水のほとりに

三富朽葉




水のほとりにこぼれる
響ない真昼の樹魂こだま

物のおもひの降り注ぐ
はてしなさ。

ちて消えゆく
もだしのこたへ。

水のほとりに生もなく死もなく、
声ない歌、
書かれぬ詩、
いづれかうるはしからぬ自らがあらう?

たまたま過ぎる人の姿、獣のかげ、
それは皆遠くへ行くのだ。

色、

光り、
永遠に続くなか





底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社
   1970(昭和45)年4月15日初版発行
   1979(昭和54)年11月20日新訂版発行
底本の親本:「三富朽葉詩集」第一書房
   1926(大正15)年10月15日発行
初出:「自然と印象 第一集」自由詩社
   1909(明治42)年5月10日発行
入力:hitsuji
校正:きりんの手紙
2022年7月27日作成
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