頌歌

富永太郎




はがねの波に
  アベラール沈み
鉛のとも
  エロイーズ浮む

骸炭はみをに乗り
直立する彼岸花を捧げて走り
『死』は半ばくちを開いて 水を恋ひ
また おき霊床たまどことする
すべては 緑礬のみづ底に息をつく
象牙だまの腹部のうちら側に





底本:「富永太郎詩集」現代詩文庫、思潮社
   1975(昭和50)年7月10日初版第1刷
   1984(昭和59)年10月1日第6刷
底本の親本:「定本富永太郎詩集」中央公論社
   1971(昭和46)年1月
初出:「山繭 第四号」
   1925(大正14)年3月
入力:村松洋一
校正:Juki
2013年10月6日作成
2014年3月7日修正
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