破壊

加藤一夫




未来に 黄金世界を 望むのではない
ただ 現在の不合理を、破壊しようとするのだ
私はユートピアンではない
ただ 衝動に聴く男だ

社会制度が 人間の意識を支配するが
そして その故に 今の社会制度を 破壊するが
さりとて 更に善き社会制度を 立てるのが
私の 唯一の そして究極の目的ではない
まず 破壊するのだ すると新しい制度はおのずから生れるだろう

生命は流れる水
制度は 流れゆく水の路―溝 谷 小川 大川
生命は 常にあらたまりゆく
あらたまるごとに 新しい路を拓く

土を流し 小石を押しのけ
岩を砕いて
破壊から 破壊へ
(発表誌不詳 一九八四年五月戦旗復刻版刊行会刊『社会派アンソロジー集成』別巻を底本)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「社会派アンソロジー集成 別巻」戦旗復刻版刊行会
   1984(昭和59)年5月
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年12月12日作成
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