一匹の子
子熊はふところから、はちみつを入れたつぼをとりだして、ゆびでしやくつて、ちび/\なめはじめました。
「いつたべても、うまいのははちみつだ。はちみつにかぎる。あまくつて、おいしくつて。」とひとりごとを言ひながら、せつせとなめてをりました。
すると、そこへ、一匹のみつばちが、ブーンととんで来て、子熊の帽子のまはりを、ぐるぐるまひながら、言ひました。
「子熊さん。
「何がはらがたつんだ。僕はなんにも、君にわるいことなんかしたおぼえはないよ。」と、子熊は、やつぱり、みつをたべながらこたへました。すると、みつばちは、
「だつて、君、かんがへてみたまへ。君は、僕たちが、長い間、くらうをしてためたみつを、それこそ、べろ/\と、見てゐるうちになめちまうんだもの。これくらゐ、はらのたつことはないよ。」と、羽をふるはせて言ひました。
子熊は、かう言はれて見ると、何だかはちに、気の毒なやうな気持になりました。そこで、
「はちくん。そんなにおこらないでくれ。そのかはりに、僕は、君をいゝところへつれてつてあげよう。」といつて、子熊ははちを、花の一杯さいてゐる、