小説集「白い朝」後記

豊島与志雄




 茲に収められてるものは、都会の知識階級のおかしな物語である。これらの物語はみな、小悪魔の角度から眺められた。小悪魔は虚構の人物であるが、この場合、必要な創作技法であり、モラール探求の特殊な触手であった。だが、この類の物語を更に蒐集することに、小悪魔は退屈しないだろうけれど、作者は恐らく倦きるだろう。それ故作者はすぐに、少年正夫にとびついていった。正夫は結論であり、また新たな出発点である。前途はおのずから開けてくるであろう。――作者記す。





底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
   1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
初出:「白い朝 ――小悪魔集――」河出書房
   1938(昭和13)年7月
入力:門田裕志
校正:Juki
2013年5月7日作成
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