いつの
その
ある日、七色の虹猫は日向ぼつこをしてゐました。すると、何だか、たいくつで仕方がなくなりました。といふのは、近頃、お伽の国は天下太平で、何事もなかつたからです。
「どうも、かういつも、あつけらかんとして遊んでばかりゐては、体が悪くなつていけない。」と、猫は考へました。「どれ、一つ、そこいらに出かけて、冒険でもやらうか知ら。」
そこで、猫は、戸口にはり札をしました。
「二三日、留守をしますから、郵便や小包が、もし留守中にきましたら、どうか、煙突の中に投げこんで置いて下さい。――郵便屋さんへ。」
それから、ちよつとした荷物をこしらへて、それを
「どれ一つ、雲の人たちのところに、顔出ししてみようかな。」
猫はひとりごとを言ひながら、雲の土手をのぼり始めました。
雲の国に住まつてゐる人たちは、たいへん愉快な人たちでした。仕事といつては、べつだん何にもしないのですが、それでも、怠けてゐるからつて、世の中が面白くないわけでもないのです。そして、みんな立派な雲の御殿に住まつてゐますが、御殿は地球から見える方よりも、見えない側がかへつて大へん美しいのです。
雲の人たちは、とき/″\、一しよに、真珠色の馬車をはしらせたり、又軽いボートにのつて、帆をかけたりします。空の中に住まつてゐるので、たつた一人、
雲の人たちは、七色の虹猫がたづねてくれたのを大へんよろこんで、ていねいに
「まあ、ちやうどいゝところへお
七色の虹猫は、こんなこともあらうかと、ちやんと尻尾のさきの袋に、いろ/\の品物を用意してきたのでした。
ほんとに、びつくりするほどの立派な御婚礼だつたのです。
又北極光も、何とも言へない、美しい光りの服を着て出ました。むろん、花嫁の両親、魔法島の王とその真珠貝の
「それはまあ、どうしたらいゝだらう。」と、
そして、お客様も主人も、あわてゝ、ちり/″\に逃げ出しました。
けれども、七色の虹猫は落ちつきはらつてゐました。この猫はなか/\
猫は、そつとひとり、テイブルの下にもぐりこみ、そのもつて来た小さな袋を開けて、中のものをあらためながら、ぢつと考へてをりました。
が、間もなく、出て来ました。
「どうにか、私が雷様を来させないやうにしてみませう。」と、猫は申しました。「どうぞ、お祝ひは、もとのとほり、つゞけておやり
みんなは、七色の虹猫の勇気があつて、落ちついてゐるのに、たいへん、びつくりしました。けれども、お祝ひが途中で邪魔をされないだらうといふので、よろこんで、そこに集まり、そのときには、もう遠くにはつきり聞える雷様のごろ/\いふ声をきゝながら、その方へ、ずん/\走つて行く、七色の虹猫を見てゐました。
七色の虹猫は、走つて行くと、もうはるか向うに大きな雷様の姿を見つけたのでそこに立ちどまつて、袋を開け、中から一枚の大きなマントを引き出して、それを着、頭の上から、耳まで、すつぽりと
雷様は、このふしぎな姿をしたものが、天の道の中ほどにゐるところまでくると、そこに立ち止まりました。
「おい。きさまは何者だ、又こゝにゐて何をしてゐるんだ。」と、大きな声でどなりました。
「
雷様はさう言はれると、少し得意になりきげんを直しかけました。けれども、足をいためたので、まだ幾分怒つてゐます。
「ふん、おれは魔術師なんてものを大してえらいとは思つちやゐない。お前一たい、何ができるのだ。」
「
「ふゝん、さうか。ぢや、今、おれは何を考へてゐるのか、当てゝみなさい」
「そんなことはわけはない。あなたは、自分の足をいためたことを怒つて、あなたの底豆をけとばしたやつを
七色の虹猫は、前に
雷様はびつくりしました。
「うん、こいつは驚いた。お前、その術をおれに教へてくれないか。」
「それはむろん教へてあげよう。が、まづ、見こみがあるかないか試験をしてからでないと、いけない。お坐んなさい。」
雷様はそこに坐りました。七色の虹猫はそのまはりを三べん
「さあ、言つてごらん。
大男の雷様はぼんやりして、猫の顔を見上げてゐました。雷様はあんまり利口ではないのです。
「たぶん、おまいは、おれがこゝにぼんやり坐つてゐるのは、
「えらい。たまげた。それぢや修業して物になる見こみは十分にある。
「ぢやも一度やつてみようか。」
雷様は、自分が大へん利口だと思つたのです。
「よろしい。では、
雷様は、賢さうなふりをして、その小さな、馬鹿げた目で、ぼんやりと、虹猫の顔を見ました。
「ビフテキと
「これはえらい。」と、猫はわざと驚いたやうにいつて、尻もちをつきました。
「すつかり当つた。どうしてそんなことが分るのだい。」
「いや、なにね、ふつと心に思ひついたゞけさ。」と雷様は、言ひました。
猫はまじめくさつて、
「あなたはその才をこれから育てあげて行かなけりやならんぜ。すばらしいものだ。」
「どうして育てるんだ。」と、雷様はきゝました。人の心をよむといふことは、大へん愉快なものだと思つたのでした。
「なんでもないさ。」と、猫は、もうしめたと思つたので、いよ/\出たら目を言ひました。「
雷様はすぐにも
「大きにありがたう。だがね、ニヤンプウ子先生、これを教へていたゞいたお礼には何を上げませうか。」
七色の虹猫はしばらく考へてゐましたが、
「
大男の雷様はポケツトに手を入れて、
「お安いことだ。それならこゝに一たばあるから、これを持つておいで。用があるときには、その結んである
「どうも、ありがたう。」
さう言つて、七色の虹猫はいなづまを一たば
大男の雷様は、大いそぎで、
七色の虹猫は、いなづまの束をもつて、すぐにお城へ帰つて来ました。そこにゐた人たちは猫がしてくれたことを、たいへんよろこんで、口々にお礼を言ひました。虹猫もすつかり満足して、一週間、雲のお宮にゐて、それから自分のお