作品名: | 原爆詩集 |
作品名読み: | げんばくししゅう |
著者名: | 峠 三吉 |
分類: | NDC 911 |
作品について: | この「原爆詩集」が刊行された1950年代は、朝鮮戦争で原爆使用も考慮(トルーマン声明 1950年11月30日)といった世界史的な緊迫した状況、またその危険を予知した世界擁護世界大会委員会によるストックホルムアピールの署名運動を背景とし、「広島市民からも意思表示がなされるべきだ」(日記)との思いで刊行を決意した。 この詩集の多くの作品は、肺葉摘出手術(手術は中止)を受けるために入所した国立広島療養所内の一室で書きあげられた。当時、アメリカ軍はプレスコード(日本に与うる新聞遵則)を指令し、進駐軍への批判、原爆の惨状を訴えることを禁止しており、「有形無形の圧迫を絶えず加えられており、それはますます増大しつつある状態である」(原爆詩集「あとがき」)と記しているような状態の中で書きつがれた。 「原爆詩集」は、当初東京の大手出版社から出される予定で、詩人・壷井繁治が奔走するが、結局「編集会議でもいろいろ議論されたのですが、いますぐはだめだということになりました………そちらで大至急ガリ版ででも出してください」(壷井からの書簡)ということで急遽1951年8月6日に間に合わせるために、孔版(ガリ版)印刷されわずか500部発行された。 その後、青木書店からの依頼を受け、新しく5篇の作品を書き加え青木文庫版「原爆詩集」が1952年6月に発行された。それは、孔版版「原爆詩集」では不十分と感じ、原爆投下の歴史的性格を捉えるための、いわば象徴性・叙情性から脱却しリアリズムの手法をめざす格闘の痕跡のひとつでもあり、原爆の惨禍を再び繰り返してはならないとする怒り、その意味について追求した歴史的詩集となった。 この詩集は今日まで版を重ね、現在も多くの人に愛読されている。一冊の詩集がこんなに長く多くの読者を獲得したということは、日本の詩集出版事情からすれば例をみない稀有なことである。(広島に文学館を! 市民の会・池田正彦) |
文字遣い種別: | 新字新仮名 |
備考: |
分類: | 著者 |
作家名: | 峠 三吉 |
作家名読み: | とうげ さんきち |
ローマ字表記: | Toge, Sankichi |
生年: | 1917-02-19 |
没年: | 1953-03-10 |
人物について: | 峠三吉(一部に戸籍上は「みつよし」との表記があるが、「さんきち」が正しい)は、1917年2月19日、大阪府豊中市に生まれ、広島で育った。子どもの頃から病弱で、文学好きな母親・ステの影響は峠一家に及んだ。広島商業学校卒業後、発病(当時、肺結核と診断された)、入院と療養を繰り返すなかで、その思いを文学に求めるようになった。 戦前は、長姉の影響でキリスト教受洗。短歌、俳句、詩を書き新聞や雑誌にしきりと投稿した。この時期、日本は全面的な戦時体制下にあり、峠三吉も他の日本人と同様、あの侵略戦争を「聖戦」としてそれらを謳歌するいくつかの作品を残している。 1945年(28歳)自宅(爆心地より3キロ)にて被爆。直後、親戚や知人を捜し歩いて見聞した惨状を詳細に記し、その体験が『原爆詩集』の原型となった。 敗戦後、広島青年文化連盟に参画、広島詩人協会の結成、「われらの詩の会」の主宰、新日本文学会への加入、「反戦詩歌集」の発行などの文化・文学活動にとどまらず、丸木位里・俊「原爆の図」展の開催、平和擁護大会の準備、労働争議への参加、被爆者団体の結成などなど、多彩な活動を展開。原爆・戦争、平和と文化、抵抗運動―――まさに戦後・広島の平和・文化運動の旗手として燃焼させていった。 峠三吉は自ら被爆者として苦しみ、詩人としては『原爆詩集』の刊行、子どもたちの詩を集めたアンソロジー『原子雲の下より』の編集、この二冊に短い生涯を凝縮し、その功績の特徴は、激動期のなか反戦・平和・反原爆のたたかいを文学的抵抗の中に内包・具現化していったことにある。それは、象徴的・叙情主義的作風を脱却し、リアリズムを獲得するたたかいであり、社会変革と自己変革を結びつけ劇的変貌をとげる軌跡でもある。 峠三吉は『原爆詩集』をふまえながら、より説得力をもつ作品の方向性をめざし、そのための健康体を獲得するため肺葉摘出手術を決意、手術に向かった。しかし、手術は失敗、1953年3月10日未明手術台の上で死亡した。享年36歳。 参考資料 『原爆詩集』(峠三吉著 青木書店)/『原子雲の下より』(峠三吉・山代巴編 青木書店)/『八月の詩人・峠三吉の詩と生涯』(増岡敏和著 東邦出版)/『峠三吉作品集・上 下』(増岡敏和解説 青木書店)/『にんげんをかえせ 峠三吉全詩集』(且原純夫解説 風土社)/『原爆詩人・峠三吉』(増岡敏和著 新日本出版)など (広島に文学館を! 市民の会・池田正彦) 「峠三吉」 |
底本: | 新編 原爆詩集 |
出版社: | 青木書店 |
初版発行日: | 1995(平成7)年7月7日 |
入力に使用: | 1995(平成7)年7月7日第1版第1刷 |
校正に使用: | 1999(平成11)年7月10日第1版第3刷 |
底本の親本: | 原爆詩集 |
出版社: | 青木書店 |
初版発行日: | 1952(昭和27)年6月 |
入力: | 広島に文学館を! 市民の会 |
入力: | 福田真紀子 |
校正: | LUNA CAT |
ファイル種別 | 圧縮 | ファイル名(リンク) | 文字集合/符号化方式 | サイズ | 初登録日 | 最終更新日 |
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テキストファイル(ルビあり) | zip | 4963_ruby_16044.zip | JIS X 0208/ShiftJIS | 25619 | 2004-07-11 | 2012-03-24 |
XHTMLファイル | なし | 4963_16055.html | JIS X 0208/ShiftJIS | 165868 | 2004-07-11 | 2012-03-24 |
サイト名: | 広島文学館 |
URL: | http://home.hiroshima-u.ac.jp/bngkkn/ |
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