作品名: | 深く青い海 |
作品名読み: | ふかくあおいうみ |
原題: | Deep Blue Sea |
著者名: | ラティガン テレンス |
分類: | NDC 932 |
作品について: | 演出はフリス・バンバリーに決まった。ラティガンはローレンス・オリヴィエに演出及びサー・ウイリアム・コリヤーの役をやって貰いたかったのだが、興行主ボーモンが他の興行主テネントがからむのを嫌い、また、はやく「シルヴィアって誰」を終にし、次の芝居をかけたかった。客の入りが悪く、ラティガン自身が金を興行の三分の一出してくれてはいても、これ以上「シルヴィア」を続けたくなかった。バンバリーは「お日様のあるうちに」のヨーロッパ巡業の時、ロナルド・スクワイヤー、ロバート・フレミングと一緒に役者として出ていた。その後 Waters of the Moon, The Holly and the Ivy の二つの芝居を演出し、成功を収めていた。 1951年7月、バンバリーは役者を決める仕事に取りかかった。女主人公へスター・コリヤーには、マーガレット・レイトン、あるいはスィーリア・ジョンソンもよいと思ったが、結局ペギー・アッシュクロフトが最適だと判断した。彼女を説得する役はボーモンである。バンバリーは言った。「ペギーはセクシーな人だが、へスターのような女に見られるのは嫌うと思う。」実際、本を読むなり、アッシュクロフトは「馬鹿な女(a silly woman)ね」と言って、即座に断った。ボーモンは食い下がり、10月にやっと承諾させた。ラティガンはニューヨークにいるフリードマンに電報を打った。「ビンキー(ボーモンのこと)はこれを自分の最大の勝利だと思っている」と。へスターの夫、サー・ウイリアムは、クライヴ・ブルックに断られた後、ローランド・カルヴァーに決まった。謎の男ミラーは、アレック・ギネスに断られた後、ピーター・イリングに決まった。へスターが駆け落ちする男、フレディーは、トレヴァー・ハワードに断られ、バンバリーはジミー・ハンリーを推した。しかし、カルヴァーが推薦する若い新人の役者がいた。彼がゴルフの時に偶々出会ったケネス・モアである。最初やらせてみた時、ラティガンもボーモンも気に入らなかった。しかしラティガンはひょっとするとカルヴァーの言っている通りかも知れないと、次の立会いの時モアに度の強い酒を二杯飲ませた。リラックスしたモアは完璧な演技を見せた。このフレディーの役がモアを一躍スターにしたのだった。 アッシュクロフトは自分の役が相変わらず気に入らなかった。「まるで、着物なしの裸で、舞台を歩いている気分だわ」と演出に言った。バンバリーにはこれが却ってヒントになった。「そうなんだ。それがヘスターなんだ。だから君は名演技をしているんだ。」1952年2月ブライトンでの試し公演が行われた。アッシュクロフトは次の場面にリハーサルでやったことのない新解釈でヘスターを演じた。会話の間中、ただじっと窓の外を見ていたのだ。バンバリーは言った。「あれは僕の演出じゃない。ペギーの邪魔をしないだけ。それが僕の演出だ」と。効果は素晴らしい(utterly absorbing)であった。 へスター今私達が言いかけていた言葉。「愛」って言えば、当たり障りがないでしょう。時間の節約にもなるわ。 コリアーあいつの君に対する感情は、あれから変わっていないって、さっき言ったんじゃないのか。 へスター変わってはいないわ、ビル。それは変わりようがないの。最初からゼロなの。少なくなりようがないでしょう? (間。) コリアー何時それに気がついたんだ。 へスター最初から。 コリアーだけど、君は最初僕に・・・ へスター違う事を言ったかもしれないわ、ビル。嘘を言っていたらご免なさい。私の育ちのせいだわ。子供の頃から教えられてきたのね。こういった場合、愛を与えるのは女じゃなくて、男の方。その方がふさわしいって。だから・・・ (間。) コリアーしかし、愛を与える代りに何のお返しもしないような男。君はさっきそう言ったね。そんな男を愛し続けるなんて、一体出来るのか。 へスターええ。でもあの人、お返しに私に与える事が出来るものがあるの。そして与えてくれるわ、時々は。 コリアー何だい、それは。 へスターあの人の體。 1952年3月6日ダッチェス劇場で初日があがった。最後の幕が降りると、観客は割れるような拍手を送った。その音は、この芝居が始まってから観客が出した最初の音であった。マンチェスター・ガーディアンのフィリップ・ウォレスは「観客は、よく書かれ、素晴らしく演じられた感動的な芝居をどのように称えるか、それを明らかに知っている{まごうかたなき、緊張した沈黙(unmistakable hush)}をもって聴き入った」と。また、デイリー・メイルの見出しは、「ラティガン、再びトップに躍り上がる」であった。(この「深く青い海」は513回のロングランであった。)(St. Martin s Press社, Geoffrey Wansell 著 Terence Rattigan による。能美武功平成11年5月28日記) |
文字遣い種別: | 新字新仮名 |
備考: |
分類: | 著者 |
作家名: | ラティガン テレンス |
作家名読み: | ラティガン テレンス |
ローマ字表記: | Rattigan, Terence |
生年: | 1911-06-10 |
没年: | 1977-11-30 |
人物について: | Terence Mervyn Rattigan (1911-1977)イギリスの劇作家。オックスフォード大学に学んで外交官を志したが、劇作に興味をもって学業を中断。喜劇「涙なしのフランス語」(1936)が処女作。ここに父親との関係、学業を中断した経緯、などが盛り込まれている。「シルヴィアって誰」(1950)にも彼の青年期の親子関係が書かれていて、面白い。 劇団「昴-三百人劇場」では時々ラティガンのものが演じられている。現在(平成10年)までに次のものあり。 ●昭和54年 海は青く深く(Deep Blue Sea)臼井善隆訳 樋口昌弘演出 新村礼子 山口哲也 久保田民絵 鳳八千代 西本裕之 加藤和夫 北村総一郎 吉井公一 ●昭和58年 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 中西由美演出 森脇操 山本勝彦 ●昭和60年9月 ウィンズローボーイ(Winslow Boy)福田逸訳・演出 簗正昭 久米明 北島マヤ 山口嘉三 ●平成1年2月 海は青く深く(Deep Blue Sea)臼井善隆訳 樋口昌弘演出 中山有子 知念寛子 松下丈司 ●平成1年7月 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 樋口昌弘演出 原聖子 中山有子 松下丈司 ●平成5年 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 中西由美演出 信正小百合 石田博英 松谷彼哉 商業演劇で「王子と踊り子(Sleeping Prince)」(権謀術数に明け暮れるカルパチアの王が、アメリカの踊り子と知りあい、愛に生きる生活に目覚めるまで)が、ミュージカルとして演じられた。(太地真央 益田喜頓 他) 尚、映画化されたものは下記。 1.銘々のテーブル(日本での題名「旅路」)バート・ランカスター、リタ・ヘイワース、デイヴィッド・ニヴェン、デボラ・カー主演 2.眠りの森の王子(日本での題名「王子と踊り子」)ローレンス・オリヴィエ、マリリン・モンロー主演 3.シルヴィアって誰(原題 The Man who loved redheads) モイラ・シェイラ主演 (平成11年5月17日 能美武功 記) 「テレンス・ラティガン」 |
分類: | 翻訳者 |
作家名: | 能美 武功 |
作家名読み: | のうみ たけのり |
ローマ字表記: | Nomi, Takenori |
入力: | 能美武功 |
ファイル種別 | 圧縮 | ファイル名(リンク) | 文字集合/符号化方式 | サイズ | 初登録日 | 最終更新日 |
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HTMLファイル | なし | http://www.01.246.ne.jp/~tnoumi/noumi1/eng.html | JIS X 0208/ShiftJIS | 0 | 1999-06-25 | 1999-06-25 |
エキスパンドブックファイル | なし | http://www.01.246.ne.jp/~tnoumi/noumi1/eng.html | JIS X 0208/ShiftJIS | 0 | 1999-06-25 | 1999-06-25 |
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