手紙

慶応三年二月二十二日 三吉慎蔵あて

坂本龍馬




近時新聞
○薩州大山格之助廿日関ニ来ル。則面会。此人(ママ)前ニ渡リ本国ニ帰ル。其筑前ニ渡る故ハ此度、朝廷より三条卿を初メ五卿を御帰京の事被仰出候よし、此儀ニ依而の事なり。
○先日井上(馨)太が京師より下りし時の船ニて、西郷(吉之助)ハ帰国致セし。此故ハ薩侯御上京の儀を以て下りし。
○此頃幕ニも大ニおれ合、薩州にこび候事甚しく、然レども将軍ハよ程の憤発にて、平常に異り候事共おゝく、ゆだん不成と申合候。
○薩の周旋此頃よ程行ハレ、先ニ御引込ニ相成候、廿四卿の御寃罪も相解ケ、(ママ)前の三条卿ハ御帰京の上ハ、天子の御補佐とならさせられ候よし、此儀ハ小松、西郷など決して見込ある事のよし。
 然レバ先ヅ天下の大幸ともいうべきか、※(二の字点、1-2-22)(たのしむべし)
○此頃将軍ハ海軍を大ニひらかんとて、米国へ大軍艦一艘船人ともに借入候よし。
 五ヶ年ニて八十万金程費と申事のよし。幕、原一之進が咄し致し候よし。
以上五条
二月廿二日 認
龍馬
慎蔵先生
足下





底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙の写真のキャプションに、(下関 長府博物館蔵)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年8月27日作成
2011年6月17日修正
青空文庫作成ファイル:
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