子さん
『青い帽子冠つて
犬が出て来たよ
つね子さん
『異人さんの 犬だから
遠くで見てゐませう。
白い犬
『異人さんの 犬だなんて
子供が云つてるよ
褐色の犬
『子供なんか構はないで
あつちへ
きよ子さん
『犬がなんか小さい声で
お話してゐるわ
つね子さん
『帽子なんか冠つて
おしやれな犬だわね。
白い犬
『おしやれだなんて子供が云ふから
あつちへ往きませうよ
褐色の犬
『誰もゐないあつちへ往つて
駈けくらしませうね。
きよ子さん
『犬が駈けつこするんだつて
話してゐるのよ
つね子さん
『犬の駈けつこ面白いわね
ついてつて見ませうよ。
白い犬
『子供が
急いで往きませうね
褐色の犬
『白さん
急いでお歩きよ。
きよ子さん
『犬の歩くはほんとに
早いのね
つね子さん
『犬の
早いんだわよ。
白い犬
『ついて来るとうるさいから
駈けて往きませうよ
褐色の犬
『ほんとにうるさい
子供だわね。
トツ トツ トツ トツ(駈けてゆく足拍子)
きよ子さん
『ほら駈けだした
つね子さん早くお駈けよ
つね子さん
『きよ子さん
早く お駈けよ。
トツ トツ トツ トツ(駈けてゆく足拍子)
白い犬
『お
褐色の犬
『白さん 負けずに早くお駈け。
トツ トツ トツ トツ(駈けてゆく足拍子)
集つて来た大勢の少年
『赤い帽子冠つて 犬が駈けてぐよ
集つて来た大勢の少女
『青い帽子冠つて 犬が駈けてぐよ。
トツ トツ トツ トツ(駈けてゆく足拍子)
大勢の少年と少女
『きよ子さん つね子さん 負けずにお駈け
きよ子さんとつね子さん
『赤い帽子 早いな
青い帽子 早いな。
トツ トツ トツ トツ(駈けてゆく足拍子)
(幕)
赤い
ポプラの 中の
赤い 屋根
空に 飛んでる
飛行機を
窓から見てゐる
姉
「わたしも大人になつたなら
飛行機
姉は 妹に
云ひました
「わたしも大人になつたなら
飛行機乗になるんだ」と
妹も 姉に
云ひました
ポプラの 中の
赤い 屋根
窓から見てゐる
姉 妹
電車と、電車と
走つてぐ
赤い旗 見せたら
いつまで たつても
動かない
青い旗 見せたら
走つてぐ
一緒に 見せたら
車掌さんは たまげて
かけ降りた
赤い旗 見せても
停らない
青い旗 見せても
動かない
たちまち 故障車に
なつちやつた
故障車と 故障車が
帰つてぐ
藪の中で
ホー ホー ホケキヨ
ホー ホケキヨ
赤い帯 ほしくて
ホー ホケキヨ
藪の外で
ホー ホー ホケキヨ
ホー ホケキヨ
赤い帽子 ほしくて
ホー ホケキヨ
逃げてつた
追つてつた
御門の 外まで
追つてつた
猫は お屋根へ
あがつちやつた
犬は 下から
上見てる
猫は 上から
下見てる
犬は ワンワン
吠えてゐた
猫は ニヤン ニヤン
啼いてゐる
犬も 猫も
困つちやつた
赤い花咲いた
いい花咲いた
照れ照れ おてんとさん
照れ照れ おてんとさん
いい歌 うたほ
いつしよに うたほ
照れ照れ おてんとさん
照れ照れ おてんとさん
くびふり人形は
タツク タク
お顔が まるくて
タツク タク
友禅模様の
くびふり人形は
タツク タク
タツク タク
お
タツク タク
博覧会の
朝鮮飴は
赤いお
日暮し
ちーツと似てゐる
赤いお家
伝書鳩にも
赤いお家を
建てておやり
博覧会の
器械館は
丸いお屋根
雨が降つても
ころころ転げて
落ちちまう
伝書鳩にも
丸いお屋根で
お月さんの 兎が
落つこちた
畑ン中さ ぼろりと
落つこちた
兎が 梯子を借りに
歩いてる
『梯子借せ』『梯子借せ』
『今晩は』
『お月さんの兎だよ
梯子借せ』
梯子一
担ぎあげた
屋根の上さ 兎が
担ぎあげた
梯子かけて お月さんへ
あがつて往つたつけ
白い飴 見せたら
いーや いや
お
お
匍つてつた
赤い飴 見せたら
にーこ にこ
お母さんの 膝から
匍つて来た
赤い飴 とる気で
匍つて来た
雪の しんしん
降る夜さに
はだしで歩くは
雪女
ここのお
嬢つちやんに
飴買つてやるだと
立つてゐる
飴は 何に飴
雪の飴
雪の飴だと
ほんか知ら
きつと だまして
嬢つちやんを
つれて行く気で
ゐるんだよ
雪女は、雪の降る夜にでる魔性のもので、雪の精だと言ひ伝へてあります。
姉さんが いぢめて
泣かしたの
いえ
泣かしたの
猫が お手鞠
とつちやつた
お手鞠 とられて
泣いてるの
この児の
金茶色
この児に 黒い油を
買つてやろ
幼いときは どの児も
金茶色
黒い油を つけても
駄目なのよ
駄目なら 何 何
買つてやろ
可愛 可愛
買つておやり
この児に 胸掛を
買つてやろ
可愛 可愛 赤い靴も
買つてやろ
赤い靴を はかせて
歩かせよう
胸掛を かけさせて
遊ばせよう
赤い風船 飛ばしてゐたら
鳩が来た
可愛眼で
赤い風船 見てゐたよ
青い風船 飛ばしてゐたら
鳩が来た
可愛眼で
青い風船 見てゐたよ
赤い風船 かくしたら
飛んで行つちやつた
青い風船 かくしたら
飛んで行つちやつた
夜になると
ほたるは
灯をとぼす
草の上に
とまつて
灯をとぼす
昼になると
ほたるは
かくれてる
赤い帽子を
かぶつて
かくれてる
七面鳥が 怒つて
ふくれてる
七面鳥よ なんだつて
怒つたの
犬が立つて 見てたから
怒つたの
七面鳥は ほんとに
怒りんぼ
犬があつちへ
行つちやつたから
怒らないで
大勢の子供「流れ星が流れた
糸を引いて 流れた
甲の子供 「
助け船 送れ
乙の子供 「外浜は
船の底 ぬけた
大勢の子供「青い糸を 引いて
流れ星が 流れた
甲の子供 「港の船頭さん
助け船 送れ
乙の子供 「港も 時化で
船の底 ぬけた
青いお星さん
降らして
花火が
落ちて来た
青いお星さん
すーつと
消えちやつた
青い
降らして
花火が
落ちて来た
青い芒も
すーつと
消えちやつた
金持ちだ
金蔵建てた
蔵建てた
飴屋で 水飴
買つて来た
黄金虫は
金持ちだ
金蔵建てた
蔵建てた
子供に 水飴
なめさせた。
赤い花 咲かして
見せませうか
青い花 咲かして
見せませうか
なりました
パツパと 咲かして
見せませうか
兎のお船は
なんの船
木のお船
狸のお船は
なんの船
花でこさへた
土の船
兎はお
木のお船
狸はお馬鹿で
土の船
一の花まけた
二の花まけた
夕やけ赤いに
赤い花まけた
二の花かつた
三の花かつた
お星さまあがれ
青い花かつた
蟹は
持つてゐた
お猿は 柿の種
持つてゐた
柿の種と 握飯と
とりかへた
お猿が だまして
とりかへた
蟹は お猿に
だまされた
蟹は 泣き泣き
帰つていつた
お竹さんと
お仲よし
お竹さん お竹さんと
呼んでゐる
お梅さんとも 鸚鵡は
お仲よし
お梅さん お梅さんと
呼んでゐる
鸚鵡は 誰とも
お仲よし
お花さん お花さんと
呼んでゐる
兎はぴよんぴよんかけてつた
亀は早くはかけられない
兎は途中で昼寝した
亀はその
あはててかけてももう遅い
兎はとうとう負けました
亀は兎に勝ちました
山が暮れて来た
山が暮れて来た
高い山から
日が暮れて来た
妹 たづねて
啼け 啼け
広い野原に
日が暮れて来た
日が暮れて来た
子供たづねて
啼け 啼け 雉子
シヤボン玉 飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こはれて消えた
シヤボン玉 消えた
飛ばずに消えた
生れて すぐに
こはれて消えた
風 風 吹くな
シヤボン玉 飛ばそ
あけの明星
金の星
ピカ ピカ
ピツカリコ
豊年よ
今年は 豊年よ
宵の明星
金の星
ピカ ピカ
ピツカリコ
大漁よ
今年は 大漁よ
ゆめのおくにのこひつじは
きんのおすずをさげてゐる
きんのおすずは
シヤン シヤラ リン
ゆめのおくにのこひつじは
ぎんのおすずをさげてゐる
ぎんのおすずも
シヤン シヤラ リン
ゆめのおくにのこひつじは
ほしのくびわをさげてゐる
ほしのくびわも
シヤン シヤラ リン
[#改ページ]
大正十二年
なつかしい
森の家の
野の鳥は
野に帰り
淡雪は
おぼろに降りし
少女子が編物してる
編物にさへ
しとしとと夜は更けゆく
淡雪は
おぼろおぼろと
森の家の
森にも降りし
優しい 鳥よ
春の歌
春待つ 鳥の
可愛い声
優しい 歌よ
春の鳥
春来る 鳥の
可愛い歌
甲の少女
「渡り鳥が
とまつてゐるから
聞いてみよう。
乙の少女
「渡り鳥よ
いく日かかつて
ここまで来たの。
渡り鳥
「夜も 昼も
飛び飛び 飛んで
十日かかつて ここまで来たの。
甲乙の少女
「渡り鳥の
お国は 随分随分
遠いのね。
ポン ポン
ポン ポン
ひく ピアノ
ド レ ミ ファ
ソ ラ ソ ミ
うたふ うた
ポン ポン
ポン ポン
ひいて ゐる
ド レ ミ ファ
ソ ラ ソ ミ
うたつてる
舌切雀は
可愛い雀
たすきをかけて
お庭はきしてる
サラリ サラ サラ
サツサラリ ――(お庭をはく音)
舌切雀は
可愛い雀
おふろをたてて
おぢいさんを待つてた
コトン コト コト
コンコトリ ――(おふろのわく音)
舌切雀は
可愛い雀
づきんをぬつて
おぢいさんにとどけた
チツク チク チク
チツク チクリ ――(おぬひものする針の音)
(『可愛い』は『かはいい』とうたふも随意のこと)
木の
南京お蕎麦を
売りに来た
お蕎麦だ お蕎麦だ
南京お蕎麦だ
買はんかい
南京さんは
ぼつたりぼつたり
歩いてる
お蕎麦だ お蕎麦だ
南京お蕎麦だ
買はんかい
南京さんは
チヤルメラ吹いて
きよろびり きよろびり
立つてゐた
お蕎麦だ お蕎麦だ
南京お蕎麦だ
買はんかい
ゆき ゆき
ふつてきた
おにはに
ふつてきた
おやねに
ふつてきた
おにはは
まつしろだ
おやねも
まつしろだ
おたまじやくしに
手が生えた
蛙になつた
ピヨンピヨン
ピヨン
おたまじやくしに
足が出た
蛙になつた
蛙になつた
ピヨンピヨン
ピヨン
まきばでひばりが
ないてゐた
こうしはねむそな
かほしてる
まきばにクロバーも
さいてゐた
ひつじもねむそな
かほしてる
さいた さいた
さくら
さくらが
さいた
ことりになつて
とんで
とんで
あそぼ
とんで とんで
あそぼ
さくらが
さいた
寒いロシヤの
親なし
子供
赤い踊の
靴ほしからう
靴がほしくば
日本へ
渡れ
赤い踊の
靴買うてはかせう
一つ
赤い花さがしに
とんできた
一つ蝶々がとんでつた
赤い花ないから
とんでつた
二つ蝶々がとんできた
青い花さがしに
とんできた
二つ蝶々がとんでつた
青い花ないから
とんでつた
雪々降れ降れ
今夜降れ
今夜のこの雪
一杯つもれ
つもれよこの雪
一杯つもれ
サンタ・クロースの
子供が待つてる
小父さんよ
おみやげ たくさん
持つて来る
[#改ページ]
大正十三年
あの町この町
日がくれる 日がくれる
今来たこの道
帰りやんせ 帰りやんせ
お
遠くなる 遠くなる
今来たこの道
帰りやんせ 帰りやんせ
お空に
星が出る 星が出る
今来たこの道
帰りやんせ 帰りやんせ
啼け啼け 小鳥
野にすむ鳥よ
春吹く風に
桜が咲いた 桜が咲いた
桜の花よ
静な花よ
霞の中に
あかるく咲いた あかるく咲いた
あかるい春の
小鳥の唄よ
野で啼け 小鳥
春吹く風よ 春吹く風よ
霞の中の
あかるい桜
野にすむ鳥よ
曲つた 曲つた
山羊の
たべたから曲つた
伸ばそ 伸ばそ
山羊の角 伸ばそ
※[#「くさかんむり/剌」、U+44F6、46-下-8]のない草を
見せ見せ 伸ばそ
伸びろ 伸びろ
山羊の角 伸びろ
※[#「くさかんむり/剌」、U+44F6、47-上-1]のない草を
見せるから 伸びろ
駄目だ 駄目だ
山羊の角 駄目だ
※[#「くさかんむり/剌」、U+44F6、47-上-5]のある草を
たべるから駄目だ
山のお姫さん
尾長鳥
お姫さんは
朝から
チヤチヤラ チヤラ
山で朝から
チヤチヤラ チヤラ
山のおしやべり
四十
おしやべりや
朝から
ピチヤラ ピチヤ
山で朝から
ピチヤラ ピチヤ
桜の花が
ぱつぱと咲いた
あの木に ぱつぱ
この木に ぱつぱ
オヤオヤこれは
美事に ぱつぱ
桜の木なら
どの木も ぱつぱ
ヤレヤレこれは
美事に 咲いた
花咲爺は
忙がしことだ
帰る燕は
木の葉のお船ネ
波にゆられりや
お船はゆれるネ
サゆれるネ
船がゆれれば
燕もゆれるネ
燕帰るにや
お国が遠いネ
サ遠いネ
遠いお国へ
帆のないお船ネ
波にゆられて
燕は帰るネ
サ帰るネ。
すすきの蔭で
ねんねこんぼ
産んだ
ねんねこんぼ
お月さんは
里にやつた
ねんねこんぼ
可愛い
わが児は可愛い
お月さん
ねんねこんぼ
見に往つた
ねんねこんぼ
寝てた
泣き泣き寝てた
ねんねこんぼ
泣くな
里子にや遣らぬ
すすきの蔭へ
今日から
帰ろ
お月さん
ねんねこんぼ
抱いて言つた
(註、ねんねこんぼは赤ンぼのこと)
雨降りや冷たい
風吹きや 寒い
ピヨツ
ピヨツ
ピヨツ
親鳥や来ない
お
ピヨツ
ピヨツ
ピヨツ
蝶々の
お
菜の花つづき
菜の葉の中を
ちら ちーらと
菜の葉の上を
ひら ひーらと
蝶々は
毎日
帰つていつた
とんぼ来い来い
井戸の釣瓶は
日が永い。
草にとまるな
チツクリ虫ゐるぞ
今朝も泣く児の
足刺した。
ほたるの
お客さん
青い提灯
青い提灯
とぼして
まゐりました
ほたるの
帽子は
赤い帽子
赤い帽子
かぶつて
まゐりました
野の鳥小鳥
可愛がつておやり
ちツちと鳴いて
とんでとんで歩く
こやぶのかげは
風吹きやさむい
こやぶのかげは
雨降りやぬれる
野の鳥小鳥
可愛がつておやり
ちツちと鳴いて
とんでとんで歩く
まゐりました
ゲツコゲツコ鳴き鳴き
まゐりました
蛙のお客さん
ゲツコゲツコゲ
あつち向いてこつち向いて
ゲツコゲツコゲ
こつち向いてあつち向いて
ゲツコゲツコゲ
蛙のお客さん
ゲツコゲツコゲ
お
雨下され
畑が枯れる
田が枯れる
田が枯りや
子が泣く
子が泣きや
親 泣く
お星さん
水下され
掘井戸ア涸れる
沼ア涸れる
風は秋かや
そよそよと
野末の草に
そよそよと
風は吹く
野末の風も
今は秋なれや
野に鳴く虫は
秋の虫かや
ほそぼそと
草端の蔭に
ほそぼそと
虫は鳴く
草端の虫も
今は秋なれや
小土竜
畑でトンネル
作つてる
首を出すな
足出すな
お日さま畑に
出てゐるぞ
首出しや首ヤ
焼ける
足出しや足ヤ
焼ける
チロリン チロリン チンチロリン
チロリシ チロリン チンチロリンと
松虫は
お藪にとまつて鳴きました。
お藪の蔭は
茨とすすき
茨にやさされ
すすきにや切られ
足が 痛い
チロリン チロリン チンチロリン
チロリン チロリン チンチロリンと
松虫は
お藪にとまつて鳴きました。
石山寺の秋の月
瀬田の唐橋
たれも渡らぬわしや渡る
橋の上から下見れば
水にうつるはわが姿
月は姿にみとれてる
帰る
風が吹かなきや
帰られぬ
帰らにやわが児に逢はれない
月は帰りを
急いでる
竹の脚
走れ 歩け
歩け 走れ
茄子のお馬は
歩かない
胡瓜のお舟は
走らない
歩け 走れ
走れ 歩け
烏の先生は
カーカー啼いた
啼き啼き教へた
カキクケコ
烏の生徒は
カーカー啼いた
啼き啼きおぼえた
カキクケコ
先生も生徒も
カーカー啼いた
烏の学校は
カキクケコ
河原の藪に
なにがゐる
雀が一羽
すんでゐる
子供が通ると
出て見てる
大人が通ると
隠れてる
河原の藪に
なにがゐる
雀が一羽
すんでゐる
雀になれよ
雀になれよ
木の葉がとんで
雀になれよ
雀になつて
お屋根で遊べ
雀の鳥は
お屋根で遊ぶ
雀になれよ
雀になれよ
お屋根へいつて
雀になれよ
向ふ横丁で
小石を拾た
拾た小石を
袂重くて
振ろとて振れぬ
袂たたんで
お膝に載せた
載せた袂を
たたいてゐたりや
石は転げて
袂は残る
[#改ページ]
大正十四年
證、證、證城寺
證城寺の庭は
ツ、ツ、月夜だ
皆出て来い来い来い
ぽんぽこぽんのぽん
負けるな、負けるな
和尚さんに負けるな
来い、来い、来い来い来
證、證、證城寺
證城寺の萩は
ツ、ツ、月夜に花盛り
己等の友達ア
ぽんぽこぽんのぽん
浦島太郎は
浦島太郎は
玉手箱
開けずにゐたなら
浦島太郎は
千年たつても
まだ若い
浦島太郎は
開けて口惜や
玉手箱
開けずにゐたなら
浦島太郎は
万年たつても
まだ若い
赤い牛
親牛
角振つて
あるく
黒い牛
親牛
角振つて
あるく
角なし
仔牛
首振つて
あるく
くぐろとしたりや
ホウホケキヨと
一声啼いた
三の鳥居を
くぐろとしたりや
ホケキヨホケキヨと
二声啼いた
一の鳥居の
鶯さんよ
三の鳥居の
鶯さんよ
わたしやたづねる
花が咲いたか
咲きましたろか
一の鳥居の
鶯さんは
一つ咲いたと
申されました
三の鳥居の
鶯さんは
三つ咲いたと
申されました
三つ咲いたは
いつ咲きました
一つ咲いたは
いつ咲きました
一つ咲いたは
今朝咲きました
三つ咲いたも
今朝咲きました
三の鳥居の
鶯さんよ
花は
いつ咲きまする
一の鳥居の
社の梅は
花は十まで
明日咲きまする
出た 出た
出たよ
出たよ
子宝三番叟
種蒔き三番叟
ピー ピツピツ
ピー ピー
出た 出た
出たよ
三番叟が
出たよ
ピー ピツピツ
ピー ピー
子宝三番叟
種蒔き三番叟
出た 出た
出たよ
ピツピと
出たよ
梅に鶯
ちらりととまり
ちらりとまつて
云ふことにや
竹に雀は
仲よくとまる
梅にわたしは
来てとまる
ホホ ホケキヨ
ホ ホケキヨ
皆さん
おいで
お家根の上に
烏がゐたよ
お家根の上に
雀がゐたよ
烏は山に
雀は藪に
皆さん
おいで
烏は帰る
雀は帰る
ねこじやねこじやの
ねこねこ
砂利が流れる
小砂利が流る
川の川下
かぞへてみたりや
砂の数ほど
小砂利が流る
ねこじやねこじやの
ねこねこ楊
ここのこの川
小砂利が流る
眠れ、眠れ
虹の橋 かかる
虹の橋かかりや
起しにゆくぞ
眠れ 眠れ
合歓の花眠れ
虹の橋 かかる
夢みて眠れ
千本松原の
松の木は
風にゆられて
葉が落ちる
落ちるその葉は
ぱらぱらと
こぼれ松葉に
なつて落ちる
千本松原の
松の葉は
こぼれ松葉に
なつて落ちる
こぼれ松葉の
松の木は
風にゆられて
葉が落ちる
桜ちらちら
花笠
足先そろへて
踊ろよ 踊ろ
とんとんとんのとん
紅い花笠
桜の小枝
小枝かついで
踊ろよ 踊ろ
とんとんとんのとん
袖にちらちら
袂かざして
踊ろよ 踊ろ
とんとんとんのとん
スツタスツタスツタスツタ
急ぎのお使ひ 急ぎのお使ひ
とほせんぼ とほせんぼ
スツタスツタスツタスツタ
通して下さい 通して下さい
とほせんぼ とほせんぼ
扉が重くて開きません。
スツタスツタスツタスツタ
御用が遅れる 御用が遅れる
とほせんぼ とほせんぼ
御用のないとこ通りなさい
スツタスツタスツタスツタ
急ぎのお使ひ 急ぎのお使ひ
とほせんぼ とほせんぼ
御門の扉が開きません。
夜になる
ホー ホー ホー
電気が暗くて
つまらない
御本を読むにも
読まれない
梟は暗くも
目が見える
ホー ホー ホー
わたしは暗くちや
目が見えぬ
お針も出来ない
つまらない
この子に
首かざり
七つになつたら
買つてやろ
桃いろ珊瑚は
土佐の海
七つに なれなれ
あしたなれ
お空の海に。
お空の海で
雲雀は遊ぶ。
お空の海は
澄んでて青い。
お空の海に
お日さま出てる。
お日さま高い
雲雀も高い。
お空の海で
雲雀は遊ぶ。
山から
海から
秋が来た。
河原の
葉が
枯れた。
渚の
葉が
枯れた。
山から
西吹く
風が吹く。
海から
山吹く
風が吹く。
ピヨン ピヨン
来ない来ないうちに
ピヨン ピヨン
ほゥ ほゥ 穂に出た
すすきの穂
狐が来るから
気をつけな
すゥ すゥ すすきの
葉の蔭にや
狐がかくれて
ゐるだとさ
よゥ よゥ 呼んでる
声がする
すすきの蔭から
呼ぶのかな
お月さま
半分かけた
半かけ
お月。
ころんで
半分かけた
半かけ
お月。
お月さま
半分出てた
半かけ
お月。
雪々こんこん
狐もこんこん
大寒寒や
狐もこんこん
雪々こんこん
大寒寒や
[#改ページ]
大正十五年
ぐわッぐわッぐわッ
お
ぐわッぐわッぐわッ
あつちへ
ぐわッぐわッ
こつちへ
ぐわッぐわッ
家鴨の駈け足
ぐわッぐわッぐわッ
ねこねこ サイサイ
ねこ サイサイ
日ぐれにや雀は
どこで啼く
日ぐれにやお藪の中で啼く
ねこねこ サイサイ
ねこ サイサイ
夜あけにや雀は
どこで啼く
夜あけにやお藪の中で啼く
ねこねこ サイサイ
ねこ サイサイ
河原のお
いつ帰る
雀の啼くときわしや帰る
(註 ねこねこサイサイは、ねこやなぎのことです。)
山の鳥 小鳥
山の鳥の 小鳥は
赤い赤い 木の実を
たづねてあるく
藪の上にとまつては
藪の中を見たり
藪の中へはいつては
藪の蔭を見たり
藪から出ては
里の方を見たり
赤い赤い 木の実を
たづねてあるく。
ホーイ ホイ
追はれて雀が
チッチッチ
あつちの田甫へ
チッチッチ
こつちの田甫へ
チッチッチ
ホーイ ホイホイ
ホイホイ ホイ
あつちの田甫も
鳥追ひだ
こつちの田甫も
鳥追ひだ
ホーイ ホイホイ
ホイホイ ホイ
たんぼの中の
ななし木は
花から
芽が出て
葉がのびる
うそなら
この夏
いつてみな
お家がなけれや
おひさま
烏とねたろ
あつちへ 向けると おひなさまは
あつちを 見てる、
こつちへ 向けると おひなさまは
こつちを 見てる、
あつちへ お向きと 言つても
聞えない
こつちへ お向きと 言つても
だまつてる、
おひなさまの お耳は
聞えんぼ お耳、
おひなさまの お口は
だまりんぼ お口。
お荷物 かついで
エンヤラ ホイ ホイ
鼠の引越し
お蔵へ チウ
チウ チウ お蔵へ
鼠の引越し
お荷物 かついで
お蔵へ チウ
エンヤラ ホイ ホイ
鼠の引越し
猫さん お留守に
お蔵へ チウ
たんぽぽの花は
ふうわり ふわり
一本目の花は
日傘をさした
日傘をさして
風ン中飛んだ
二本目の花も
ふうわり ふわり
風ン中飛ぶに
日傘をさした
日傘をさして
風ン中飛んだ
角ふれ
こうし
角ふつて
おみせ
おやうしア
モーモー
角ふつて
みせた
あめうし
こうし
角ふつて
おみせ
春だ 春だ
ゆくわいに
をどれ
かはづの
音頭で
にはとりア
うたつた
足なみ
そろへて
をどれ
猫さんお手まり
お一つ お一つ
お一つついては
ころりところがし
お二つ お二つ
お二つついても
ころりところがし
おいくつついても
猫さんお手まり
お一つ お一つ
こつち見てお啼き
飯のお
肴はおいしい
よい肴やろよ
蛙ゲツコゲツコ
こつち見てお啼き
【説明】この「蛙遊び」は幼稚園級から尋常一二年位のお方々のために試みた遊戯唄です。甲(蛙)は両腕を左右にひろげ、ゲツコゲツコと蛙の啼声をしながらピヨンピヨンと跳ね跳ね、乙(蛙ではない方)を追ひます。乙は甲と一間程離れて向ひ合つて、この唄を歌ひながら甲に追ひつかれないやうに囃し立てながら後 へ後へと歩きます。これは、大勢でも同じ仕方で出来ます。
泣く子はゐぬか
泣く子がゐたら
泣く子はおいで
ここまでおいで
松葉の針で
お
松葉の針は
おー痛 痛や
茨の針で
茨の針は
おー
ねんねして ねんねして
朝草に 朝草に
刈りこめられたきりぎりす
鳴き鳴きお馬で
おくられた
薄の葉つぱで
みた夢は みた夢は
朝風に 朝風に
吹かれて薄のゆれた夢
お馬のお鈴も
鳴つた夢
一廻り まはつて
一丁目の 先に
蚊柱立つた
二廻り まはつて
蝙蝠 とんで来な
二丁目は 暮れて
蚊柱は立つた
三廻り まはつて
蝙蝠 とんで来な
三丁目も 暮れて
蚊柱立つた。
燕のお客さん
飛んで来な
見物しながら
この町廻つて つッつッと
来るときおみやげ
持つて来な
見物しながら
あの町廻つて つッつッと
おみやげないなら
あした来な
見物しながら
おみやげ買つて つッつッと
お日さま焼けてる
お日さま焼けてる
ジリジリ
暑いぞ
子供に笠やれ
子供に笠やれ
暑いぞ
暑いぞ
お日さま焼けてる
お日さま焼けてる
お空が くもつた
雨こんこ 降りそだ
てるてる 坊主に
たのもかな
てるてる 坊主は
酒のみ 小坊主
方方へ よばれて
お酒の ご馳走
雨こんこ 降つても
お屋敷に 寝てゐた
酒のみ 小坊主で
駄目だかな。
昼の夢みてる
秋の夢みてる
合歓の木の夢は
昼の山の夢だ
撫子の夢は
秋の野の夢だ
歌の中なる
子雀の
おや チッチッチッ
おやどの竹籔
皆枯れた
おや さうかいな
竹の枯葉を
子雀は
おや チッチッチッ
啼いてゐる
おや さうかいな
越後の国の
良寛さまは 良寛さまは
雀と遊んで
かくれんぼ かくれんぼ
迷ひ子になつた
『もう日が暮れるに 良寛さまは
迷ひ子になつた 迷ひ子になつた』
チビチビチッチと
チビチビチッチと
雀がさがして
歩いてる 歩いてる
竹やぶ 小やぶ
小やぶは暗い
小やぶの中の
まひまひつぶろ
お馬が通る
手の鳴る方へ
手の鳴る方は
小やぶの小みち
お馬が通る
まひまひつぶろ
小やぶは暗い
手の鳴る方へ
お皿が一枚なくなつた
一二三、一二三、
かくしたお皿を出しとくれ
一二三、一二三、
お菊は播州の井戸の上
お皿が一枚なくなつた
三三が九、三三が九、
かくしたお皿を出しとくれ
三三が九、三三が九、
お菊は播州の井戸の中
ゑ日傘 日傘は
かはい傘
ゑ日傘 さして
お客においで
かはい傘 日傘は
小さい傘
小さい傘 さして
あるいておいで
お客に 来たなら
なにあげよう
日傘に 赤いふさ
つけてあげよう
しやんこしやんこ
お馬
ほし草たべに
仔馬もつれて
しやんこしやんこ
おいで
しやんこしやんこ
お馬
仔馬はおとも
おとももつれて
しやんこしやんこ
おいで
山で オヒーンヨと
なくあのこゑは。
角の生えてる
鹿だと思ひな
角が生えてて
なくあのこゑは。
角がおもくて
なくだと思ひな
角がおもくて
オヒーンヨとなくは。
角のいらない
鹿だと思ひな
お月さんの
兎さん
お餅がつけたら
ちよいとおなげ
なげたら拾つて
ちよいと食べよう
お餅がつけなきや
一杵お餅を
ついてあげよう
お月さんの
兎さん
ついでにお臼も
ちよいとおかし
秋のお使ひ
木の葉がぱさり
ぱさり落ちたは
お使ひに
秋のお使ひ
みちくさしてる
はやくゆかぬと
冬が来る
冬が来るから
いそいでゆきな
秋のお使ひ
さッさッと
山田の烏は
朝起き烏
はだしになつて
朝水くんだ
朝水くんでは
田の中にかけた
どの田の中へも
朝水かけた
はだしになつて
はだしでかけた
山田の烏は
註 烏稲とは、稲の中に交つて出来るわくら稲のことです。
お馬のお耳は 何故長い
青い草をたべたくつて 動くのよ
お馬にかねの靴 なぜはかす
くろい爪がへるから はかすのよ
お馬のお耳は なぜ長い
桶の水飲むから ながいのよ
サキノ ウシハ
クロンボ
アトノ ウシハ
アメンボ
クロンボノ
ツノト
アメンボノ
ツノト
ツノト ツノト
ソロツタ。
子供は風の子
お庭で遊びな
お庭の風は
山から とつとつと
お庭の風は
海から とつとつと
海から吹いたら
海のこと思ひな
山から吹いたら
山のこと思ひな
子供は風の子
お庭で遊びな
[#改ページ]
昭和二年
門松たてて
竹たてて
竹に雀を
とまらせて
竹と雀を
見てゐたりや
竹で雀の
言ふことにや
竹にゆられて
あぶない あぶない
早く帰ろと
松葉つないで
ちよいと
お使ひに
横町通れば
横町の屋根に
鳩がゐました
親鳩が
駈けて通つて
襷がとけた
襷見てます
親鳩が
とけた襷を
掛けよとしても
つなぎ松葉で
ぱらぱらと
こつちの
ニヤンニヤンだ
あつちの 家も
ニヤンニヤンだ
ニヤンニヤン祭りで
みな留守だ。
親豚と 子豚
子ぶたと おやぶた
畑で はだしで
あそんでる
豚にも おみやげ
買つて来な。
註 ニヤンニヤン祭りは満洲で一番賑かなお祭りで、その日にはみんなそろつて娘々廟 へ出かけます。
兎ノ学校ノ
意地ワル神ニ
ダマサレタ
白ウサギ
泣イテヰタレバ
泣クナヨト
ナサケノ深イ
神サマニ
タスケテモラツタ
物語リ。
山で 夜なく
狐の子
狐 なんとなく
こんこんこん
やぶで 昼なく
雀の子
雀 なんとなく
ちュんちュんちュん
お馬が 通ると
馬車でゆくのは
花嫁さんか
鈴が鳴ります
しやんしやんと
ふれて鳴るのか
ゆられて鳴るか
ふれて鳴ります
しやんしやんと
鈴をふるのは
花嫁さんか
馬がふります
しやんしやんと
註 満洲では、お嫁さんにゆくとき鈴をつけた馬車に乗つて、鉦 や太鼓でおくられてゆきます。
戻りやんせ
戻りやんせ
提灯ない子は
戻りやんせ
ここは お関所
まだ夜は明けぬ
提灯ない子は
通されぬ。
通しやんせ
通しやんせ
月夜になるから
通しやんせ
ここは お関所
まだ夜は明けぬ
月夜になつたら
通りやんせ。
説明――手をつないで通せまいとするのを、潜 つて通り抜ける遊戯があります。この『関所遊び』は、その遊戯に合せて、歌ふやうに作つた童謡です。
とんとん トン積み
豆の トン積み。
鳩さん トン積み
見に 来てた。
鳩さん 見に来た
とんとん トン積み。
豆は ころころ
こぼれて ころげた。
鳩さん 子鳩を
つれて来た。
註 満洲の北の方へいきますと、停車場の附近へ山のやうに豆を積み重ねておきます。それを「豆のトン積み」といひます。
チツチの チツチと
ないてみな
ないたら 雀に
なりました
雀になつたら
とんでみな
はねなし雀で
とばれない
とべない雀は
どの雀
おててをひろげて
まへへでな
雀 どこへいく
竹やぶへ、
チユンカラ チユンカラ
チユン チユン チユン
チユンカラ チユンカラ
チユン チユン チユン
チユン チユン チユン
チユン チユン チユン
雀の鳥は、
竹の 小枝へ
米とぎに。
雀 どこへ いく
竹やぶか、
チユンカラ チユンカラ
チユン チユン チユン
チユンカラ チユンカラ
チユン チユン チユン
チユン チユン チユン
チユン チユン チユン
雀の鳥は、
裏の
水くみに。
ここは どこだろ
満洲里ならば
さうならば
支那と露西亜の
国境ひ
向ふ来るのは
トロイカか
トロイカならば
さうならば
早く帰れよ
註。満洲里は露西亜と支那の国境 にある支那町です。トロイカは露西亜人の乗る馬車のことです。
お化けの行列
見にいこか
一つ目小僧の
お通りだ
お馬でいくのは
海坊主
ケラケラ笑ふは
ろくろ首
そのつぎいくのは
大入道
曳いていく
お空に
小さい飛行機
青空ひろくて
飛んでも 行かれぬ
プロペラ貸しなと
啼き啼き飛んでる
お空の飛行機
雲雀の飛行機
お日さま遠くて
飛んでも行かれぬ
朝から啼き啼き
お空で飛んでる
石の地蔵さんは
子供がおすき
泣く子は地蔵さんに
連れてゆきな
すねて泣く子は
地蔵さんもきらひ
一つ目小僧さんに
つけてやりな
一つ目小僧さんは
泣く子がおすき
すねて泣く子が
なほおすき
附記。低学年の子供さん達のうちで、お友達の誰かが、すねて泣いてゐたならこの童謡をうたつてみて下さい。
猫の目 まるい目
ニヤニヤの目
夜になると
こはい目
猫の目 ほそい目
ニヤニヤの目
昼になると
ねむい目
ねむい目は
ほそい目
まるい目は
こはい目
ペタコ お母さんに
白い帽子 もろた。
ペタコ 白い帽子
かぶつてる。
ペタコ 啼くとき
白い帽子 ふつた。
ペタコ 白い帽子
ふつて 啼いた。
ペタコ 遊ぶにも
白い帽子 かぶる。
白い 小帽子で
あそんでる。
ペタコは頭に白い毛のある台湾の小鳥で、内地の雀のやうに人家近くへ来て啼く。
パパヤ おちて
きな。
地べたへ
おちな。
おちて 地べたで
パパヤ
ない。
瓜には
なれぬ。
パパヤ 蔓出せ
蔓出しな。
急いで植ぬと
夜になる
夜では田植は
おしまひだ
西から雨雲
押して来な
田植がすんだら
照りつけな
照つたら一雨
降つて来な
この田は今年は
万作だ
万作だつてば
万作だ
繰り出しな
ゆうべ お背戸の竹籔で
雀の見た夢 話さうか
ゆうべ 雀のみた夢は
昔の昔のことだとさ
お米をさがしに出かけたら
一粒お米があつたとさ
十粒のお米を蒔いたれば
百粒お米が出来たとさ
千粒万粒蒔くうちに
蛙になりな
蛙になりな
おたまじやくし
蛙になつて一はね
はねてみな
おたまじやくし
おたまじやくし
蛙になりな
蛙になつて一はね
はねてみな
いふ船はいふ船は
むかし むかし
長崎へ 長崎へ
三
手拭を手拭を
形見にみなとて
手拭で手拭で
長崎娘は
涙ふく涙ふく
註。昔、南蛮国の船が長崎へ来て、三尺の紅 手拭を、形見においていつた話が、今尚長崎に残つてゐます。この童謡は、その話を手まり唄に書いたのです。
竹の葉つぱに
とんぼがとまる
とんぼとまつて
ひる寝した
とんぼ 眠くて
おひる寝か
竹の葉つぱが
ちよとゆれました
とんぼたまげて
目がさめた
とんぼ 眠くて
おひる寝か
川を越すなら
浅瀬を越しな
一つ浅瀬は
小石で越せぬ
小石拾つて
二つ浅瀬は
跣足で越せぬ
水の流れを
見て越しな
見て越しな
オシーツクオシーツク
ツクンヨツクンヨ
お星さまから
こぼれ水
お星さま水持ちだ
ツクンヨツクンヨ
オシーツクオシーツク
こぼれ水貰ろた
お日さま知らない
ツクンヨツクンヨ
山を 越えて
雲は
海を こえて
雲は
どこまで 行つたか
知らないが
迷ひ子の
雲は
はぐれ子の
雲は
いつまで たつても
帰らない。
かくれんぼ
お空に一杯
かくれてる
かくれてゐるなら
かくれてな
お顔を出すなら
出してみな
海から海の水
かけてやる
山から山の水
かけてやる
ここのこの川
たつた今
橋がはづれた
とほせんぼ
御用があるなら
明日は いやいや
今通る
橋をさがして
今通る。
橋ははづれて
どこにある。
橋は
下にある。
[#改ページ]
昭和三年
凧は
とんであがる
パツパノパ
鳶凧さんなら
笛ふきな
ピツピノピ
わしは凧だが
パツパノパ
奴凧さんなら
お
ピツピノピ
風のふく日は
お伴だが
パツパノパ
寒くてつらくて
その時は
ピツピノピ
犬は お顔が
ながいから
犬は ワンワン
ワーン と 吠え
猫は お顔が
まるいから
猫は ニーヤニーヤ
ニーヤ と なく
オヤオヤ
お顔が ながくて
ワンワン ワーン
オヤオヤ
お顔が まるくて
ニーヤニーヤ ニーヤ。
一夜あければ
お正月ァ来るに
餅
ぺつたんこ
餅ァねれな
ぺつたんぺつたん
ぺつたんこ
餅がねれれば
お正月ァ
餅搗きヤ
ぺつたんこ
門の門松ァ
なほ目出度
ぺつたんぺつたん
ぺつたんこ
ヤツトサノサ
鼠を追ひば
チウチウチウ
逃げて鼠は
ヤツトサノサ
桝の中
チウチウチウ
桝をたたいて
ヤツトサノサ
鼠に聞けば
チウチウチウ
もうも お餅は
ヤツトサノサ
食べませぬ
チウチウチウ
淡雪降つて来な
小雪も降つて来な
小雪のさきに
淡雪降つて来な
春降る雪は
淡雪 小雪
お庭に屋根に
おぼろに降つて来な
おぼろに雪は
舞ひ舞ひ舞つて来な
淡雪降つて来な
小雪も舞つて来な
そり橋かけな
橋かけな
天神さまの
お通りぢや
御紋は梅鉢
梅に鶯
ホーヤ ホケキヨは
春のさきがけ
お
さア つきな
天神さまの
お通りぢや
おもちやの
うさぎ
お山の
上に
出るよ
出るよ
お月さま
出るよ
お月さま
出たら
餅ついて
みせな
山で 幕引く
霞の幕を
春姫さまか
花が 咲いた咲いた
桜の花が
山で さへづる
小鳥の子らが
誰と さへづる
春姫さまと
花が 咲いた咲いた
桜の花が
南京言葉
パーパー パツチクパ
ピーピー ピツチクピ
軒端で つばめも
南京言葉
ピーピー ピツチクピ
パーパー パツチクパ
南京さんは パツチクパ
つばめは ピツチクピ
パーパー パツチクパ
ピーピー ピツチクピ
つばめの 言葉は
南京言葉
ピーピー ピツチクピ
パーパー パツチクパ
紙もなければ
筆もなければ。
砂に書く字は
「忠」といふ字と
砂に書く字は
「
「忠」と「君」とを
砂に書き書き
筑紫の 国の
砂原で。
天神さまは
お手習ひ
自註 天神さまは菅原道真公のことであります。尽忠無二のお方で、文学の神とされてをります。前号に引続き天神さまの謡 を書いたのは、皆さま方に「天神祭」を復興させて、敬神の心を養つて戴きたい希望からであります。
猿が 来るから
隠れな 蟹よ。
猿は 猿智慧
こわいぞ 蟹よ。
猿の 猿ちえ
おお、こわ こわや。
猿に お
貰ふな 蟹よ。
飯炊け 蟹よ。
猿の 猿ちえ
おお、こわ こわや。
猿が 柿の木
さがすぞ 蟹よ。
猿に 柿の木
見せるな 蟹よ。
猿の 猿ちえ
おお、こわ こわや。
福笑ひ、高笑ひ、馬鹿笑ひ、物笑ひ
ニコニコ笑へ
さァ笑へ
ニコニコ笑ふは
福笑ひ。
カラカラ笑へ
さァ笑へ
カラカラ笑ふは
高笑ひ。
ケタケタ笑へ
さァ笑へ
ケタケタ笑ふは
馬鹿笑ひ。
さァさァ笑へ
さァ笑へ
転んで泣く子は
物笑ひ。
お星さんの
お空の 上に
お空の 上の
お星さんの 家に
小窓が一つ
小窓の かげに
お星さんは ねてて
あかりを つける
小窓の かげに
あかりが つくと
お星さんの 家は
ぴかりと 光る
三番叟――蜆の貝――かげ弁慶――だまり虫
外へ出ると
蜆の貝なら
煮てたべな。
家の中の
かげ弁慶
よそへゆくと
だまりんぼ。
困つたもんだ
だまり虫
壁でも
あるかせな。
赤ンぼ――黒ンぼ――泣きンぼ――きかンぼ――ぐづンぼ――弱ンぼ
赤ンぼに黒ンぼ
黒ンぼはきかンぼ
赤ンぼは泣きンぼ
泣きンぼにきかンぼ
きかンぼはぐづンぼ
泣きンぼは弱ンぼ
泣きンぼが来たら
あやしておやり
きかンぼが来たら
お
丸イ目ト
細イ目
夜ニナルト
丸イ目
丸イ目ハ
細イ目ト
丸イ目
夜ニナルト
細イ目
細イ目ハ
眠イ目。
ツバメノ トビクラ
ウサギノ カケクラ
ツバメハ ヒカウキ
ウサギハ ジドウシヤ
ドツチモ ハヤイゾ
ドツチモ マケルナ
トベ トベ ヒカウキ
ハシレヨ ジドウシヤ
山寺――化け猫――和尚さん
昔 昔 山寺で
化け猫が
ニヤニヤノ ニヤンと啼いちや
和尚さん ヤイ
足で拍子とつちや
ニヤンニヤトセ
啼いては チヨンと跳ね
チヨンチヨン 跳ね 跳ね
ニヤンニヤンノ ニヤンと啼いて
化けたとサ
なみは どん どん
なみは どん どん
どん どん
なみなら こい。
なぎさの こすなに
こいその こいしに
どん どん
なみなら こい。
なぎさの こすなは
さらさら こすな
どん どん
なみなら こい。
こいその こいしは
ざくざく こいし
どん どん
なみなら こい。
遠い 遠い
山で
ピーと 笛ふいて
チヤンと
笛ふくは
ピーと 笛ふいた
誰が
鉦たたく
烏の鳥が
チヤンと 鉦たたく。
咲いた 咲いたよ
雨ふり 花が
雨は ふらない
オヤ ヤノヤ
「雨ふり花 なら
空見て 咲きな
お天気花 なら
河原で 咲きな
河原の 小石の
上で 咲きな」
雨が ふるかと
雨ふり花は
咲いた 咲いたよ
オヤ ヤノヤ
赤イ赤イ
ガラス
オ顔ガ見エル
赤イ赤イオ顔
ガラスニウツル
オ顔ハ赤イ。
青イ青イ
ガラス
オンナジオ顔
青イ青イオ顔
ガラスニウツル
オ顔ハ青イ。
ぱらぱら雨――蛙の顔
広いもんぢや
世の中は
ぱらぱら雨が
降つたとさ
不思議なことも
あるもんぢや
見てたとさ
そりや また不思議と
いふもんぢや
顔ぬれ蛙に
なつたとさ
まだまだおめめの
さめぬうち
燈籠に
アノ、燈籠に
お一つ お一つ
灯がとぼる
そろそろおめめが
さめて来りや
春日の燈籠は
石燈籠
アノ、石燈籠
夜あけになるまで
灯がとぼる
チン チク
バン チク
小鳥が
はこんで
巣を作る
チン チク
バン チク
小鳥の巣
小鳥の
すんでゐる
おるすゐ するなら
ワンワン ほえな、
おともに ゆくなら
キヤン キヤン なきな。
ワン ワン ワンか
キヤン キヤン キヤンか
おともが よい よい
キヤン キヤン キヤン。
おるすゐ いや いや
キヤン キヤン キヤン。
かはいい すずめの
おはなしは
チンカラ チユン
チンカラ チユン
したきりすずめの
おはなしよ
チンカラ チユン
チンカラ チユン
*
のりを
ちよいと なめました
なめた そのした
ちよいと きりました
したを きられて
したきりすずめ
もとの おやどへ
とんで にげました
*
したきりすずめ
おやどは どちら
をしへて
おくれ
*
なさけの ふかい
おぢいさん
よく まア たづねて
くれました
さアさア ごちさう
いたしませう
*
またきて ください
おぢいさん
ほんとに やさしい
おぢいさん
いつでも ごちさう
いたします
*
ごおん がへしに
くれました
したきりすずめの
おみやげは
かるい ちひさい
つづらだが
なかは一ぱい
たからもの
*
よくふか ばあさん
きましたね
おみやげ ほしくて
きましたか
一はた おるまで
まつといで
*
おもいぞ おもいぞ
このつづら
エンコラ エンコラ
エンコラシヨ
したきり すずめの
おみやげだ
たからが一ぱい
はいつてる
エンコラ エンコラ
エンコラシヨ
*
よくふか ばあさん
ヤーイ
おばけだぞ
ドロドロドロ
ウワー おばけか
ウワー
おばけだぞ
ドロドロドロ
チユウ チユウ ナクノハ
アリヤ ナンヂヤ。
ハテ ハテ ハテナト
カンガヘナ。
ネズミハ
チユウ チユウ
ナクモンヂヤ。
ネズミガ デテクリヤ
ドウナンヂヤ。
ハテハテ ハテナト
カンガヘナ。
ネコデモ ヨバナキヤ
ヒカレルヂヤ。
水引きとんぼが
とんで来た
引きに来た。
水引きだ
水引きだ。
田の水引いたら
田がかれる
かれたら麦でも
まきに来る。
水引きだ
水引きだ。
い
い人さんの おくには
うみのうみの むかふ。
うみのうみの むかふが
い人さん い人さん
い人さんの おくに。
い人さんは うみを
こえてこえて きては
こえてこえて かへる。
(小豆を洗ふやうな音をさせるお化けを小豆洗ひと言ひます)
お背戸で
ザツク ザツク
あの音は
さて、あの音は
小豆洗ひで
ないか知ら
ザツク ザツク
ザツク
雨夜の
夜ふけに
あの音は
さて、あの音は
小豆洗ひで
ないか知ら
ザツク ザツク
ザツク
私の村の
私と同じ
丁度私も信吉も
同じ
私の
一軒おいたその次の
藁ぶき屋根が信吉の
生れた家でありました
母親だけになりました
その父親はかりそめの
病がもとで死にました
母ひとり子ひとり細い
夏のゆふべでありました
たつたひとりの母親も
やはり病ではてました
親のない子の信吉は
みよりの人に連れられて
「私は奉公にやられる」と
泣いて歩いて行きました
鳥なき里の
バツサ バサバサと
飛んで あるく。
自慢 高慢
おかしいな。
鳥なき里の
蝙蝠は。
ノツソ ノソノソと
飛んで あるく。
威張り くさつて
おかしいな。
いつ来て見ても
小鳥はゐない
河原の藪の
小鳥の巣
小鳥はどこへ
行つたやら。
いつまで待つても
帰つて来ない
気まぐれ小鳥は
渡り鳥
気まぐれ小鳥に
なつたやら。
釣ろか 釣ろか
サーラ コンコン
サーラ コンコン
子狐を
釣ろか。
すすきの 蔭で
サーラ コンコン
サーラ コンコン
子狐を
釣ろか。
すすきの 蔭に
サーラ コンコン
サーラ コンコン
子狐が
寝てる。
釣ろか 釣ろか
サーラ コンコン
サーラ コンコン
子狐を
釣ろか。
知らないが
お供だ
出放題の
ペーラ ペラ
お
引つこみな
引つこむどころか
先き馬だ
ペーラ ペラ
カドマツ タテテ
オシメヲ ハツテ
ミンナノ カホガ
オシヤウグワツハ
ニコニコ
オトソヲ ノンデ
オザフニ タベテ
タレカレ ナシニ
ミナ ナカヨシデ
ミンナノ カホガ
オシヤウグワツハ
ニコニコ
たかいたかい山は
なぜ背がたかい
ひなたで遊んだ
それで背がたかい。
ひくいひくい山は
なぜ背がひくい
ひかげで遊んだ
それで背がひくい。
桜の花の咲く頃は
うらら うららと
日はうらら
窓さへ みなうらら
学校の庭さへ みなうらら
河原で
うらら うららと
日はうらら
みなうらら
畑に菜種の咲く頃は
うらら うららと
日はうらら
渚の砂さへ
みなうらら
どなたの顔さへみなうらら
足柄山で 金時は
鹿とおすまうとりました
鹿はころりと負けました
足柄山で 金時は
熊とおすまうとりました
熊もころりと負けました
足柄山で 金時は
お山の大将になりました
[#改ページ]
昭和四年
お正月来たら
大雪降れよ
雪が降つたら
スキー靴はこよ
スキー靴はいて
スキー帽かぶり
雪の野原へ
みんなで行こよ
大雪降れよ
どつさり降れよ
広い野原に
山ほど積れ
俵の 上で
大黒さんは
ニーコ ニコ
鼠が 出ては
俵を 引つぱつた
エンヤラ エーン
エンヤラ エーン
俵は ズール ズル
大黒さんは ニーコ ニコ
鼠が 出ては
俵を 引つぱつた
エンヤラ エーン
エンヤラ エーン
鼠も ニーコ ニコ
大黒さんも ニーコ ニコ
大黒さんの 俵
エンヤラ エーン と 引つぱつた
エンヤラ エーン
エンヤラ エーン
お空の
お
草が寒くて
枯れました
木の葉も寒くて
落ちました
夏のやうに
照りな
小鳥も寒くて
啼きました
沼には氷も
はりました
お空の
お天道さん
この子も寒くて
泣きました
あかい毛で
あをい目
人形やのたなで
西洋の人形
「お早う。今日は」
日本のことば。
くろい毛で
くろい目
人形やのたなで
日本の人形
「オ、オ、グツドバイ」
西洋のことば。
どつちもかはい
お正月きても
おとしも しらぬ。
できた できた
だるまさんが できた
ゆきで こさへた
だるまさんが できた。
さした さした
おひさま さした
ゆきが やんだら
きら きら さした。
とける とける
だるまさんが とける
ゆきで こさへた
だるまさんが とける。
お正月来たら
お
お正月来たら
四つと一つ
おお よく出来た
片手をお出し。
十になつたら
五つと いくつ
十になつたら
五つと五つ
おお よく出来た
両手をお出し。
山は、雪の山
野は、雪の原
見ゆる限りはただ一面に
心をどらす銀世界
走れ、スキーよ
ハア、銀、銀、銀世界
雪は、山や野の冬の花
走れ、スキーよ、ツツラツーのツー
仲よし 小よしの お友達
お友達への お手紙に
梅も そろそろ 咲きました
妹を つれて 日曜に
おたずねします と 書いてある
草も いやいや
食べあきた
うまやも いやいや
すみあきた
だだつこの
春の駒。
山へ 行つたら
はねあるく
野原へ 行つたら
かけてゆく
だだつこの
春の駒。
つれて 行くなら
ついてゆく
ひとりで ゆけなら
はねてゆく
だだつこの
春の駒。
桃の花が
咲いた
桃いろの
花が
菜の花も
咲いた
黄いろい
花が
おひなさんの
目には
桃の花が
見える
おひなさんの
目には
菜の花が
見える
桃の花は
乙女
菜の花も
乙女
蛙の
ガツコ ガツコ ピヨン。
ラツパ吹く そら吹け
ヤレ吹け ピヨン
ヤレ吹け もつと吹け
ガツコ ガツコ ピヨン。
寝坊の 蛙は
あはてて 起き出し
つづいて ピヨン。
ラツパ吹け ヤレ吹け
ガツコ ガツコ ピヨン。
朝まで 夜通し
夜廻り ピヨン。
寝ないで 夜廻り
ラツパ吹け ピヨン。
ソラ吹け ヤレ吹け
ガツコ ガツコ ピヨン。
パラリ 菜の花が
日の出に 咲いて
日の出に 咲いてネ。
咲いた 菜の花に
朝露 おいて
朝露 おいてネ。
露は きらきら
朝日は のぼる
朝日は のぼるネ。
そこで 菜の花に
蝶々が とまるネ。
とまる 蝶々は
仲よし 小よし
仲よし 小よしネ。
ちらり ちらちら
一日 遊ぶ
一日 遊ぶネ。
支那人の
赤帽さん
赤い服きて
チヨツコチヨツコ
お荷物手にさげ
ヘーコラ ヘー
ヘーコラ ヘー
青い服きた
赤帽さん
言葉が わからん
ペーコ ペコ
トランクかついで
ヤンコラ ヤン
ヤンコラ ヤン
春風は 山より 山へ
野より 野へ
勇ましく 駒も
いななく 若草に
小鳥も 森に
さへづるを
野に出て 遊べ
はれし日は
空は コバルト
野は 緑
山の
野の 末に
もゆる
たつ
伸びゆく春の
日を見ずや
山で お猿が
木登り してる、
山で 子猿も
木登り してる、
お猿 木登り
上手に 出来る
子猿 木登り
上手に 出来る
猿の 猿真似
子猿の 小真似。
木から お猿が
おりて 水のんだ
木から 子猿も
おりて 水のんだ
お猿 水のんで
また 木に登る
子猿 水のんで
また 木に登る
猿の 猿真似
子猿の 小真似
日まはりの 花が
咲いては まはる
お
まはす。
眠くなつて 眠つた
日まはりの おひる寝
ぐるつと まはつて
どつこいしよ。
おひる寝の ままで
眠つて まはる
お天道さんが
まはす。
雲が出て 日がかげる
眠つてゐて 知らん
ぐるつと まはつて
どつこいしよ。
盆の踊りは
み
音頭とりさん
屋台の上で
太鼓打つやら
鐘叩くやら
「盆だ 盆だ」と
皆出て踊る
踊り見にゆこ
提灯つけて
竹が すき
竹に 短冊
歌が すき
歌の 中でも
どれが すき
天智天皇
「秋の田の
かりほのいほの」
歌が すき
高津の宮の
「高きやに
のぼりてみれば
けむり立つ
歌が すき
お相撲は
ヨイシヨナ。
ヨイシヨ
ヨイシヨナ。
ハツケ
ヨイシヨナ。
お相撲の
お人形さん。
ヨイシヨ
ヨイシヨナ。
お相撲は
つよいぞ。
ヨイシヨ
ヨイシヨナ。
ハツケ
ヨイシヨナ。
馬のはくのは
歩くたんびに
パツカパカ
わたしの靴は
革の靴
歩くたんびに
キユツキユツキユツ
馬よ わたしに
ついて来い
鉄の靴ゆゑ
重たかろ
わたしは軽いぞ
キユツキユツキユツ
牛の角
太い角
うしろへ曲つた
オーヒンヨ
オヒンヨ
鹿の角
鬼の角
鬼の角
こわい角
でんでん虫虫
角お見せ
虫の音楽
ステージは
藪や野原の
草の上
聴きに来る
月夜の晩は
月姫が
闇夜の晩も
月姫か
闇夜の晩は
さうぢやない
草の葉蔭で
白露が
夜あけの星の
消えるまで
はたけに菜の花咲きました[#「花咲きました」は底本では「花吹きました」]、
みごとにみごとに咲きました、
お空もきれいに晴れました、
きれいにきれいに晴れました。
ひばりがはたけで鳴きました、
まいにちまいにち鳴きました、
お空の上でも鳴きました、
さへづりさへづり鳴きました。
足がなくては はねられぬ。
足をかすから はねないか。
かりた足では はねられぬ。
足なし兎は 雪兎。
はねてみたくも 足がない。
リヤウゴクバシノ
ヤミヨノ ソラニ
ドンドト パツパ
ヒノハナ サイタ
ススキト オホシ
オホシハ ナガレ
ススキハ ミダレ
ミダレテ キエル
ナガレタ オホシ
マタデテ ノボル
ノボレヨ ノボレ
ドンドト ノボレ
ミダレタ ススキ
マタデテ キエル
キエロヨ キエロ
パツパト キエロ
リヤウゴクバシノ
ヤミヨノ ソラニ
ドンドト パツパ
ヒノハナ サイタ
霜夜の 篠やぶ
霜で サラ サラ。
ザクリ ザツクリ
寒いぞ 寒いぞ
霜夜の 篠やぶ。
ザクリ ザツクリ
鼬が お
小豆を 磨ぎとぎ
ザクリ ザツクリ。
おまんま 炊きたき
ザクリ ザツクリ。
霜夜の 篠やぶ
ザクリ ザツクリ。
赤のお飯 小豆のお飯
鼬が 小豆を 磨いだとさ。
お正月さま
早く来い
雪の降らない
うちに来い
氷のはらない
うちに来い
雪が降つたら
寒いぞ
氷がはつたら
すべるぞ
すべつて転べば
おくれるぞ
お正月さま
おむかへだ
むかへにゆくもの
手をあげろ
お正月さま
早く来い
日永だ 日永だ たんころりん
田螺のお家は 泥だらけ
たんたんころりん たんころりん
田螺のお家は 窓一つ
窓から覗いて たんころりん
おひなさんのお顔
お色が白い
赤ちやんのお顔
お色がくろい
黒い黒いお顔
白い白いおかほ
おひなさんになれぬ
赤ちやんのお顔
子鳩と子鳩は
おともだち
お屋根でお庭で
あそんでる
わたしも子鳩と
おともだち
一しよにお庭で
あそびませう
[#改ページ]
昭和五年
右か ひだりか
手の鳴る 方へ
さアさ よいよい
ここまで おいで
おいで ついでに
松持つて おいで
松は いやいや
松葉が おちる
松が いやなら
竹持つて おいで
竹も いやいや
雀が とまる
竹も いやなら
梅持つて おいで
梅も いやいや
ホホ ホケキヨと
啼いて 来る
さアさ よいよい
ここまで おいで
右か ひだりか
手の鳴る 方へ
書き初め
お羽根つき
かるたに トランプ
手まりつき
たのしい たのしい
お正月
門には松たて
竹たてて
松には
影がさす
竹には むらがる
いく年たつても
かはらない
毎年 たのしい
お正月
三羽のすずめが
目をさまし
東がちらちら
しらむころ
おやねにとまつて
いひました。
をかしいな
をかしいな。
「あさおきする子は
あの子です」
「あさねぼする子は
この子です」
すずめがしつてて
いひました。
をかしいな
をかしいな。
高い山と 低い山
山と山の 行列だ
高い山の 上に
雪がふつて つもつた
低い山の 上も
雪がふつて つもつた
高い山は 雪の
白い帽子 かぶつた
低い山も 雪の
白い帽子 かぶつた
白の帽子 かぶつて
山と山は 行列だ
親ねずみが
いつたとさ
みんなでおもちを
ひいてきな
子ねずみが
いつたとさ
おもちはおもくて
ひけないな
おやねずみが
いつたとき
エンヤラエンコと
ひいてみな
子ねずみが
いつたとさ
おもちがおもくて
こまつたな
風船玉 風ツ子
フウワリ フワリ
ドツコイ サイサイ
フワリ
ツンと 風吹けば
ユウラリ ユラリ
ドツコイ サイサイ
ユラリ
風に乗つて ユラリ
ユウラリ ユラリ
ドツコイ サイサイ
ユラリ
グンと 風吹くな
風ツ子が グラリ
ドツコイ サイサイ
グラリ。
梅ニ チラチラ
花咲キマシタ
見セテヤリマセウ
ウグヒスニ
来イ 来イ
ウグヒス
ヤブノ中ノ
ウグヒス
梅ノ花
咲イタ
ホケキヨト
トンデ来イ
アシタ イキマス
オ庭ノ梅ニ
梅ノ花見ニ
マヰリマス
パラリ 咲いた 咲いた
桜の花が
しやらく
おしやらく
おしやべり
つばめ
花が 咲いても
花見に 行かぬ
飛んで あるいて
忙しさうに
目さへ さませば
おしやべり ばかり
スタコラ スタコラ
ノハラノ ホソミチ
キツネノ オツカヒ
ハヤイゾ ハヤイゾ
ソラソラ ソラソラ
イソギノ オツカヒ
コロブト アブナイ
タツタツ タツタツ
ヨソミヲ シナイデ
ソラソラ ソラソラ
イソギダ イソギダ
キツネノ オツカヒ
トキドキ ミチグサ
オクチヲ トガラシ
キヨロピリ キヨロピリ
コーン コーン。
降つたりやんだり
五月雨が
ゆらゆら柳に
露の玉
ミーちやん
ピーちやん
見ておいで
あれあれ柳の
葉の上に
雨から生れた
露の玉
ころころ
ころげて
落ちるから
子供がみんなで
まるはだか
太陽の
あびながら
仲よく遊んで
をりまする
青葉のみる夢
なんの夢
ドレミハ、ドレミハ
音楽が
静かに静かに
聞えます
トツテ トツテチ
トツテ トツテチ
進め 進めの
進軍ラツパ
庭か 練兵場で
トツテ トツテチ
トツテ トツテチ
赤いマント 着て
長靴はいて
雨の 降るのに
ランドセル
ザツク ザツクと
進軍ごつこ
トツテ トツテチ
トツテ トツテチ
たんたん狸の
油かひ
油屋の雨戸を
トントントン
「油うつて下さい
油屋さん」
あつぷあつぷ
油屋の小僧さん
「木の葉のおさつぢや
うられません」
たんたん狸の
油かひ
こまつて戻つて
ゆきました。
けふも
お祭りに
吹く笛が
村中の子供に
聞えます
なんと響いて
聞えます
「一なめなめれば
頬が落ち
二なめなめれば
歯が落ちる
落ちてもすぐつく
買ひに来な
甘いぞ甘いぞ
この飴」と
村中の子供に
聞えます
一つ かいたかいた
人形の お目目
さアさ かいたかいた
人形の お鼻
二つ かいたかいた
人形の お口
さアさ かいたかいた
人形の まゆげ
三つ かいたかいた
人形の お耳
さアさ よいよい
人形の お顔
できましたヨ
できました
丸に いびつに
できました
烏の 行水
ピツチヤ ピチヤ
ずんぶり
バタバタ 羽ばたき
用意しな
明日は 雨だよ
ピツチヤ ピチヤ
空見て 雲みて
またまた 羽ばたき
空から 水まき
気を つけな
河原も 大水
ピツチヤ ピチヤ
小石も ころげて
ごろごろ 流れる
お百姓
番を しな
秋の 七草
秋の 野に
虫のお国は
花盛り。
虫のお国の
楽隊は
秋の 七草
見てうたふ。
萩と 尾花と
をみなへし。
白く 咲いたは
花は さまざま
よい 眺め。
虫のお国の
楽隊は
思ひ思ひに
皆 うたふ。
へうへうへうたんや
お池の中で
金魚とあそべ
へうへうへうたんは
ぶらりぶらりぶらり
あそぶがおすき
へうへうへうたんや
川から海へ
ながれてあそべ
へうへうへうたんは
ぐんぶぐんぶぐんぶ
およぐが上手
ドンと波 ドンと来て
ドンと帰る
チヤツプ波 チヤツプ来て
チヤツプ帰る
ドン チヤツプ ドン チヤツプ
キユーピーちやん
ピーちやん お国は
海の向ふ
来るとき お船に
乗つて来た
ドンと波 ドンと来て
ドンと帰る
チヤツプ波 チヤツプ来て
チヤツプ帰る
ドン チヤツプ ドン チヤツプ
キユーピーちやん
ピーちやん お国は
海の向ふ
帰りも お船に
乗つてゆく
猫に
かぶせたら
ニヤンニヤン
ニヤンとないて
かんぶりふつた
犬に紙袋を
かぶせたら
ワンワン
ワンとないて
かんぶりふつた
猫に紙袋が
ニヤンニヤンニヤン
犬に紙袋が
ワンワンワン
垣根で
鈴をふる
りんりん ころりん
鈴虫よ。
黄金の お鈴は
幾つある
黄金の お鈴は
只一つ。
一つの お鈴を
ねんねん する児に
おいてゆく。
黄金の お鈴は
よいお鈴
七つの 房から
虹が立つ。
お空に 虹の輪
虹の橋
ねんねん する児が
皆渡る。
ドンガ ドンガと
太鼓がひびき
森も
渡るお
あら いさましや
ワツシヨワツシヨと
村中が総出
年に一度の 今日は
豊年秋祭り
そろひの
村の
皆薄化粧
お村廻りの
お神輿さまへ
ニコリニコリと
お供立ち
年に一度の 今日は
豊年秋祭り
オトナシイ
花ヨ
白菊ノ
花ハ
オ上品ナ
花ヨ
白菊ノ
花ハ
ウス日ノ
中ニ
チヤントシテ
咲イテル
進軍ラツパだ
テトテトテー
テトテトテトテト
テトテトテー
すすめ すすめ
おもちやの子ばと
進軍ラツパだ
テトテトテー
すすめ すすめ
木馬もすすめ
進軍ラツパだ
テトテトテー
子ばとも木馬も
いつしよにすすめ
進軍ラツパだ
テトテトテー
この子が
誕生になつたなら
上着は
誕生に なれ なれ
早くなれ
誕生に
この子がなつたなら
桃色
首飾り
歩けば
海の音
眠れば竜宮の
夢を見る
誕生に なれ なれ
ボーボー
カチカチ山だヨ
兎が出て来な
兎が出たなら
兎と狸は
カチカチ山だヨ
ボーボー焚き火だ
ドンドと燃えなヨ
桑の木畑の
小桑の小枝で
雀のおひる寝
目がさめた
オヤ 目がさめた
雀のおひる寝
お
朝だか 晩だか
わからない
オヤ わからない
困つた 困つた
時計がないかと
雀が寝ぼけて
言つたとき
オヤ 言つたとさ
畑の 種まき
はじまつた
サラリと 芽が出ろ
今年も 畑の
種まきだ
サツサノサ
サラリトサ
黒んぼ烏は
蒔いたら サツサの
サラリと 芽が出ろ
畑の 種まき
見に行つた
サツサノサ
サラリトサ
母さん 姉さん
師走の煤掃き
お正月ア来るから
遊んぢやゐられぬ
忙がし 忙がし
笹の
ちーちやん ぴーちやん
お正月アすぐ来る
朝から煤掃き
お手伝ひ
はたらく はたらく
煤掃きお上手さツさらり
お蔵の煤掃き
子猫もお手伝ひ
お蔵の隅々
さがして歩いちや
鼠の古巣を お一つ見つけた
さツさらり
きそく正しく 木でさへも
ちやんときものを きかへます
春に木のはの のびるのは
あれは はれぎの したくです
夏に はとはが しげるのは
あれは ゆかたのしたくです
秋に 木のはの おちるのは
あれは きものを ぬぐのです
冬は はだかになりますが
あれは 春までねるのです
[#改ページ]
昭和六年
夏の熱い日
セツセ、セツセと
郵便くばる
冬の寒い日
手足もこごえ
セツセ、セツセと
郵便くばる
言はないに
平和のお使ひ
郵便屋さん
これも世のため
人のため
皆さんお礼を
申しませう
田舎の
お正月
学校が
お休み
学校の
生徒さん
何をして
遊ぶ
停車場へ
行つて
汽車を見て
遊ぶ
飛行機が
来たら
飛行機見て
遊ぶ
羊の 学校は
羊は 学課は
習ひません
かけ足 なみ足
習ひます
羊は かけ足
上手 です
羊は なみ足
上手 です
かけ足 なみ足
習ひます
大黒さんは
福の神
俵の上に
あぐらをくんで
ニツコリニツコリ
ニツコリシヨ
うちでの小づち
シヤンシヤン
シヤンとふる
おえびすさんも
福の神
小岩の上に
こしうちかけて
ニツコリニツコリ
ニツコリシヨ
めでたい鯛を
ツンツン
ツンとつる
初日かがやく
野に、山に
年たちかへりて
春が来る
春の来る日は
村里に
森に、林に
日はうらら
雪は消えねど
草は
雪の中にも
春は来る
花は咲かねど
鳥は啼き
鳥の声にも
春は来る
笛を 吹く
雀も 帰つた
トツピー、ピー
迷子の羊は
ゐませんか
ゐません ゐません
トツピー、ピー
迷子の羊に
なつたなら
お星も 出ました
トツピー、ピー
今夜は お
帰られぬ
ゐません ゐません
トツピー、ピー
咲くところ
広い野原の
中でした
野原の中の
花すみれ
花でした
お星さまから
お使ひが
日のくれ
まゐります
小さい可愛い
花だから
お星さまとは
お友達
お友達へと
お使ひが
写真をもつて
まゐります
星の写真は
どれですか
星の写真は
露ですよ
露の玉には
お空から
星がキラキラ
映ります
ニヤンコ ニヤンコ
ニヤンコ ナキ
ニヤンコ
ナイタ、
ネコサン ネコサン
クロネコサン、
ヒナタデ オヒルネ
ユメヲミタ、
ソノユメハ、
ソノユメハ、
ニヤンコ ニヤンコ
ニヤンコナキ
ニヤンコ
ナイタ、
ネコサン ユメミテ
ニヤンコ ナイタ。
まんまる帆かけて ホウ
ゆらりこ ちやらりこ
お空へ走つた ホウ
帆かけて走るは
追手に風吹く
風船玉 ホウ
ゆらりこ ちやらりこ
どこまで走るか ホウ
まんまる帆かけて
金毘羅参りか ホウ
弥生の 春です
春ですよ
野原は 緑の
春ですよ
野原の 隅まで
若草が
緑の 毛せん
敷きました
さうです さうです
小鳥さへ
楽しく をどつて
歌ひます
をどるも 歌ふも
出来ないは
こはれた おもちやの
土の鳩
お空も 春です
太陽が
野に出て 遊べと
呼んでます
花が 咲いた 咲いた
霞の中で
リンリン パラリと
咲いたヨ
花は
桜の 花だよ
リンリン パラリと
咲いたヨ
鳥が 啼いた 啼いた
霞の中で
リンリン コロリと
啼いたヨ
鳥は 野で 啼く
小鳥の 鳥だヨ
リンリン コロリと
啼いたヨ
青い帽子
青い帽子
可愛帽子で 小さい帽子で
ホウ ホケキヨ
鶯さんのマントは
青いマント
青いマント 小さいマント
可愛マント
可愛マントで 小さいマントで
ホウ ホケキヨ
シヤラリコ、シヤンシヤン
シヤラリコ、シヤン
お馬で、どちらへ
ゆきますか
田舎の温泉
山の中
お米をもつて
なべもつて
あるいていつては
くたびれる
あの山こえて
谷こえて
シヤラリコ、シヤンシヤン
シヤラリコ、シヤン
お馬で、湯治に
ゆくのです
庭の
のきばの
木木も初夏
若葉のかをり
五月五日は
男の節句。
勇ましいのは
鯉の吹きながし
鯉の吹きながし
風が吹いて来たよ
天へのぼるなら
吹かれてのぼれ。
空も吹きぬく
風の子は男
空も青々
からりと晴れた
鯉の吹きながし
天へのぼれ。
楽しきはゆふべの
わが家
和気の とぼしび
あかるき心
かたり合ふ
笑ひ声さへ
したしさに
心おきなく
なつかしき
ゆふべのつどひ
やすらかに
夜は訪づる
おすまうがはじまる
お弟子が
まちます
ピヨンきな
ピヨンきな
ピヨン ピヨン
きな きな
蛙の 蛙の
関取ヤーイ。
いそいでこないと
おすまうがおくれる
お弟子が
むかへに
ピヨン はね
ピヨン はね
ピヨン ピヨン
はね はね
蛙の 蛙の
関取ヤーイ。
みんなで来い みんなで来い
水鉄砲 しゆう
しゆう しゆう しゆう
水持つて来い 水持つて来い
水鉄砲 しゆう
しゆう しゆう しゆう
いそいで来い 遊びに来い
水鉄砲 しゆう
しゆう しゆう しゆう
水鉄砲 しゆう
しゆう しゆう しゆう
寝ぼけ達磨さんの
お話は
たんたんころころ、たんたんころころ
棚の上。
寝ぼけ鼠の
お話も
静な静な初夏の
たんたんころころ、たんたんころころ
棚の上。
達磨さんも
棚から
ころころたんたんたん
鼠も棚から
ころころたんたんたん。
達磨さんは
びつくりして
目がさめた
鼠もびつくりして
気がついた。
たんたんころころ
たんたんころころ
ころころたんたんたん
も一つおまけに
ころころたんたんたん。
お話は、初夏の静な日でございます。達磨さんが、いつものやうに棚の上でお昼寝をしてゐました、棚は大神宮様の神棚と並んだ薄暗いところであります。一体ここのお家は旧家ですから普通のお家とは違つて幾つものお座敷が続いてをります。そしてお座敷が広いから光線の通りが思ふやうではありません、家の中が総体に暗いのでございます。その上、柱も天井板も永い歳月を経たため、いつ煤けたともなしに真黒になつてをりますから、家の中が余計に暗いのでございます。
その薄暗い棚の上で達磨さんがお昼寝をしてゐますところへ鼠がまゐりました。ここのお家の天井裏には幾つもの鼠の巣があつて、夜昼なしに鼠が出てまゐるのでございます。達磨さんは[#「達磨さんは」は底本では「達磨さんば」]グーグーと鼾 をかいて眠つてをりますから、鼠が小声で、
『モシモシ達磨さん。』と呼んでみましたが達磨さんはちつとも知らずに眠つてをります。
鼠と達磨さんとは、これまでもお友達なのでございました。
その薄暗い棚の上で達磨さんがお昼寝をしてゐますところへ鼠がまゐりました。ここのお家の天井裏には幾つもの鼠の巣があつて、夜昼なしに鼠が出てまゐるのでございます。達磨さんは[#「達磨さんは」は底本では「達磨さんば」]グーグーと
『モシモシ達磨さん。』と呼んでみましたが達磨さんはちつとも知らずに眠つてをります。
鼠と達磨さんとは、これまでもお友達なのでございました。
達磨さん
達磨さん
お昼寝
達磨さん
お寝ぼの
達磨さん
手手なし
達磨さん
足なし
達磨さん
お目目の
達磨さん
お髯の
達磨さん
つんぼの
達磨さん
これでもお目目が
さめないか
ヤイヤイヤイヤイ
ヤーイ
鼠が、達磨さんのお耳へ口をあてて、さんざん悪口 の歌を歌ひますと、達磨さんもやつと目をさまして、あたりを見廻しましたが、お友達の鼠だと知りましたから、またグーグーと眠つてしまひました。
眠つちやいけない
達磨さん
達磨大師と
云ふ人は、云ふ人は
夜も昼も
寝ずに
壁を見て 九年
九年、九年
九
蜂が ぶんぶん
飛んで来て、飛んで来て
針を出しては
チツク チク
九年母を
チツク チク
達磨大師を
チツク チク
眠つちやいけない
達磨さん
蜂がぶんぶん
飛んで来る
鼠が、かう歌つてをりますうちに、達磨さんが急に大きな声を出して、
チユウチユウ鼠と
云ふ鼠
おー こわ こわや
猫の髯が こわや
おー こわ こわや
猫の声が こわや
あれあれ ゆうら ゆら
猫の髯では あるまいか
あれあれ ニヤンニヤンニヤン
猫の声では あるまいか
来た来た 来た来た
ゆうら ゆら
来た来た 来た来た
ニヤンニヤンニヤン
達磨さんの歌に鼠はびつくりした途端 に棚の上からころげ落ちました。しまつたと気がついてみると自分は達磨さんと一緒にお昼寝をしてゐたのでございます。また達磨さんは鼠が棚からころげ落ちるのをとめようとして自分もころりと落ちましたが、ハツと目がさめてみると、棚の上で鼠と一緒にお昼寝をしてゐたのでございます。鼠と達磨さんはお互に顔を見合せて、『ナーンダ、びつくりした。』と笑ひ出しました。
猫の髯なんか
こはくない
猫の声なんか
こはくない
チユウチユウ鼠は
このわたし
猫の弱虫
来て ごらん
鼠は、大層強がつてはをりますが、どうやら寝ぼけ顔でありました。達磨さんも目は、さめてもまだ眠むさうでございました。
タツト タツト タツトタ
パラソルさして
フウワリ フワリ
砂山越えて
タツト タツト タツトタ
砂原越えて
フウワリ フワリ
お
タツト タツト タツトタ
どちらへおいで
フウワリ フワリ
向ふに見える
タツト タツト タツトタ
つんつん
フウワリ フワリ
あの木の蔭に
タツト タツト タツトタ
竹に 短冊
たんたんたん
たんたんたんの
七夕に
夜は お空に
天の川
天の川へ
かささぎが
板をならべて
橋をかけ
たんたんわたれ
たんわたれ
七夕さまも
おわたりだ
たんたんわたれ
たんわたれ
シユ シユウ シユシユ
水鉄砲
あたればお顔も水だらけ。
負けずに打つた、打つた、
シユシユシユ。
シユ シユウ シユシユ
水の
逃げても
負けずに打つた、打つた、
シユシユシユ。
カン カン かぢやの
かぢやさん
トンカン トンカン
なつの日に
火花がちります
おお あつい
あつくもやすまず
トツピン カン
トツピン トツピン
トツピン カン
てつまでとけます
おお あつい
船もよい
船も帆がなきや
お供についた
クマワニが
山で帆柱
伐りました
その時伐つた
帆柱は
帆柱山の
杉でした。
(註)クマワニとは神功皇后三韓征伐の折案内役を勤めたる王賊の名
チンドン屋は
チンドン チンドン
とんがり トルコの
三角帽子だヨ
三角帽子は
トルコのお土産
かぶれば どつこい
ぐらぐら帽子だヨ
さうかい さうかい
ズボンもオヤオヤ
長崎オランダ
伴天連ズボンは
オランダお土産
はいたら どつこい
だぶだぶズボンだヨ
風が ふけ ふけ
ヨツトがはしる
かけた白帆に
ふけ ふけ 風ヨ
風はふいても
たつなよ 波ヨ
たてば つぎ つぎ
ざぶん ざぶん と
ヨツトがゆれる
波はたたずに
ふけ ふけ 風ヨ
帆かけた お船は
遠くの 遠くの 海へゆく
海には
空には 七つの 離れ星
お星も 珊瑚の 磯に出る
お星の 出るころ 聞ゆるは
眠れや 眠れの 子守唄
お舟も その唄 聞いて来る
海から お金が
湧いて来た
と、言うて浜辺は
大さわぎ
オヤオヤ 今年は
大漁だね
渚に お金が
降つて来る
と、言うて浜辺は
寝ずの番
オヤオヤ 今年は
大漁だネ
さうとも 今年は
大漁だヨ
積まれた魚が
山となる
オヤオヤ 浜辺は
パツパの パアと
青い 青い 青い
電気が ついた
青い窓 小窓
小窓の 蔭の
テーブル掛の
パツパの パアと
青い 青い 青い
船漕ぎ虫が
船を 漕ぎながら
可愛い声で
スイスイと とまる
船漕ぎ虫は
リーダは 読めぬ
行つたり 来たり
青い 青い 青い
テーブル掛で
リーダを 眺め
長い
青い 青い 小窓
朝から 晩まで
カホカホチツチと
雀もよろこべ
烏もよろこべ
五穀が豊年ヨ
朝から 晩まで
モウモウヒヒンと
仔牛もよろこべ
仔馬もよろこべ
田畑が豊作ヨ
朝から 晩まで
ニコニコヤンヤと
子供もよろこぶ
田舎は
一丁目の角に
木の橋かけた
トントン渡れ
トントン渡れ
二丁目の角に
石橋かけた
ズンズン渡れ
ズンズン渡れ
三丁目の角に
吊り橋かけた
ハヨハヨ渡れ
ハヨハヨ渡れ
三丁目の橋は
ユラユラ橋だ
駆け駆け渡る
駆け駆け渡る
テンキ ポンキ
テンキ ポンキ
コラサノサ
鼠が 米つく
お米が ころげて
コラサノサ
テンキ ポンキ
テンキ ポンキ
コラサノサ
こぼれた お米を
鼠が 運んだ
どうして 運んだ
担いで 運んだ
コラサノサ
テンキ ポンキ
テンキ ポンキ
コラサノサ
よくよく 見たれば
よくよく
担ぐが 出来ずに
子鼠 困つて
コラサノサ
テンキ ポンキ
テンキ ポンキ
コラサノサ
キヨロ ピリ キヨロピリ
エンヤラ エンサと
一粒 一粒
くはへて 運んだ
コラサノサ
テンキ ポンキ
テンキ ポンキ
コラサノサ
赤い鳳仙花 白い鳳仙花
咲いた咲いた 鳳仙花
明日又遊ぼ 庭の鳳仙花
けんけん 子雉子
赤い帽子かぶつて 山にゐるやい
おしやれな 子雉子
赤い帽子かぶつて 山にゐるやい
山から 子雉子
赤い帽子かぶつて 里へ来いやい
螢の学校が 始まつた
螢に甘い水 汲んで飲まそ
青い提灯 田甫でとぼしてる
並んで提灯 とぼしてる
天の川の こつちには
機を織る お星さま
天の川の あつちには
牛を曳く お星さま
七月七日 七夕さまは
お空の お星さん
もしもし博多の 子供さん
昔博多の お人形様は
可愛いからこの かんかゆつてた
かんかゆつてた
もしもし博多の 子供さん
今の博多の お人形様は
赤い西洋の まんと着てる
まんと着てる
[#改ページ]
昭和七年
迷ひ子の 小猿は
キヤツキヤツ キヤ
赤いお顔を青くして
お
キヤツキヤツ キヤ
木の栗鼠さん
わたしは 迷ひ子の
小猿です
ここのお山は
どこですか
教へて下さい
キヤツキヤツ キヤ
きヨろぴり小栗鼠の
キヤツキヤツ キヤ
小さいお目目を丸くして
迷ひ子の小猿か
キヤツキヤツ キヤ
猿さん 猿さん
小猿さん
わたしは 木のぼり
小栗鼠です
ここのお山は
どこですか
わたしも 知らない
キヤツキヤツ キヤ
どの子に あげませう
お土産を
一つお土産 日和傘
泣かずに おるすゐ
出来た子に
二つお土産 呼ぶ子笛
泣かずに おるすゐ
出来た子は
三つお土産 髪飾り
さうです さうです
あの子です
四つお土産 銀の鈴
あの子に あげませう
お土産を
五つお土産 皆そろへ
羽根つき
ツンツンツン
お羽根は
カッチン コ
羽子板
見たら
また来な
カッチン コ
眠り草眠れよ 夕雲ア下る
雀は酒盛りに みんな飛んでゆく
雀の酒盛り 見にゆこか
雀の酒盛りや 賑かだ
眠り草眠れよ 夕雲ア下る
雀は酒盛りに みんな飛んでゆく
花になりたや 水藻の花に
少女姿は 水藻の花か
踊れ楽しく この世の中を
踊る少女の 姿が可愛や
花は水藻で ラツトラツトラツトラ
この世楽しく 踊れや少女
山ではねるは 兎の子
兎 子兎 なに見てはねる
落ちる木の葉を 見てはねる
山に木がない 兎の子
兎 子兎 なに見てはねる
茅の枯れ葉を 見てはねる
パパさん ママさん
二月です
二月の
一の午
狐が よろこぶ
コンコン コン
パパさん ママさん
子狐が
とんがり お口で
言ひました
コンコン コン
満洲は 見渡す
雪の原
国続き
吹雪の中ゆく
トロイカや
ペチカの 焚く火は
とろとろと
一月 二月も
まだ おろか
桜が咲いても
雪が降る
梅にうぐひす
ホウ ホケキヨ
ホケキヨとなくから
梅がさく
うぐひす なけ なけ
梅の木で
梅の木で
竹にすずめは
きてあそぶ
あそんで あきれば
とんでゆく
あそびに こい こい
竹やぶに
竹やぶに
一つ蝶々 とんで来た
赤い花さがしに とんで来た
二つ蝶々 とんで来た
赤い花さがしに とんで来た
一つ蝶々 とんでつた
赤い花ないから とんでつた
二つ蝶々 とんでつた
赤い花ないから とんでつた
皆さん明日また 遊びませう
雀のお歌を うたいませう
烏のお歌も うたいませう
皆さんどなたも 御苦労さん
明日また仲よく 遊びませう
お守のお里で 啼く雲雀
菜の花ながめて ねんねする
五月は菜たねの 花ざかり
お日様暮れても まだ暮れぬ
雲雀がねんねに 来る頃にや
お空も一ぱい 夕焼ける
お空のお星さま 銀の鈴
鈴ならりんりん りんと鳴る
りんりん鳴るのは 銀の鈴
ちんちん鳴るのは 金の鈴
お空のお星さま 銀の鈴
お空でりんりん りんと鳴る
窓が開きます
カツチ カチ
時計が鳴ります
ボン ボン ボン
窓から出て来て
サツ サツ サツ
わたしは鳩です
ポウ ポウ ポウ
窓が カチリと
閉ります
時計も鳴るのが
やみました
急いで窓から
サツ サツ サツ
わたしは鳩です
パツ パツ パツ
お靴をはいて
進軍ごつこ
一二の三で
鉄砲をかつぎ
ラツパを吹いて
お一二お一二
兵隊ごつこ
帽子をかぶり
一二の三で
足ふみならし
両手を振つて
お一二お一二
燕は お空の
身軽に すいすい
飛びまはる
横飛び
面白く
電信柱の
電線に
ちよいと 止つて
中休み。
ピツチク チクチク
啼きながら
どこへゆくかと
見てゐると
高く 上つて
青空に
航空飛行の
まねもする。
ツバメハ カシコイ
トリダカラ
キヨネンノ フルスヲ
ワスレズニ
サクラガ サクコロ
マタキマス
キヨネンハ コドモノ
ツバメダガ
コトシハ オトナニ
ナツタカラ
アメニモ カゼニモ
マケナイデ
スイスイ スイスイ
トビアルク
お空で お昼寝
春の雲
桜が 咲いても
グウ グウ グ
オヤオヤ サツサ
オヤ サツサ
グウ グウ グ
この日の 永いに
春の雲
桜も あきれて
ヤア ヤア ヤ
オヤオヤ サツサ
オヤ サツサ
雲雀も あきれて
セツ セツ セ
うそつき 子供は
かはいそに
狐が 夜きて
つれていく
狐の お宿に
いつたなら
にげても にげても
かへれない
その上 またまた
かはいそに
狐が こさへた
土だんご
いやだと いつても
むりやりに
ないても ないても
たべさせる
空は梅雨空 ゆふべの月よ
月も梅雨空 つゆたれる
月はゆふ月 ゆふべの星よ
星の梅雨空 つゆたれる
晴れた梅雨空 晴れぬか梅雨よ
月もお星も 晴れて出な
北の方は雪だ
西の方は風だ
サアーラ サアラ サラ
パアーラ パアラ パラ
渡り鳥ア 渡つた
南の方へ 渡つた
南の方も雪だ
東の方へ渡つた
サアーラ サアラ サラ
パアーラ パアラ
渡り鳥ア 渡つた
渦をまいて 渡つた
電信柱の
はりがねに
とまつてないてる
つばくらめ
学校の生徒が
とほつたら
チクチクピーチク
ご勉強か
学校の教室
ガラスまど
ガラスのそとから
つばくらめ
教室 みい みい
とびながら
チクチクピーチク
ご勉強か
やつとさと
天気
赤ちやん
おんぶ
お洗濯
ゴツチ ゴツチ セツセ
ゴツチ ゴツチ セツセ
赤ちやん
顔へ
シヤボンが
ついた
母さん 知らずに
お洗濯
ゲツチ ゲツチ セツセ
ゴツチ ゴツチ セツセ
江戸祭 ヨイヨイ ヨイヨイ
江戸の生粋 神田の祭
わたしや神田の 唄人よ 唄人よ
江戸祭 ヨイヨイ ヨイヨイ
江戸祭 ヨイヨイ ヨイヨイ
江戸天王の 氏神様は
今日のお土産 笹団子 笹団子
江戸祭 ヨイヨイ ヨイヨイ
提灯つけて
ピイカリ ピカリ
黒い マント
かつぎ
赤い帽子
かぶり
里から 里へ
夜廻り螢
提灯消して
休んでみたり
スイの スイと
草に
飛んで行つて
みたり
フウラリ フラリ
里から 里へ
オ相撲ダ オ相撲ダ
蟹サン オ相撲ダ
鋏卜鋏デ
ヨーイシヨ ヨイシヨナ
フキダシ フキダシ
ドツチモ ツヨイゾ
ヨーイシヨ ヨイシヨナ
オシダセ ツキダセ
ノコツタ ノコツタ
行司ガヰナイカ
勝負ガツカナイ
ヒキワケ ヒキワケ
ヨーイシヨ ヨイシヨナ
くもの巣よりも なほしげく
縦横無尽に はられたる
鉄条網を うちながめ
にくや 小しやくな 十九路軍
今こそ見せん 時は来ぬ
たがひに顔を 見合せて
突撃路をば 開かんと
壮烈鬼神も なかしめし
ああ爆弾の 三勇士
セツ セツ セ
一反 二反は
トントントン
お馬も 手伝へ
セツ セツ セ
いやなら お
トントントン
三反 四反は
セツ セツ セ
背戸田で
トントントン
モシモシお向ふの
君子さん
赤いお靴で
ちやらちやらと
どちらへお客に
おいでです
お母さんと一緒に
草市へ
お盆さんのおすきな
花買ひに
白い
まんまるく
紅い蕾も
まんまるく
お盆さんのおすきは
蓮の花
蓮の花売る
草市へ
らくだよ とツと と
砂原とほつて
あの山へ
ぢやうちやん 坊ちやん
のせてゆく
お山は たかいぞ
三原山
いそいで あるけば
くたびれる
しづかに あるけば
ねむくなる
ゐねむりしながら
あるいたら
ころぶと あぶない
きをつけな
大島は東京から船で七時間ほどでゆける島です。三原山といふ火山があつて、ここにひろいすなはらがあります。このすなはらを、とほいくにからつれてきた、らくだが、人をのせてゆききしてゐます。
母さん お庭で
お張物
雀が お屋根で
見てゐます
あれあれ 母さん
あの雀
舌切雀で
ないか知ら
舌切雀で
あつたなら
機織り上手な
雀でせう
母さん母さん
御覧なさい
機なら かうして
織るのでせう
お一つヤ お二つヤ
三ツ目の
トンカラ リン
トンカラ リン
糊つけな
トントン カラリン
トンカラ リン
みんな愉快に
そろつてゆかう
秋のみ空は
晴れ渡る
み空は青く
小川も澄みて
広い野原も
森の
林の蔭に
啼くは小さな
秋の鳥
愉快な遠足
いざ足早に
小鳥にまけず
身も軽く
つんつん飛んでる 赤とんぼ
お空は高いぞ こつちむけ
子供。 森の
山彦。 森の小母さん 山彦さん
子供。 人の口真似上手だネ
山彦。 人の口真似上手だネ
子供。
山彦。 今日はゐますか ゐませんか
子供。 森でお昼寝してます ヨ
山彦。 森でお昼寝してます ヨ
子供。 風の吹く日は ゐません ネ
山彦。 風の吹く日は ゐません ネ
子供。 雨の降る日も ゐません ネ
山彦。 雨の降る日も ゐません ネ
子供。 風は寒くていやです ヨ
山彦。 風は寒くていやです ヨ
子供。 雨の降る日は ぬれるから
山彦。 雨の降る目は ぬれるから
子供。 着物を干すのに 困ります
山彦。 着物を干すのに 困ります
子供。 山越え山越え 山越えて
山彦。 山越え山越え 山越えて
子供。
山彦。 箕笠作りに 出かけます
子供。 森にはゐません 留守です ヨ
山彦。 森にはゐません 留守です ヨ
日の出は パツパと
東のお空に
パツパのパツパと
お顔を出します
オヤオヤお早う
真赤な真赤な
まんまるお顔で
ニコニコニコリと
皆さん 只今
オヤオヤお早う
お寝坊は 寝ぼけろ
お日さま出たのに
ねむくて ぐうぐう
お目目も あかない
オヤオヤお早う
ポチノ カケアシ
トツトト カケル
カテヨ カケアシ
カハイノ ポチヨ
カテバ オイシイ
ゴホウビ ヤルゾ
イマハ チサイガ
オホキク ナレバ
マケチヤ イケナイ
カケクラ シタラ
ポチヨ マイニチ
カケアシ ナラヘ
鉄砲 カツイデ
エツサツサ
今日ハ
鳥ウチニ
ポチモ オトモニ
ツイテイク
ポチヨ アレ見ナ
トンデ来テ
田甫 アラスハ
アノ鳥カ
ドント 鉄砲ヲ
ウツテヤロ
街の十字路
十字路に
交通整理の
お巡りさん
ピヨロピヨロピオと
吹く笛は
早く 進めの
合図です
ちよいと 出ました
信号機
それ行け やれ行け
ほら 進め
電車 自動車
トツトツトツ
子供も
トツトツトツ
また鳴る また鳴る
吹く笛に
ちよいと出ました
信号機
進んぢや いけない
直ぐに止れの
合図です
子供も 成人も
皆止る
電車 自動車
皆止る
感謝しませうよ
皆さんと
お巡りさんの
吹く笛に
[#改ページ]
昭和八年
進め 行列
国旗をたてて
一、二の三
廻れ 行列
さつさ 振れ振れ
一、二の三
進め 行列
旗持ちかへて
皆な 行け行け
一、二の三
旗に 春風
吹け吹け高く
さつさ 振れ振れ
一、二の三
お空の上から
学校の生徒を
見てゐます
向ふを行くのは優等で
学校で一ばん
よい生徒
こちらを行くのは いたづらで
一ばん いけない
生徒です
優等で よい子は
すぐわかる
道草しないで歩きます
いけない子供も
すぐわかる
道草しながら歩きます
森の木の葉が
枯れるころ
北から 西から
風が吹き
枯れた木の葉は
舞ひながら
吹かれて落ちます
パラパラと
落ちる木の葉も
吹く風も
あれは 自然の
姿です
春に芽を吹く
お仕度に
枯れて木の葉が
落ちるです
お馬 しやんこしやんこ
ハイ どう どう
おもちやのお馬は
やせお馬
やせても お馬は
お馬です
しやんこしやんこ しやんこしやんこ
ハイ どう どう
お庭は お天気
さア 歩け
お供は 後から
ついてきな
お供もお馬で
やせお馬
しやんこしやんこ しやんこしやんこ
ハイ どう どう
小鳥は丘や
森がすき
丘であそんで
森で寝る
籠のなかには
丘はない
籠のなかには
森もない
逃げた小鳥は
空たかく
つづくだけ
丘のかなたへ
飛んでゆく
森のかなたへ
飛んでゆく
みんな 出て来い
日の丸持つて
春が 来た来た
愉快だナ
ひろい野原に
あの大空に
吹くは 春風
愉快だナ
手には 日の丸
いさまし国旗
春が 来た来た
愉快だナ
靴は 編み上げ
帽子に旗に
吹くは 春風
愉快だナ
隊長 隊長さん
泳ぎの稽古
ワツシヨワツシヨワツシヨ
ガツコガツコガツコ
ワツシヨ ガツコ ワツシヨ ガツコ
ジヤンプジヤンプ泳ぐ
隊長 隊長さん
ホラ来た 隊長さん
両方のお目目
ポチポチさせて
ワツシヨワツシヨワツシヨ
ガツコガツコガツコ
ワツシヨ ガツコ ワツシヨ ガツコ
ジヤンプジヤンプ泳ぐ
きのぼり上手な
竹でも しのでも
のぼります
青いオーバに
くるまつて
はつぱに あがつて
ケツケツ ケ
ケコカコ ケコカコ
ケツケツ ケ
お空が くもると
大ごゑを
はりあげ はりあげ
なきながら
ぬれます ぬれます
雨がくる
せんたくこみなと
ケツケツ ケ
ケコカコ ケコカコ
ケツケツ ケ
小さい帆かけた
おもちやの舟は
ザンブ ザンブと
たらひの 海を
横にゆれ ゆれ
走つてる
誰も のらない
おもちやの舟は
風は なぎても
走らなくとも
小さい白帆を
かけた きり
いくら ゆれても
おもちやの舟は
ゆれる まんまに
流れる ままに
つなぐ いかりも
つなもない
とんぼ
追つかけたら
畑さ逃げた
とんぼよ
とんぼあ 畑で
すういすうい
シタキリ スズメノ
オヤドデハ
アサカラ ゲンキデ
チヤン カラ チヤン
ミンナデ ハタオリ
チヤン カラ チヤン
チヤン カラ チヤン カラ
チヤン カラ チヤン。
シヤウヂキ ヂイサン
キタナラバ
ハタオリ ヤスンデ
チヤン カラ チヤン
ミンナデ ゴチソウ
イタシマセウ
チヤン カラ チヤン カラ
チヤン カラ チヤン。
[#改ページ]
昭和九年
坊やも ゆきませう
夢買ひに
あの山 越えて
遠くまで
あの海 越えて
遠くまで
お山は お馬で
越えてゆく
海なら お舟で
越えてゆく
正月二日の
夢買ひに
お馬は かはいい
うさぎ馬
お舟も 小さい
銀の舟
お舟で お馬で
夢買ひに
鷹が啼いた
ピーと啼いた
鷹が啼いた
小鳥が びつくりして
これわいさの サ
びつくり しやつくり
びつくり しやつくり
飛んでゆく
猫が啼いた
ニヤンと啼いた
猫が啼いた
鼠が びつくりして
これわいさの サ
びつくり しやつくり
びつくり しやつくり
逃げてゆく
われらは 日本の幼年ぞ
心はつねに きよらかに
朝日のごとく くもりなし
大和魂 みな一つ
ともにやさしく うつくしく
よわきをたすけ いざゆかん
われらは 日本の幼年ぞ
歳は小くも 幼くも
やがては国の 楯となる
まなびきたへん すこやかに
親のいひつけ まもるこそ
孝のはじめと しりたまへ
忠と孝とは むかしより
世界にほこる をしへなり
チラチラ ふつてる
春の雪
雀のお宿に
つもらずに
小やぶの上にも
つもらずに
ふつても チラチラ
消えてゆく
雀のお宿は
やぶのかげ
寒くて なくから
つもらずに
小やぶの上にも
チラチラと
ふつても 消えてく
春の雪
カラスノクロンボ
ナゼ クロイ
ナゼダカ ワタシハ
シラナイガ
ワタシノ オツカサンモ
マツクロイ
ソレナラ ハナシテ
キカセヨカ
オマヘノ オツカサンノ
オツカサンガ
タンタン タニシヲ
トリニキテ
スベツテコロンデ
アツパツパ
タンボノドロミヅ
ノンダカラ
カゴノウグヒス
ウグヒスサン
ケサノ オイシイ
コノエサハ
ワタシノコサヘタ
スリエデス
ホケキヨ ホケキヨト
ヨイコエデ
ナクヨニ ワタシガ
アゲマスヨ
ホケキヨ ホケキヨト
ナイタナラ
キイタ ミンナハ
ヨロコンデ
ナイタ ナイタト
ホメマスヨ
けふは うれしい
花まつり
花が ちら ちら
ふるなかに
生れましたは
お
かねが ごんごん
なりました
だれも なかよく
げんきよく
みんなで いきませう
茶摘み乙女は
茶どころ育ち
唄で摘む
茶の樹畑は
日和がつづき
空は 青空
富士の
並木の松も
中にある
摘めや 摘め 摘め
茶摘みの乙女
唄で摘まねば
茶は摘めぬ
摘んだ 摘んだ 摘んだ
茶の葉を摘んだ
一つ摘んでは
茶の樹をめぐり
二つ摘んでも
茶の樹をめぐり
摘んだ茶の葉を
手籠に入れて
手籠手に下げ
チヤラ チヤァラト
呼んだ 呼んだ 呼んだ
茶の樹で呼んだ
一つ呼んだは
雀の鳥か
二つ呼んだも
雀の鳥か
呼んだ雀が
茶の樹にとまり
お空眺めて
チヤラ チヤァラト
まい日 しとしと
雨がふり
お日さま お顔が
見えません
小川も お池も
水がまし
たんぼも 一面
水びたし
お馬も しとしと
ぬれながら
しよんぼり あるいて
とほります
のき下に
お空を ながめて
立つてます
木のある山と
木のない山と
二つの山は
どつちが青い
木のある山は
木の葉がしげり
木のない山も
すすきがしげる
どつちの山で
小鳥は遊ぶ
木のある山で
小鳥は遊ぶ
木の葉のかげや
小枝の上に
小鳥はとまり
飛び飛び遊ぶ
秋がきたから
とんできな とんぼ
赤い服 きて
うすい はねつけて
みんな おしやれな
友だち つれて
秋は ひなたも
お日さまかげる
おしやれ ひなたの
赤いとんぼ とんぼ
早く とんできな
友だちつれて
ノロさん ノロさん ノロさんよ
ノロさん お
ぴよこ ぴよこ
遊びに 出て来ます
ノロさん ノロさん ノロさんは
ぽかんと 並んで 原つぱに
汽車ぽつぽ 汽車ぽつぽ 待つてます
ノロさん ノロさん ノロさんよ
汽車が 通れば ノロさんは
駈けくらごつこの
お首 ふりふり 角ふつて
ぴよこ ぴよこ
駈けくら 始めます
ノロさん ノロさん ノロさんは
オ一二 オ一二 原つぱを
汽車ぽつぽ 汽車ぽつぽ 走ります
ねこさん あるけば
にやん ころりん
にやん にやん ころりん
にやん ころりん
おすずは まるくて
しやん ころりん
しやん しやん ころりん
しやん ころりん
ねこさん おすずは
にやん ころりん
にやん にやん ころりん
にやん ころりん
おすずは ねこさん
しやん ころりん
しやん しやん ころりん
しやん ころりん
烏が 毎日
とんで来て
畠の 柿のみ
たべるから
かかしを こさへて
立ててても
にくらし 烏だ
くろ烏
畠の かかしを
ばかにして
やつぱり 柿のみ
たべに来る
[#改ページ]
昭和十年
雪でこさへた
雪こんこ だるま
こんこ 雪こんこ
雪こんこ だるま
だるま だるまさんは
雪こんこ おすき
みんな こい こい
だるまさんが できた
こんこ 雪こんこ
雪こんこ おかほ
雪でかためた
まんまる おかほ
だるま だるまさんに
雪こんこ おふり
みんな こい こい
おかほも できた
ネズミガ オクラニ
アツマツテ
オ米ノ
ハジメマス
チユウチユウ バタバタ
大サワギ
オ米ガ アツタラ
ミンナシテ
エンヤラエンヤラ
ヒイテコイ
チユウチユウ バタバタ
大サワギ
オ米ヲ ミツケテ
大ゼイデ
エンヤラエンヤラ
ヒイテユク
チユウチユウ バタバタ
大サワギ
桜のお花が
咲きました
おやおやみごとな
花ですね
小鳥が桜に
とんで来ちや
ツーピー ツーピー
ないてます
朝日に咲くのは
桜です
朝日は日本の
旗ですね
去年も咲いたが
もう咲いた
小鳥が ツーピー
ないてます
山から
かへる
草かり
お馬
シヤンコシヤンコ
シヤンコ
すすきも
萩も
お馬の
上で
シヤンコシヤンコ
シヤンコ
一人は
一人は
後に
シヤンコシヤンコ
シヤンコ
波はをどり子
をどりのけいこ
風のない日は
磯や浜辺や
小磯のかげに
けいこしながら
ぴちやぴちやをどる
風の吹く日は
いつたりきたり
走りまはつて
みな いそがしく
磯に浜辺に
小磯のかげに
どんどどんどと
せはしくをどる
秋の雲でては
お空にういて
おひるねしてる
そよそよ風が
お空にふくと
お目目をさまし
ふうわり ふわり
お山へかへる
秋の雲白い
ふうわり ふわり
お空であそぶ
遠くて見えぬ
お山のかげは
雲のゐるお
日ぐれの ころは
すつすとかへる
ホ ホ 豊年だ
畑もたんぼも 満作だ
となりの村でも
にこにこだ
お空もたかくて
お日和だ
うまやのお馬も
肥えてきた
今日から
おまつりだ
とことんとことん
にぎやかだ
[#改ページ]
昭和十一年
ねずみの行列
日の丸の
お旗をかついで
ゆきました
お旗は日本の
国旗です
ねずみは チユー チユー
ねずみです
チユーチユー ガタガタ
エツサツサ
いばつてゆくのは
隊長です
ぞろぞろゆくのは
お供です
ねずみの行列
正月は
進軍ごつこで
あそびます
チユーチユー ガタガタ
エツサツサ
スピツチヨスピツチヨ
よい天気
朝おき小鳥が
森でなく
小枝の上から
のぞいたり
お空の遠くを
ながめたり
スピツチヨスピツチヨ
森に来い
小枝の上まで
お友達
皆でそろつて
とんで来い
お空の遠くも
よく見える
トンビガ オソラヲ
トビナガラ
ピィヨロ ピィヨロ
フエヲフク
アノフエ トンビガ
オトシタラ
アスカラ トンビハ
フカレマイ
フエナシ トンビニ
ナツタナラ
オモチヤノ ラツパヲ
カシテヤロ
畑の青麦
のびてきた
菜たねは畑に
咲いてきた
お空に あがるは
あげ
ピイチクピイチク
なきあるく
畑の中から
セツセツセ
セツセツセ
お空になきなき
あがつてく
ピイチクピイチク
セツセツセ
とまり場はないに
とんぼ とんでこい
道草せずに
畑 土ばかり
とまり場はないに
ここは 日なたで
とまり場が多い
池の岸には
とんぼつりゐるに
川の岸にも
とんぼつりゐるに
池や川へは
こはいからゆくな
とんぼ ここへきて
ひるねして あそべ
たんぼの 稲は
かられたが
稲のかられた
田の中に
朝おき小鳥が
なきながら
おちぼ見つけに
とんでくる
小鳥に まけずに
早くから
小さい子供も
ともどもに
ざるを片手に
元気よく
おちぼひろひに
あるいてる
[#改ページ]
昭和十二年
餅をやいてると
やいてゐる餅に
まるく ふくれて
坊主山できた
一つできると
また 一つできた
ぷくりぷくりと
三つ四つできた
餅の坊主山
草木ははえぬ
はしでつつくと
坊主山 われた
われて こわれて
坊主山 きえる
麦が畑で
青いめをだした
霜が ふつた ふつた
畑の中に
どこの 畑も
まつ
風が ふいた ふいた
畑の中に
どこの 畑も
土までこほつた
ふんだ ふんだ ふんだ
麦 ふんだ ふんだ
霜にまけずに
ずんずん そだて
風にまけずに
どんどん のびろ
雪どけ この道
ぬかる道
学校へ行くにも
歩けない
みんな はいてる
新しい
ゴムの長靴
泥だらけ
早く この道
雪がとけ
土も かはいて
あたたかい
春のお天気
つづくよに
みんな この道
困つてる
大きい だるまは
ここへきな
小さい だるまも
ここへきな
きたなら おすまうを
とつてみな
お目目は まるくて
大きいが
おすまうを とるには
足がない
からだは まるまる
こえてるが
おすまうを とるには
手手がない
それでは こまつた
だるまさん
ごろごろ ころげて
とつてみな
せいたか 竹の子
ずんずんと
親竹 まかして
のびてゆく
竹に なれなれ
早くなれ
親の雀や
子雀が
チンバタチンバタ
きてとまる
せいたか 竹の子
竹になれ
竹は雀の
ハンモツク
朝から あそびに
とんでくる
親の雀や
子雀が
チンバタチンバタ
きてとまる
大きいこゑで
朝から早く
高い木の上に
せみがないてゐます
元気なこゑで
いきほひつよく
ひくい木の上に
せみがないてゐます
ないてるせみは
雨の日がきらひ
くもつた日でも
くらいからきらひ
よいお天気で
あかるくなれと
きこえるやうに
せみがないてゐます
[#改ページ]
昭和十三年
風吹ケ 風吹ケ
ハヤク 吹ケ
海カラ 山カラ
アヲ空ニ
凧アゲ スルカラ
風ガ 吹ケ
羽根ツキ ハジメル
風吹クナ
オニハニ オヤネニ
アヲ空ニ
羽根ツキ スルカラ
風吹クナ
慰問袋を
こしらへて
兵隊さんに
送ります
世界を照らす
日の丸の
小さい国旗も
中に入れ
下さいと
手紙も書いて
勇ましく
少国民の
慰問袋で
知らせます
[#改ページ]
昭和十四年
愚かなものは
知らずして
わが神国を
あなどらむ
若けれど
智勇すぐれて
たぐひなく
護りなる
神風天に
吹き起り
海を
十万の
打ち払ふ
日本国中に
名の高き
学者歴史家
皆招き
神代の遠き
昔より
一一歴史を
打ち調べ
これぞ日本の
行く道と
大義名分
正しつつ
世にも尊き
尊皇の
忠勇武烈
限りなく
酷寒苦熱
物かはと
幾聖戦は
続きけり
殊に
香爐峰
突込む
飯塚部隊長
世界に誇る
比類なき
ここに知る
おきに まいにち とんでるは
さかなを さがす かもめです。
さかな むれむれ あつまると
みつけて かもめも すぐ来ます。
さかなの ゐるはうへ とびながら
はなれず つづいて いくのです。
タンボニ トンデタ
アカトンボ、
カカシニ トマツテ
オヒルネダ。
オヒサマ カンカン
オオ アツイ
ネバウノ ネバウノ
アカトンボ、
アシタノ アサマデ
オヒルネカ、
オヒサマ カンカン
オオ アツイ。
[#改ページ]
昭和十五年
けふは たのしい
お正月、
一年 二年 と
かぞへたら、
二千六百
ありました。
紀元の 年の
はじめから、
ことしは
二千六百年、
日本の 国は
ふるいです。
勇ましく
天地も明けて
うららかに
なりました
銃後の人も
ともどもに
めでたい今日を
祝ひつつ
遠く戦地を
しのびます
メダカガ ソロツテ
ゲンキヨク
水モ キレイニ
ナガレテル
小川ノ 中デ
アソビマス。
オソラヲ ミレバ
ズンズント
オ山ノ 上ヲ
ワタノヨニ
ウイテル クモモ
トビマシタ。
金魚やさんが
うりにくる、
あかい 金魚は
おなかよし。
びんの 中でも
げんきよく、
みんな そろつて
あそびます。
小さい くちで
ぴしやぴしやと、
水を のみのみ
およぎます。
ハダシデ ミヅクミ
セツセツセ。
タラヒニ イツパイ
ザンブリコ。
オモチヤノ オフネハ
ツンツンツン。
カアサン イツシヨニ
セツセツセ。
マケズニ ミヅクミ
ザンブリコ。
オモチヤノ オフネハ
ツンツンツン。
島影遠く
見渡せば
波もしづかに
青々と
東亜の空も
雲はれて
風もそよそよ
吹いて来る
日の丸高く
ひるがへし
海の遠くを
船がゆく
進みて共に
勇ましく
われも海の子
いざゆかむ
チリリン チリリン
チン チリリン。
ノキバノ フウリン
スズシイナ。
チリリン チリリン
チン チリリン
カゼハ ナクトモ
スズシイナ。
チリリン チリリン
チン チリリン。
ノキバノ フウリン
チン チリリン。
海はざんぶり
ざんぶりこ
舟もざんぶり
ざんぶりこ
われは海の子
勇ましく
波のうづまき
ざんぶりこ
波もざんぶり
ざんぶりこ
青い海原
ざんぶりこ
[#改ページ]
昭和十六年
日・独・伊の 三国は
同盟国と なりました
国の平和を つくるのです
勤倹節約 人々は
共に励みて 進みゆき
新体制は 国民の
すべての
見よ見よ空の 飛行機に
世界に誇る 軍艦に
忠勇義烈 陸軍の
誉も高き
国の護りは ゆるぎなし
やがて来るべき 平和こそ
同盟国の 名を挙げむ
遠く空から ほのぼのと
日の出に海は 明けてゆき
千鳥の声も 聞えます
渚に近く 緑濃き
並木の松も 末永く
昇る朝日を 村人は
共によろこび 伏し拝む
渚 渚に ひたひたと
波はより来て 又帰る
音もかすかに 寄す波は
春の
見渡す限り 青々と
浮べる雲の 影もなし
新たな歳を 祝ひます
沖ゆく舟も 帰りなば
初の大漁に
ざしきのえんを
かあさんが
あけるあまどに
目をさまし
見ればおにはも
まつ白に
ただ一めんの
雪のあさ
のぼるあさ日は
きらきらと
雪もかがやく
日本ばれ
雪だ 雪だと
とびおきて
こさへてあそぶ
雪だるま
野山に雪は
降り積り
見渡す限り
真白に
兎が遊びに
出かけます
どこも一面
銀世界
歩き廻つて
ゐるうちに
とうとう道を
踏み迷ひ
どちらを向いても
雪ばかり
兎が道を
さがしてる。
チキユウセツハ
メデタイナ
クワウゴウサマノ
オウマレ日
ガツカウモ ヤクバモ
イハヒマス。
山ノ 上カラ
見テヰルト
ハタモ ヒラヒラ
ヒルガヘリ
ケフノ ヨキ日ヲ
イハヒマス。
ぼくらは
国民三年生
ことしも学期の
はじめから、
一年生の 弟も
妹たちも
ふえました、
学校で朝から
おほぜいで
元気になかよく
あそびます、
三年生の
きやうだいは
一年生を かはいがり、
学校の中まで
をしへたり
おじぎのしかたも
をしへます、
みんなそろつて
ハイハイと
三年生に まなびます。
空は明るく
日の光
野の涯までも
うららかに
山の桜が
咲きました
春は小鳥も
楽しげに
桜の枝に
来て
花より花へ
ほがらかに
枝より枝へ
飛んでゆく
友呼ぶ声も
聞えます
駒は いななく
春の野に
どこへゆくのか
知らないが
いななき いななき
駈けてゆく
雲はお空の
上をゆき
野原は遠く
涯もなし
駒はひろ野を
駈けてゆく
ヒバリハ サヘヅル
ピイチクピ
オソラハ アカルク
ハレマシタ。
エンソクガヘリノ
一ネンセイ
ムギノホ バタケヲ
トホリマス。
サヘヅル ヒバリモ
ゲンキヨク
ピイチク ピイチク
アガリマス。
野にも山にも
若葉はのびて
今年も来たか
つばくらめ
遠い南の
お国から
海を渡りて
飛んで来る
高い山に
霞がかかり
里は桜の
花ざかり
去年の古巣
わが家に
たづねて来たか
つばめ鳥
東亜共栄の 確立に
勤労努力
わが国力を うち建てん
体を鍛へて
鉄のごと
理数に通じ
明かに
芸能
たぐひなく
少国民を 初めとし
一億万の 国民は
花の如くに 咲きぬべし
ザアザア
フツタ
ユフダチモ
オソラ 一メン
ハレマシタ
ヤマノ ウヘニハ
キノ エダモ
アカルクナツテ
ミエテマス
キレイナ ニジハ
ハシノ ヤウ
タカイ オソラニ
カカリマス
海の向うの 島蔭に
舟はならんで いきました
空もきれいに 雲はなく
波もしづかに 晴れてます
島の上には 松の木も
あちらこちらに 見えました
今日もはればれ 海は
お舟があれば いかれます
お空に雲が 出て来ても
波は高くも 平気です
風が吹いても 強くとも
舟がゆれても 元気です
東亜の海の 果までも
どんなとこでも いかれます
ヨイコハ
ゲンキデ
オルスバン
タンボノ イネカリ
ヲヘタナラ
カアサン イソイデ
カヘリマス
マツテモ カヘリガ
オソイナラ
センチノ トウサン
オモヒダシ
トホクノ コミチヲ
ミテ ヰマセウ
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昭和十七年
輝く戦果
飛行機ぶんぶん 飛んでゐる
世界を照らす
勇み勇んで 限りない
五月節句の 大空に
武勇
強く勇まし 日の丸の
旗も東亜に ひるがへり
日本のほこり