手紙

慶応三年十一月十日 林謙三あて

坂本龍馬




尊書よく拝見(但再度の)仕候。然ニ船一条甚因循のよし御苦心御察申上候。
別紙山崎へ送り候間、内※(二の字点、1-2-22)御覧の上山崎へ御送り(但シ其封へのりを付て)願候。
此上君をして船から(出)よの、なんのと云へバ、道理ニ於、私し不を得不申」思ふニ唯君のミならず、久年積学、もふ此頃ハ船の一ツも、私より御渡し可申ハ当然の所なるを、御存(知)の通の次第、ここに於ては私シ汗顔の次第なり。されバ此大極丸の一条ヘチヤモクレ、御一身おもしろくなしとくれバ、海援隊の名ハ身をよする所なれバ、持ておるがよろし。それとも幕へでも、薩へでも唯君をよろこび、君又天下に海軍を以てちからをのべたまふ所へ御出も、又御同意ニ候。もし是より又御進退の筋も在之候得バ、一通御達置可遣候。
前条の下の段申上候は再度の御書中ニ於御察申、御尤の御事と奉存候。
先は早※(二の字点、1-2-22)、謹言。
 十一月十日





底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙写真のキャプションに、(高知県立歴史民俗資料館蔵)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年10月9日作成
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