〈あかい、やさしい はなもやうが〉
村山籌子
あかい、
やさしい はなもやうが、
とびとびに ついた
きものをきて、
あをい やはらかい
おびを しめた、
しづかな、おとなしい
をんなのこどもが、
そろり、
そろりと、
いつぱい とほる。
いつぱい とほる。
ほんとに わたしは
らんばうもの
おさらは こはすし
インクは こぼすし
時計は ころがすし
おはしは をるし
ばた/\ あるくし
むしは ころすし、
わたしは
せかいのらんばうもの。
わたしのふくが赤かつたら、
わたしのおびが青かつたら、
わたしは もうすこし
おとなしいのに。
らんばうもの。
おかあさまもおつしやつた。
おにいさまもおつしやつた。
そして、
お前は
いゝ子だとは、
けつして、けつして
おつしやらない。
もしも わたしが
おとなしい
女のこどもにうまれたら、
わたしは どんなに
うれしいかしら。
そして、わたしは
ほんとに、ほんとに
やさしさうに笑ひながら
おてんとさままで、
あるいてゆかう。
そろり、
そろりと、
あるいてゆかう。
●表記について
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