常識を働かせ、実際的な立場から考えると、性、育児教育等に関するよい書物も必要でしょう。私には一々指名出来ません。心の上から行くと頭に浮ぶだけでも、夏目漱石の「行人」「それから」「門」ツルゲーネフの「その前夜」「処女地」ロマンローランの「ジャン・クリストフ」名を一寸思い出せませんが、同じ人が女性を主人公として描いた最近の長篇。ガルスワージーの“saint's progress”バッチンスの“this freedom”その他、深く読むべきものが多いと思います。ゲーテの「親和力」アンリー・ファブルの昆虫記のようなものもよい本です。
質問外のことですが、此等を書きながら私の心に起ったことを言わせて下さい。結婚が最も冒険であり一大事であるのは、運命的な要点が(其人等によって)他人の書いたどの本にも載っていないという事です。
〔一九二四年五月〕