延若礼讃

折口信夫




うらゝかな春の入日、ちり/″\に地面も空もまつ白に、過ぎ行く花の幻影――その中に、かつきりと立つた延若の五右衛門――。私はその頭・背から輝き出る毫光を感じました。「国くづし」の立敵の表現は、歌舞妓の世界に、此が見をさめになつて行く。さう言ふ悲痛な信仰に似たものに、心が潤うて来るのをおさへることが出来ませんでした。





底本:「折口信夫全集 22」中央公論社
   1996(平成8)年12月10日初版発行
底本の親本:「幕間 第五巻第六号」
   1950(昭和25)年6月発行
初出:「幕間 第五巻第六号」
   1950(昭和25)年6月発行
※底本の表題の下に書かれている「昭和二十五年六月「幕間」第五巻第六号」はファイル末の「初出」欄に移しました。
入力:門田裕志
校正:酒井和郎
2021年1月27日作成
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