主人もちのろばがありました。もうなが年、こんきよく、おもたい袋をせなかにのせて、粉ひき
しばらくあるくうちに、
「おい、すたこら大将、なにをあっぷ、あっぷいっている。」と、ろばは声をかけました。
「いやはや、きいてくれ、こういうわけだ。」と、犬はいいました。「なにしろ年はとる、いくじがなくなる、おいらもむかしのげんきで
「ところで話だが、おいら、これからブレーメンの町へ出かけて、町の楽隊にやとってもらおうとおもうんだ、どうだ、おめえ、いっしょに行って、いちばん、音楽でめしをくう気はないか。おいらリュウトをひくから、おめえ、カンカラ
りょう犬は、うん、よかろうというので、いっしょに出かけました。
それからあまり行かないうちに、ねこが一ぴき、往来にすわりこんだまま、それこそ三日も雨をくったような顔をしていました。
「やあ、どうしたい、
「いのちとかえがけというところだ。けいきのいい顔をしてもいられまい。なにしろ年をとって来てね、歯はばくばくになる、ねずみのやつをおいまわすよりか、ろばたで
「おれたちとなかまで、ブレーメンの町へ行けよ。おまえさんは、夜の音楽ならお手のものだろう、町の楽隊につかってもらえるぜ。」と、ろばはいいました。
ねこは、さっそくさんせいして、いっしょに出かけました。
やがて、三人組の
「おい、骨のしんまで、じいんとくるような声を出すなあ。どうかしたのかい。」
と、ろばはいいました。
「なあに、あしたはいいお天気ですよって、知らせてやっているところだよ。」と、おんどりはいいました。
「なにしろ、けっこうなお
「やれやれ、なんということだい、赤ずきん、おれたちといっしょに行くがいいよ。ブレーメンの町へ出かけるところだ。ころされて死ぬくらいなら、すこしは気のきいた所が、どこへ行ったってあろうじゃないか。おめえはいい声しているから、なかまになって音楽をながしてあるけ、いっぱしかせげるぞ。」と、ろばはいいました。
この申し出は、しごくおんどりの気に入りました。そこで、こんどは四人つれだって出かけることになりました。
二
ところで、ブレーメンまでは、なかなか一日では行けません。そのうち日がくれたので、森の中へはいって、そこでひとばんあかすことにしました。
まず、ろばと犬とは、一本の木の下にごろりと横になりました。ねことおんどりとは、木の枝の上にやすみました。ところで、おんどりはわざわざこずえの先まで行ってとまりましたが、これが、いちばんの安全な場所であったのです。さてねようとするまえ、このおんどりはもういちど、東西南北、風のふく方角がどこかとながめまわしたとき、ふと、むこうに、ちらちら火らしいものがみえたので、なかまに声をかけて、どうしても、そうとおくないところに家があって、あかりがついているらしいといってしらせました。
ろばが、そこで、
「じゃあおれたち、ここをひきはらって、もっと先まで行ってみようや。どうもこの宿は
こういうしだいで、四人組は、そのあかりのさしている
ろばは、なかまでいちばんのせいたかのっぽなので、窓のところまで行って、中をのぞいてみました。
「親方、なにかあったかね。」と、おんどりはたずねました。
「どうして、あったかどころのさわぎじゃないぞ。」と、ろばはこたえました。「ちゃんとテーブルごしらえがしてあって、けっこうなごちそうと、のみものが、山とならんでいるよ。どろぼうども、てんでに、はちきれそうな顔で、よろしくやってるところさ。」
「そいつをものにしようじゃないか。」と、おんどりはいいました。
「うん、うん、どうしたってわりこまなきゃあな。」と、ろばはいいました。
そこで、まず、どろぼうどもを追っぱらうには、どうすればいいかと、四人組の動物は、
ろばは、前足を窓にのせることになりました。犬は、ろばのせなかにとびあがることにしました。ねこは犬のせなかによじのぼることにしました。おしまいに、おんどりが、ばさばさととびあがって、ねこの頭の上にのっかりました。いよいよしたくができあがると、一、二、三のあいずで、四にん組はいっせいに、音楽をやりだしました。ろばはひひんとわめきました。犬はわんわんほえたてました。ねこはにゃおんとなきました。おんどりはこけこっこうと、ときをつくりました。とたんに、まどをつきやぶって、
どろぼうどもは、びっくりぎょうてん、きゃあとさけび声をあげてとびあがりました。たいへんな
そこで、四人組は、ゆうゆうテーブルにつきました。ごちそうは、のこりものでも、がまんすることにして、それでも、これからあと四週間ぐらい
三
さて、四人組の楽隊なかまは、おなかができると、あかりをけして、めいめいのうまれつきとすきずきにまかせて、いいぐあいの
真夜中をすぎたときに、どろぼうどもが、とおくからみますと、うちの中にはあかりがともっていず、中はひっそりかんと、しずまりかえっているようでした。
「どうもおれたち、おどかされて、にげだしたといわれちゃあ、がまんできないぞ。」
おかしらはこういって、ひとり
さて、いいつかった手下がはいってみると、家の中はどこもひっそりしていました。そこであかりをつけてみようとおもって、台所へ行きました。すると、やみに光っているねこの目だまを
いやはや、おどろいたのなんの、手下のどろぼうは、したたかにやられて、びっくり、はいもう、うらの戸口から逃げだそうとしますと、そこにねていた犬が、とびあがって、むこうずねにかみつきました。そこで、庭へかけだして、つみごえのそばをかけぬけようとしますと、ろばがあと足でしたたかに、けとばしました。すると、このさわぎで目をさまさせられためんどりが、はりの上から、はしゃぎきって、ひと声、キケリッキー、とどなりました。
どろぼうは、いのちからがら、足にまかせてにげだして、おかしらの所へかえりました。そうしてこういいました。
「どうもはや、たいへん、あの家には、すごい
それからは、どろぼうどもも、こりて、二どとふたたび、この家にはいろうとはしませんでした。ところで、ブレーメンの楽隊なかま四人組も、ひどく、ここが気に入ったので、それなりもうよそへ出て行こうとはしませんでした。
さて、これまで申したことは、ついこないだ、それこそ