芝の芽

土田耕平




芝の芽の萌えるころは
ふるさとの丘を思ひだす
ゆるやかにふわふわと雲の浮かんだ
あの丘山を
犬ころが走り
凧があがり
ぼくらは寝そべつてゐたつけが
「どこへ行かうかな」
「大きくなつたら」
「海へ――空へ――遠いところへ――」
誰やかれやみんな叫びあつた――
芝の芽の萌えるころは
ふるさとの丘を思ひだす
ゆるやかにふわふわと雲の浮んだ
あの丘山を
ああ誰もかれも
みんな大きくなつただらうな





底本:「日本児童文学大系 第九巻」ほるぷ出版
   1977(昭和52)年11月20日初刷発行
底本の親本:「土田耕平遺稿第二巻」古今書院
   1942(昭和17)年8月
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2010年12月9日作成
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