らいてうさま、
ほんとうに私は嬉しう御ざいます。私はあなたの第二の感想集が出版されるのだと思ひますとまるで自分のものでも出すやうな心持ちがいたします。最近の私達の生活を知つてゐるものは私達自身きりですわね、私たちは私たちの周囲の極く少数の人をのぞく他の誰からも理解や同情など云ふものを得ることは出来ませんでしたね、まるで私だちの周囲は真暗でしたもの。疑惑と中傷と誤解と威圧とそして侮蔑と嘲笑と揶揄とが代る/″\に私達を一番親しく見舞つてくれましたわね、けれどもその中からこのあなたの論文集が生れたのですわね、それに依つて如何にあなたがそれ等にお接しなすつたかと云ふ事がこの書に依つて明瞭になることが私にとつて一番うれしいのです。私はこの書が出来る
(三、一一、八)
小石川にて
野枝
らいてうさま
[平塚明『現代と婦人の生活』日月社、一九一四年一一月]