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一月四日 ホトトギス、玉藻、花鳥堂社員来。
羽子つこか
二月一日 まり千代、小くに、五郎丸、小時 、実花来。
白梅の光り満ちたる庵かな
二月二十六日 句謡会。草庵。
三月二日 明女、久子等静岡勢来る。
三月十三日 泊月句集序句。
三月十六日 偶成。
三月十九日 土筆会。草庵。
ゆらぎ見ゆ百の椿が三百に
三月二十一日 鎌倉玉藻会。英勝寺。
いぬふぐり空を仰げば雲も無し
三月二十六日 大崎会。英勝寺。
落椿土に達するとき赤し
三月三十日 東京多摩会。英勝寺。
ふと春の宵なりけりと思ふ時
四月四日 全国医師大会俳句会。向島、大倉。
花の
四月八日 葉山、嵯峨邸。
庭に下り話しつゞける蝶は飛ぶ
四月九日 大崎会。英勝寺。
諸事は
四月十一日 即事。
落花土に
この牡丹
四月十三日 句謡会。草庵。
牡丹に所思あり稿を起さんと
四月二十五日 草樹会。大仏殿。
五月七日 大崎会。英勝寺。
新緑の
五月二十日 草間新市長祝賀俳句会。
不思議やな神鳴るなべに
五月二十三日 草樹会。大仏殿。
五月三十一日 句謡会。笹目、立子俳小屋開きを兼ね。
手を
六月二日 日本銀行大仏句会。大仏殿。
鉄線の
六月十日 鎌倉玉藻会。寿福寺。
六月二十日 土筆会。草庵。
六月二十二日 米和歌 にあり。
くちなしを
六月二十五日 九羊会。茅舎を偲 ぶ会。立子俳小屋。
六月二十八日 句謡会。立子俳小屋。
鉄線の花は豪雨に堪へゐしか
七月三日 即事。
七月七日 艶寿会。
ひろ/″\と富士の
七月二十七日 昨日より山中湖畔下 り山 、山廬 滞在。稽古会。
山荘もこぼたずありし来れば涼し
うつし世の老いし柳に心とめ
山風に吹きさらされて昼寝かな
七月二十八日 山中湖畔下り山、山廬滞在。稽古会。
避暑の宿
七月二十九日 新蕎麦会有志合同、稽古会。
朝寝して今朝が最も幸福な
七月三十日 句謡会。
山の避暑かはりがはりの泊り客
七月三十一日 句謡会。
避暑の宿迎への車
八月二日 午後二時五十分出発。自動車にて帰鎌。八時著。
まだ書かぬ
八月七日 七夕竹を立つ。子孫集る。
朝顔の雨や書屋を
八月二十二日 土筆会。草庵。
八月二十四日 大崎会。英勝寺。
涼しく
八月二十九日 草樹会。大仏殿。
涼しくも生きながらへて
九月十三日 午前九時横浜乗車西下。年尾、立子、泰、憲二郎と共に。食堂車給仕 田中嬢に贈る。先年大負傷をせし由。
月を思ひ人を思ひて須磨にあり
九月十四日 須磨、保養院の跡を訪ひ、須磨寺小集。
子規忌へと無月の海をわたりけり
九月十五日 年尾居にあり。年尾、立子、泰、憲二郎とこがね丸に乗船。
旅といへど
月を待つ
九月十七日 波止浜に行く。観潮閣泊り。
秋の蚊や竹の御茶屋の跡はこゝ
ふるさとの此松
九月二十一日 東野を通る。
思ひ出となるべき秋の一夜かな
九月二十二日 伊丹 、あけび亭。坤者招宴。一泊。
秋風の伊丹古町今通る
九月二十三日 鬼貫 の墓に参る。
虫の音に浮き沈みする庵かな
九月三十日 艶寿会。
柿取るにまかせ
十月二日 句謡会。草庵。
千鳥飛べば我あるものと思ふべし
十月十九日 日御岬 燈台、内田稲人に送る。
今はある虹の
十月十九日 石川言成子追悼句帳に。
十月二十五日 鉄線花会招宴。木挽町田中家。岩井半四郎来。「蘭情春酒鬱金香の句あり」
見るうちに多くなりけり菊の
十月三十一日 七宝会。
草庵を菊の
十一月二日 句謡会。草庵。
十一月五日 土筆会。草庵。
十一月十九日 偶成。
十一月二十八日 鎌倉玉藻会。長谷、光則寺。
この冬を
十一月二十九日 大阪くるみ会員来る。第二回、立子俳小屋。
文筆の女
同日 第三回、葉山、嵯峨居。
古き
忘れゐし事にうろたへ冬籠
十二月一日 句謡会。草庵。
十二月五日 土筆会。草庵。
十二月十二日 大崎会。英勝寺。
無駄な日と思ふ日もあり冬籠
十二月二十五日
冬枯の庭を
十二月三十日 七宝会、いぬゐ、すゝむ、丶石 来。
十二月三十一日
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ほろび行くものの姿や松の内
一月五日 句謡会。草庵。
一月十五日 彦影 を悼 む。
半四郎
一月二十一日 添田 紫水招宴。
暖き冬日あり甘き空気あり
一月三十日 偶成。
春寒きわが誕生日合ッ点じや
二月二十二日 句謡会。草庵。わが誕生日。
春寒のいつまでつゞく憤り
二月二十七日 上海すみれ会。立子俳小屋。
三月三日 土筆会。草庵。
花の旅いつもの如く連れ立ちて
三月三日 はん女、亡き父母の比翼塚に彫 まんとて句を乞へるに。
永き日のわれ等が為の
三月九日 大麻唯男、亡き娘栄子の為め長谷観音境内に観音像を建立し、その台石に彫む句を徴されて。
現れし
三月十五日 『玉藻』二百五十号祝。
三月二十三日 『玉藻』二百五十号記念吟行会。東慶寺。
吉右衛門
足すこし悪しと聞けど花の陣
三月二十三日 歌舞伎座番附に句を望まれて。
三月三十日 水竹居十年忌俳句会。駒沢、旧水竹居庵。
花の
四月二日 草樹会。大仏殿。
牡丹のみ偏愛するといふ
四月三日 牡丹五句のうち。
こゝに又縁ある仏
四月七日 大崎会。英勝寺。
松蔭に咲き
四月九日 物芽会。光則寺。
落花散り敷けるまに/\客歩く
四月十三日 東京富ヶ谷、初波奈。田坂定孝、憲二郎、すゝむ、東子房、小蔦、波奈子。
我庭の牡丹の花の盛衰記
五月八日 即事。
ひしひしと
五月二十日 近江、堅田、余花朗邸。
父母も今遊楽や
五月二十一日 比叡山上法要、続いて俳句会。
目立たざる

美人手を貸せばひかれて老涼し
五月二十三日 同人会。京都、枳殻 邸。
五月二十三日 室町中立売 下ル、藤井邸。小会。
人の世の今日は高野の牡丹見る
五月二十五日 金剛峯寺。
若死の六十二とや春惜む
五月二十六日 奥の院。
五月二十六日 坤者招宴。宗右衛門町、大和家。
短夜を旅の終りの朝寝かな
五月二十七日 茶臼山 、坂口楼泊。
旅帰り
五月三十一日 句謡会。草庵。
六月五日 艶寿会。
六月八日 波多野爽波 、葭人、郊三、敬雄の兄弟四人来る。立子、宵子、嵯峨、虚子。
何事も
見る人は
古浴衣
六月三十日 晦日会。
金魚玉
七月一日 艶寿会。
古道に出たり左右の夏木立
七月五日 鹿野山神野寺。
このまとゐ楽しきかなや蚊を追ひて
七月二十四日 修善寺、新井屋。立子、波奈子と共に。
老いてこゝに
七月二十五日 富士吉田。
湖の今
七月二十七日 稽古会。第二回、午前。
加ふるに寝冷えをしたる
同日 第三回、午後。
避暑に来て一と日帰農の友を
七月二十九日 河口湖畔に中村星湖 を訪ふ。
七月三十日 句謡会。第一回。
草の戸に居ながらにして月を待つ
九月三日 草樹会。越央子祝賀会を兼ねて。鎌倉、華正楼。
九月十四日 十五人会。箱根仙石原 、浜野別荘。
吉野屋の愛子踊りし部屋ぞこれ
九月二十八日 俳句大会。河鹿 荘。
苔寺を出てその辺の秋の暮
古都の空紫にして月白し
十月一日 三国より京都へ、柊屋に泊る。苔寺に遊ぶ。
飲酒戒破れば月は曇るべし
十月四日 夜、波奈子招宴。月見。初波奈。
十月二十一日 鎌倉玉藻会。英勝寺。
十月二十六日 大仏句会。大仏殿。
十一月五日 西下車中。艶寿会出句。
通天の紅葉といふを折りて来し
十一月六日 芦屋、年尾居即事。井上和子来る。
秋晴や古里近く母を恋ひ
十一月七日 別府行航路。
人顔は
十一月九日 高崎山万寿寺別院。句謡会。
十一月十日 小国を突破して阿蘇外輪山に至る。
かけて見せ
十一月十二日 昨夜も亦 耕春居泊り。
草枯の礎石百官
十一月十五日 福岡、田中紫紅邸に在る坊城 一家訪問、都府楼趾 に至る。
草枯に真赤な
十一月十七日 宝塚会館。昨夜芦屋、年尾居泊り。
十一月十九日 昨日帰鎌。即事。
贈り来し写真見てをる
十一月二十四日 土筆会。草庵。
世に四五歩常に遅れて老の春
十一月二十五日 「老の春」其他の句を作る。
元日の門を
十一月二十七日 前日のつゞき。
とはいへど涙もろしや老の春
十一月二十九日 「老の春」の句を作る。
わが
十一月三十日 草樹会。大仏殿。
起き出でゝあら何ともな老の春
十二月一日 「老の春」の句を作る。
十二月二日 前日のつゞき。
十二月七日 十五人会。和光。
十二月十日 「老の春」の句を作る。
炭斗のありし所になかりけり
十二月十二日 大崎会。英勝寺。
何事も知らずと答へ老の春
十二月二十四日 前日のつゞき。「老の春」の句を作る。
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雨晴れて枯木潤ふけしきかな
一月六日
悪なれば色悪よけれ老の春
一月七日 悪の利 く人利かぬ人などと杞陽の申し来れるに。
一月十一日 ホトトギス、玉藻、花鳥堂社員来。
二月二日 伊予西条在飯岡村秋都庵にある我が外祖父母の墓畔に句碑を建てると、山岡酔花の切望せるに応 へて句を送る。外祖父山川市蔵は若くして浪人し松山藩外に在りて寺小屋などをし生涯を此町に終りたりと聞く。
春
二月十七日 横井迦南 追悼。
二月十八日 句謡会。草庵。
青き色地に点じたる
二月二十五日 上海すみれ会。和光。
降つてゐるその春雨を感じをり
三月七日 艶寿会。第十五回。
三月十六日 大崎会。英勝寺。
三月十八日 土筆会。草庵。
行き違ひありて混雑花の宿
四月十三日 句謡会。草庵。
一人花にさまよひ居しが
四月十五日 草樹会。大仏殿。
春風の伊予の湯の句のあるが故に
四月二十二日 極堂米寿賀。
君と共に再び須磨の涼にあらん
四月二十二日 子規、虚子並記の句碑、須磨に建つ由。
この旅のいづこの宿に
五月四日 別府連中来。草庵。
惜春の心もありて人を
五月五日 別府連中のうち良聞、方子、幹子、花子来。すゝむも来。草庵。
夏山の黒きところは落込める
五月十三日 大崎会。英勝寺。
朝顔の二葉より又はじまりし
五月二十日 土筆会。草庵。
気にかゝる事もなければ
六月七日 草樹会。大仏殿。
梅雨やむも降るも
六月八日 大野万木 句碑、長谷観音境内に建ちたるに招かれて。
鉄線にけふは
六月十五日 観世 、宝生 玄人 連聯合 句謡会。草庵。
七月九日 十五人会。大仏殿。
七月十一日 大仏句会。大仏殿。
避暑に行く心づもりも書き添へぬ
七月十二日 ホトトギス同人会。東京木挽町、田中家。
ほとゝぎすしば
避暑に来て保養といふも仕事かな
避暑の宿
ほとゝぎすかならず来鳴く午後三時
避暑宿に来ても変らぬ
二つある
避暑の宿
長梅雨の明けて大きな月ありぬ
午前九時始まる避暑の日課かな
昼寝して覚めて
七月二十一日より二十七日迄 富士山麓山中山廬に在り。句謡会、草樹会、新蕎麦会、稽古会等。
冷やかや返事が来ねばそれまでと
冷やかにその行末を見守りぬ
九月五日 艶寿会。
秋晴の
九月六日 草樹会。大仏殿。
その月を見たりしといふ誇りあり
九月七日 九代目市川団十郎五十年祭の句を三升 より徴されて。
こゝに我が句を
九月十六日 長瀞 の河心より採取せし句碑の石の写真を見て。
けふの月よからんと
九月二十二日 句謡会。草庵。
何もせで一日ありぬ
九月二十三日 鎌倉玉藻会。英勝寺。
俳諧の月の
九月二十三日 去来二百五十年祭典祝句。
人会しすぐ散らばつて秋の晴
十月四日 草樹会。大仏殿。
川音の高まり長き夜はくだち
十月七日 山中俳句会。鹿野尚生の寺、薬師寺にて。
稲の道車を駆りて故人
十月七日 非無和尚を明達寺に見舞ふ。立子、柏翠夫妻と共に。
人の世の虹物語うすれつゝ
十月八日 三国虹屋にて。柏翠新婚披露。永諦の寺にて句会。
湖中句碑
十月十日 昨夜堅田、余花朗居に泊る。真砂子も来り加はる。湖中句碑を見る。
炉の
十月十日 叡山横川政所 に泊る。
わが墓に
十月十一日 虚子塔前にて座主 以下逆修 石塔開眼式あり。年尾、汀子、初也も来り加はる。其他多数参列。
十月十一日 元三大師堂俳句会。
この
十月十二日 昨夜東塔大書院泊り。福吉執事の謀。
十月十三日 素十僑居 。
目の前にひら/\するは
十月十三日 観覚寺俳句会。
一筋の大きな道や秋の風
十月十六日 野口兼資 死す。
わが
十月十八日 鎌倉玉藻会。寿福寺。
遠ざかりをる人
十月二十八日 土筆会。草庵。
俳諧の月の奉行や今も
十月三十日 長崎に於ける去来二百五十年祭。
十月三十日 犬山の丈草二百五十年祭。
十月三十日 新聞雑誌の要求に依 り新年の句を作る。
脱落し去り脱落し去り明の春
十一月一日 草樹会、病気のため休む。新聞雑誌等の依嘱に依り新年の句を作る。
白菊に幾つ
十一月一日 根本東雲といふ古き俳人の未亡人、八十余歳にて中風 臥床 とのこと、その娘の小藤田綾子なる人より通知あり。
やゝ酔ひし
十一月八日 新聞雑誌社より新年の句を徴されて。
争はぬことはよろしや
十一月十二日 新聞雑誌社より新年の句を徴されて。
昔より月の

十一月二十八日 中西桂子新婚。
縁に腰そのまゝ
十二月十三日 鎌倉玉藻会。英勝寺。
我が仕事
十二月十九日 句謡会。草庵。
書き留めて
歩み去る年を追ふかに庭散歩
十二月二十九日 草樹会。和光。
眠れねばいろ/\の
十二月三十日 句謡会。和光。
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一月二十日 高崎雨城を弔ふ。
この雪に
一月二十一日 上海すみれ会。和光。
名にし負ふ木曾の
二月一日 丸山ダムの句を徴されて。
祖母立子声
二月二日 立子孫、高 。
二月二十八日
年老いし
花の数倍にも見えて風椿
三月七日 草樹会。光則寺。
ほむらとも我心とも牡丹の芽
三月八日 物芽会。光則寺。
窓外に椿ある故
三月十日 土筆会。草庵。
日の当る
三月十七日 大崎会。英勝寺。
足もとに春の寒さの残りをり
犬の舌赤く伸びたり水
三月二十二日 句謡会。草庵。
谷の寺元黒谷の
三月二十四日 比叡山横川 行。
三月二十五日 叡山東塔大書院。
山吹の七重八重さへ淋しさよ
三月二十八日 枴童 七周忌。
光なく昼
三月三十日 即事。
山隈に咲き出でたりし花の雲
四月四日 草樹会。越央子、風生、漾人 、古稀祝賀を兼ね。和光。
一片の落花峰より
四月九日 艶寿会。第二十一回。
四月十日 大仏句会。大仏殿。
四月十一日 土筆会。真下居。
春深く稿を起さん心あり
四月十六日 句謡会。高木居。
目黒なる
四月二十七日 艶寿会。第二十二回。
影涼し皆
庭木皆よき形なる若葉かな
五月十日 物芽会。光則寺。
せゝらぎの水音響く
五月十三日 長瀞行。この夜一泊。「月の石」の句碑除幕。
いつの間に庭木茂りて
天暗くなりて明るき
六月六日 草樹会。大仏殿。
よき鉢によき金魚飼ひ書を読めり
六月七日 大崎会。英勝寺。
ダムに鳴く鳥は
六月九日 木曾川に丸山ダムを見、長駆して長良川に鵜飼 を見る。公子名古屋より来り会す。
翌朝は雨降つてゐる鵜川かな
六月十日 名古屋宇佐美居に向ふ。少憩の後、覚王山墓地に、防子の墓に参る。ホテルに一泊。諸子来る。
旅帰り再びもとの
六月十三日 土筆会。草庵。
六月十六日 即事。
七月一日 埼玉県北足立 郡野田村原沢八郎の招請を断る。
山寺に
山寺に我老僧かほとゝぎす
七月十四日 千葉県鹿野山神野寺。土筆会第一回。
一匹の蠅一本の蠅叩
蠅叩に即し彼一句我一句
七月十五日 土筆会第二回。句謡会第一回。
山寺に仏も我も
昼寝せんかと思ひつゝ山を見る
七月十六日 句謡会第二回。草樹会第一回。
避暑に来て短か羽織を仮りに
七月十七日 草樹会第二回。稽古会第一回。
蠅叩とり彼一打我一打
夏草も一景をなす坊の庭
七月十八日 稽古会第二回第三回。
毒虫を必死になりて
山寺に
すぐ来いといふ子規の夢明易き
蠅叩にはじまり蠅叩に終る
七月十九日 稽古会第四回。下山。
怪談の昨日のつゞき涼み台
七月二十三日 艶寿会。
八月二十五日 お鯉観音の句碑。
山の名を思ひ出しつゝ花野ゆく
炎天に消ゆる雲あり
八月二十九日 昨夜軽井沢遊 ふぎ利 泊り。小諸行、自動車。
旅にして秋風君の
八月三十日 非無和尚逝去。
霧襲ひ来て
八月三十日 三笠宮東道花野行。
九月五日 草樹会。大仏殿。
たとふれば真萩の露のそれなりし
九月五日 吉右衛門急逝。
子規逝きし月なり又も訃を伝ふ
九月七日 鯨波逝く。
人を恐れ
九月九日 艶寿会。第二十四回。
人生の
九月十二日 鎌倉玉藻会。
九月二十日 大崎会。英勝寺。
この萩のやさしやいつも立ちどまる
十月三日 庭前散歩。
追慕する人々も皆
十月七日 当年の常磐会寄宿舎舎生でありし人々、鳴雪墓前に「一系の天子」の句碑を建てる由、相原熊太郎より申し来りければ。
たぐひなき菊の契りとことほぎぬ
十月七日 草之、叡子結婚祝。
十月七日 椿子句会もこれにて終りにすると、香葎 の手紙にありければ。
白萩の露のあはれを見守りぬ
十月十三日 物芽会。笹目、大麻邸。
コスモスの花あそびをる
十月二十一日 鎌倉玉藻会。寿福寺。
秋の暮たゞ何事も言ふまじく
祝はるゝことも淋しや老の秋
十月二十五日 偶感。
参りたる墓は黙して語らざる
十月二十五日 子規の墓に参る。
我のみの菊日和とはゆめ思はじ
菊の日も暮れ方になり疲れけり
十一月三日 宮中参内。文化勲章拝受。
快き秋の日和の
十一月七日 草樹会。大仏殿。
十一月十七日 艶寿会。
十一月二十日 諸方より頼まれたる新年句等。
十一月二十八日 祝賀同人会。東京富ヶ谷、初波奈、大風雨。主婦に贈る。
十一月三十日 七宝会。祝賀。華正楼。
数の子に老の
十二月十四日 物芽会。和光。
地球一万余回転冬日にこ/\
十二月十六日 播水、八重子結婚三十周年祝句。
寒むければ防空
十二月二十一日 句謡会忘年会。華正楼。
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一月一日
眠れねば足の先き冷えまさりつゝ
一月二日
一月七日
春の空人仰ぎゐる我も見る
春の空人仰ぎゐる何も無し
二月二十二日 句謡会。高木宅。
風椿立ち直りつゝ花落とす
三月十三日 草樹会。大仏殿。
落椿土に帰せんとしつゝあり
三月二十五日 土筆会。草庵。
この桜
三月二十九日 大崎会。英勝寺。
四月一日 『ホトトギス』七百号回顧。
鎌倉の古き土より牡丹の芽
四月四日 句謡会。段葛 前、鈴木屋。
かへりみて一木の花を仰ぐ老
四月九日 鎌倉玉藻会。光則寺。
四月十日 草樹会。大仏殿。
四月十三日 即事。
庭広しよりどころなく蝶の飛ぶ
四月二十二日 物芽会。和光。
五月三日 『ホトトギス』七百号。
豆飯に何はなくとも
五月七日 大崎会。英勝寺。
よき
五月十日 物芽会。大町、相沢綾女邸。
鉄線を咲かせて
五月十一日 土筆会。草庵。
五月十四日 飛行機、板付著 。福岡県二日市、玉泉閣。
五月十五日 松濤園(お花、立花邸)。
五月十六日 熊本、江津荘。芭蕉林。
山さけてくだけ飛び散り島若葉
五月十七日 三角 港より有明 湾を渡る。島原泊り。
ゴルフ場に下り立てば
五月十八日 夏目義明東道にて雲仙 を越え、長崎、桃太郎泊り。
五月十九日 日見峠に去来の芒塚を見、井上米一郎に寄す。
美しき故不仕合せよき
五月二十日
風薫る
五月二十二日 甘木市、丸山公園。
五月二十二日 原鶴温泉、小野屋泊り。
五月二十三日 池田に病草城を訪ふ。この夜芦屋泊り。
中堂を焼きたる雷と思ひつゝ
五月二十五日 坂本滋賀院。祖先祭。雷鳴。
六月七日 大崎会。英勝寺。
大岩に根を下したる夏木かな
六月九日 龍子古稀。
梅雨暗し
六月二十一日 土筆会。草庵。
油虫聖賢の書に対すのみ
六月二十四日 鎌倉玉藻会。英勝寺。
六月二十八日 偶成。
七月一日 新潟行。
われ老いぬ人も老いぬと明易き
七月三日 かき正、句謡会。
七月四日 午後帰鎌。
七月二十二日 即事。
蠅叩われを待ちをる避暑の宿
七月二十六日 鹿野山、神野寺に行く。地元句会。上海すみれ会。
山寺に避暑の命を托しけり
大昼寝して次の間の話声
七月二十七日 上海すみれ会。土筆会。
一切を
七月二十八日 土筆会。句謡会。
軒近く来鳴く
先住と我の写真や避暑の寺
七月二十九日 句謡会。草樹会。
力無きあくび連発日の盛り
山寺の夜の秋なる
夏の蝶日かげ日なたと飛びにけり
人の世の悲し/\と
髪洗ふ女百態その一つ
七月三十日 草樹会。稽古会。
我を見て舌を出したる
七月三十一日 稽古会。
八月二十二日
流れ星はるかに遠き空のこと
流れ星ホトトギス
大空の青
九月九日 物芽会。大麻邸。
星一つ命燃えつゝ流れけり
九月十一日 草樹会。大仏殿。
高きに登る
九月二十二日 句謡会。明治寮。
秋風にいつまで浴衣著る女
九月二十三日 土筆会。草庵。
颱風の名残に曇る今日の月
十月二日 即事。
十月九日 草樹会。大仏殿。
鉄線の葉の
十月二十三日 土筆会。草庵。
こゝも
十一月五日 帰省の帰路京に立寄る。洛北に遊ぶ。
十一月十二日 大仏句会。
冬晴の虚子我ありと思ふのみ
十一月十三日 草樹会。大仏殿。
冬山に隠れ住むともいふべかり
十一月十六日 大崎会。英勝寺。
乱雑の中に秩序や
十一月十九日 即事。
元日や炬燵の間にも客
十一月二十一日 句謡会。
しぐれつゝ
十一月二十六日 偶成。
去年今年一時か半か一つ打つ
十二月七日 大崎会。英勝寺。
障子閉ざし老僧病むと聞く
十二月九日 物芽会。光則寺。
冬枯にわれは
いのち
元日や句は
十二月十一日 草樹会。浅羽屋。
元日や深く心に思ふこと
十二月二十三日 土筆会。草庵。
三汀の墓は質素や水仙花
十二月三十日 晦日会。瑞泉寺。
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例の如く
一月二日
一月四日
君謡へ
一月八日 灘万女将死す。
老の春写真をくれと人いふも
一月十日
この寒さ身を引締めてつとめけり
一月二十九日
わが
二月二十八日
考へを文字に移して梅の花
三月四日 銀行協会俳句会。瑞泉寺。
春の山
三月十二日 草樹会。大仏殿。
三月十五日 十五人会。浄明寺、上野邸。
この池の
三月十八日 土筆会。真下宅。
かち/\と目刺の骨を
三月二十三日 物芽会。英勝寺。
春山を
三月二十五日 京都。柊屋。
四月一日 三菱俳句会。鎌倉本覚寺。
雨ながら今此の時の花盛り
四月八日 草樹会。岡本武美邸。
世に生きて青葉隠れの
四月十五日 『玉藻』三百号祝賀会出句。
木々の芽や寺復興の尼悲願
春の天おほどかにしてやゝ曇る
四月二十日 大崎会。英勝寺。
真つ赤なる障子の隙の庭椿
四月二十二日 土筆会。草庵。
山の背をころげ廻りぬ春の
四月二十五日 句謡会。瑞泉寺。
花に
五月六日 立子印度 の旅に赴 く。
五月十三日 草樹会。大仏殿。
五月十三日 松本たかし死す。(五月十一日)
つゝじ散り
五月二十日 土筆会。草庵。
彼一語我一語新茶
新茶よし
五月三十日 句謡会。対僊閣。
人々よ昼寐のわれを起すなよ
六月三日 土筆会。草庵。
山やうやく
六月四日 羽黒行。
六月五日・六日
夏山の
白糸の滝も
六月五日・六日 猿羽根峠。
俳諧を守りの神の涼しさよ
六月五日・六日 駕籠 にて羽黒に登る。
何事も神にまかせて
大杉の
六月五日・六日 別に祈願といふものなし。
六月十日 草樹会。大仏殿。
石に
六月十五日 大崎会。英勝寺。
田を植うる妙義の
六月十七日 小諸に行く。小山氏句碑除幕。
子を
寺の門はひらんとして風涼し
俳諧の大緑蔭やおのづから
六月十九日 物芽会。英勝寺。
わが家も住みよかりけり
六月三十日 晦日会。華正楼。
青簾世に隠れんとには
七月一日 銀行協会。光明寺。
蠅叩手に持ち我に大志なし
七月十五日 稽古会、第一回。鹿野山神野寺。
山寺や少々重き夏
七月十六日 同、第二回。
大いなる
同日 同、第三回。
用ゐねば
浴衣著て浴衣の句でも作らばや
七月十七日 同、第四回。
ほとゝぎす鳴くや仕合せ不仕合せ
同日 土筆会、第一回。
重き
七月十八日 同、第二回。
ブラジルの人あれ聞けやほとゝぎす
同日 大崎会。
蜘蛛網を張るが如くに我もあるか
七月十九日 地元句会。
昼寐覚めけふも一日平凡に
同日 もの芽会。
並び立つ松の蕊あり雲の峰
涼しさや
七月二十七日 句謡会、第一回。山中湖畔、山廬。
夜の富士心にねむる避暑の荘
七月二十八日 同、第二回。
山の日に
諸君去り諸君
同日 草樹会、第一回。
談笑常の如くなるべしほとゝぎす
避暑に来て親子きやうだい親しさよ
七月二十九日 同、第二回。
我老いて老柳
風雪にいたみし山の荘に避暑
人々の
七月三十日 上海すみれ会、第二回。
寿を守る
心足り
同日 地元句会。
粗末なる
八月二日
手を握り富士の花野に別れけるが
八月十日 鼠骨 三周忌。佐藤肋骨 、その山荘に我等両人を招きたることありし。
よろめきて杖つき萩の花を見る
八月二十八日 草笛会。英勝寺。
暑かりし日を思ひつゝ残暑かな
九月二日 草樹会。大仏殿。
この庭の萩の乱れといふことを
あるものを
九月十六日 土筆会。草庵。
大樹あり
九月二十八日 物芽会。英勝寺。
十月四日 金沢、高木を訪ふ。松風閣にて句会。「河北潟」一見。前日金沢大学にて暁烏文庫を一見せり。
旅の
十月六日 比叡山滋賀院。祖先祭。
秋風や
十月七日 関西稽古会、第一回。近江 堅田祥瑞寺。途に走井 月心寺に立寄る。
門外は
十月八日 京都北山、円通寺、句碑除幕式。
横雲の夕焼をして一二片
十月九日 帰京。天竜川の畔にて。
秋晴や
十月二十日 ホトトギス同人会。芝白金台町 、八芳園。
十月二十六日 物芽会。八幡前、博雅。
秋晴や心置きなき人ばかり
十一月十日 大仏句会。大仏殿。
洛北の
十一月十一日 草樹会。大仏殿。
十一月十六日 大崎会。英勝寺。
古書
十一月十八日 土筆会。草庵。
萩その他糸の如くに枯れにけり
十一月二十六日 句謡会。高木邸。
ぶら/\と
十二月二日 玉藻俳句会。
起り来る事に備へて
十二月七日 偶成。
移り住む田舎の地図や年始状
十二月八日 偶成。
石庭に魂入りし時雨かな
この庭の
十二月九日 草樹会。八幡二の鳥居前、浅羽屋。
一本の
十二月十日 偶成。
わが癖や右の火鉢に左の手
十二月十二日 大崎会。英勝寺。
十二月十六日 土筆会。草庵。
忘るゝが故に健康老の春
鎌倉の
枯れてなし
十二月三十日 晦日会。扇ヶ谷、香風園。
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冬日あり
一月十七日
岩壁に
一月二十九日 玉藻会。英勝寺。
我れが行く天地万象
落椿紅白にして
その後とは花に別れし後の事
大麻唯男氏を悼む
君が来し門椿咲きつゞきをり
二月十一日
東山西山こめて花の京
二月二十五日 「東山」新発行所を得、橙重 に贈る。
謡ひやめ
世直りて草の
三月三日 おはん、小時、実花来り、老妻慰藉 。
或る時は梅
三月七日 どうだん会。好々亭。
閉ざしたる老の
三月十一日 偶成。
三笠宮両殿下に
北極の春の御空は
三月十五日
三月十七日 土筆会。草庵。
三月十八日 句謡会。高木宅。
離々として
三月二十一日 上海すみれ会。二ノ鳥居前、浅羽屋支店。
雪残る村の小家を打ち囲み
四月五日 金沢行。妙高附近。
四月六日 前夜高木泊。畠山招宴、謡会。金沢鍔甚 。
こゝに来て百万石の花見せん
四月八日 句謡会。高木宅。
立山の
この旅や故人の墓に皆
四月九日 福野行。
花の雨強くなりつゝ明るさよ
四月十日 金沢、あらうみ句会。
四月十一日 松任 在北安田、明達寺。松任、聖興寺。金沢、浄誓寺を訪ふ。
月尚和尚
なつかしき仏なりけり起きぬけの気むつかしさや花の雨
四月十一日
妙高の雪は雲間にまかゞやき
四月十二日 帰途。
草の戸を叩きて又も花の雨
四月十四日 草樹会。大仏殿。
清閑といふばかりなり花下に僧
四月十五日 成田行。
春雨の音に目ざめし旅がへり
四月十七日 物芽会。英勝寺。
花にやゝ遅れたれども
四月十九日 大崎会。英勝寺。
唯今
四月二十一日 新人会。草庵。
四月二十九日 兄、池内信嘉追善能。記念一句。
五月五日 銀行協会俳句会。建長寺。
年を経し我が身なりけり明易き
五月十二日 草樹会。大仏殿。
毛虫ゐる樹下と思ひて立ち止り
五月十三日 句謡会。高木邸。
大夏木打ち立てりけり我れ
五月十五日 物芽会。英勝寺。
五月十九日 土筆会。草庵。
線と丸電信棒と田植傘
夏草に
五月二十七日 新潟行。室長泊り。二十八日、赤羽岳王居俳句会。岳王招宴。行成亭。
しわ/\と
五月二十九日 新潟、橋本春霞居俳句会。春霞招宴。
前山の緑かたまり庭に飛び
六月九日 草樹会。大仏殿。
なすことも無く
六月十二日 大崎会。英勝寺。
車降り我と夏木と
六月十四日 物芽会。覚円寺。
打たんとてもの
六月十六日 土筆会。草庵。
春蝉や
六月十七日 宝文会。東京杉並、米川邸。
六月二十三日
月落つる西の空我が古里と
七月十日 偶成。
母がせし
掛香の女男も昔かな
七月十三日 土筆会。鹿野山神野寺。
かびの
三方に庭石分れ
大景を座断してをる
七月十四日 同。
昼寐せん
昼寐する我と逆さに蠅叩
新しく全き
同日 もの芽会。
湯を
七月十五日 同。
籐椅子は
我生の美しき虹皆消えぬ
同日 大崎会。
夏山に対して朝の息をする
七月十六日 同。
俳諧の
七月二十九日 地元句会。山中湖畔、山廬。
こゝに
七月三十日 草笛会。山中湖畔、山廬。
朝の
七月三十一日 句謡会。
年々に月見草咲き家建たず
避暑に来てもつとも暑き日と思ふ
同日 草笛会。
八月一日 草樹会。山中湖畔、山廬。
夏山の姿正しき俳句かな
同日 上海すみれ会。
山荘のテラス
八月二日 同。
同日 稽古会。
雨戸引き忘れて銀河山の
避暑の荘富士山を皆持つてゐる
八月三日 同。
忘るゝが故に健康ほとゝぎす
八月四日 同。
天の川雨戸の外にかゝりけり
一
九月二日 大久保橙青主催、唐沢樹子 法務大臣就任祝賀会。鎌倉、和光。
九月八日 二百二十日会。和光。
ほどけゆく一塊の雲秋の空
秋の雲大仏の上に結び解け
九月十五日 草樹会。大仏殿。
朝顔を
九月二十二日 土筆会。草庵。
九月二十五日 句謡会。高木邸。
秋の雲浮みて過ぎて見せにけり
十月二日 京都東山橙重居。知恩院の句碑を見、橙重庵の句碑を見る。立子と共に。
松原の続く限りの秋の晴
十月四日 敦賀 行。立子と共に。気比 の松原。
(二村は地名)
十月五日 芭蕉の遊びたる色ヶ浜に遊ぶ。
芭蕉忌の
秋風にもし色あらば色ヶ浜
十月五日 色ヶ浜本隆寺。芭蕉忌法要。
十月六日 京都に行く。柊屋泊り。十月七日、年尾居に行く。玉藻句会。盲泊月来る。
十四日月明らかに君は逝く
十月七日 柳原極堂死す。(陰暦八月十四日。子規の逝きたるは同じく陰暦十七日なりし)
十月十三日 草樹会。大仏殿。
秋の空濁るといふにあらねども
十月十六日 大崎会。英勝寺。
露もなく枯れ/\にある萩の
露の玉
十月二十八日 句謡会。高木邸。
十一月九日 大仏句会。大仏殿。
わが
十一月十日 草樹会。大仏殿。
年々の枯萩の色見はやさん
枯菊に愚かな杖の立てゝあり
十一月十八日 山口笙堂 、鹿野山住職就任祝賀会。華正楼。
掃く時も
十一月二十日 大崎会。英勝寺。
庭
十一月二十四日 土筆会。草庵。
我が庭や冬日健康冬木健康
十一月二十五日 草笛会。覚円寺。
貧乏の昔恋しや三ヶ日
十二月一日 偶成。
枯萩を刈りのけし跡萩の
十二月八日 草樹会。八幡、二ノ鳥居前、浅羽屋支店。
祖母の世の裏打ちしたる
十二月九日 偶成。
冬枯の庭淋しさや下りて見る
十二月十一日 物芽会。長谷、浅羽屋本店。
ほこ/\と落葉が土になりしかな
十二月十二日 偶成。
園丁の
十二月二十七日 十五人会。三十日、晦日会。其他。
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一月十二日 上海すみれ会。鎌倉八幡二の鳥居、浅羽屋支店。
冬梅の香の一筋の社頭かな
一月二十二日 宝文会。代々木、初波奈、新築茶室。
梅が香の脈々として伝はれり
二月十五日 明治座再建成る。新派興行。需 めに応じて六句。
門を出る人春光の包み去る
春空の下に我れあり仏あり
春の空
三月九日 草樹会。大仏殿。
直線の堂曲線の春の山
三月十二日 大崎会。英勝寺。
咲き満ちてこれより椿
三月十六日 土筆 会。草庵。
その昔
三月十七日 大手ビル竣工 。句を徴さる。
大空に春の雲地に春の草
三月二十九日 句謡会。高木邸。
四月六日 土筆会。草庵。
花見にと馬に
四月十三日 身延 に行く。
白糸の滝の
四月十三日 草樹会。裸子句会。孰 れも身延山にて催す。身延行にて得たる句出句。四月十四日、白糸滝を見る。
野に遊ぶ
四月十六日 物芽会。覚円寺。
老いて
四月二十七日 甘木、秋月の句碑除幕に列し、門司行。二十八日、関門トンネル開通祝賀句会列席の為め門司岡崎旅館泊り。二十九日、夜汽車帰東。
夏蝶の高く上りぬ
五月十日 大仏句会。大仏殿。
五月十四日 水竹居忌。東京、はん居。
白波の一線となる時涼し
見るうちに人ふえ夏の浜となる
五月十八日 土筆会。長谷、鎌倉ホテル。
かりそめに人入らしめず
五月二十六日 川崎大師、句会。
五月二十六日 本堂改築竣工。
ふだん
六月一日 草樹会。大仏殿。
六月四日 大崎会。英勝寺。
裏門に立てば
六月九日 句謡会。京都南禅寺、木村。
夏山の東山あり京に来し
六月十日 句謡会。東山、麗水荘。
夏山の
六月十五日 土筆会。鎌倉ホテル。
六月十五日 艶寿会出句。
六月二十三日 北海道行。札幌。
青きところ白きところや夏の海
六月二十三日 小樽銀鱗荘「望海」。
鎌倉は海
六月二十九日 三菱俳句会。本覚寺。
緑蔭に境内の
七月六日 銀行協会。大仏殿。
七月十九日 鹿野山神野寺、夏行句会、第一回。
歯塚とはあらはづかしの落葉塚
我生の七月二十日歯塚立つ
歯塚
七月二十日 午前、第二回。
涼風に円座あり他は無用なり
同日 午後、第三回。
山寺の一現象の
雨戸すこしあけ
七月二十一日 午前、第四回。
女涼し窓に腰かけ落ちもせず
廊涼し書院小書院
七月二十六日 句謡会。遊行寺 。
八月八日 土手貴葉子を悼む。
洗面所
新涼や道行く人の声二つ
新涼や眼鏡をとりてあたり見る
八月十日 玉藻夏行句会。婦人子供会館。午前。
二階より
同日 午後。
浅草に無く鎌倉で買ふ走馬燈
八月十一日 夏行句会。二日目、午前。
よしありげ
同日 午後。
香水の香にも争ふ心あり
香水に孤高の香りあらまほし
香水のあるか無きかの身だしなみ
八月十二日 夏行句会。三日目、午前。
突として
我思索つく/\法師鳴くなべに
同日 午後。
それ故に
客去れば庭に現れ
八月三十一日 草樹会。大仏殿。〈七月九日鴎外忌〉
いつもこの紺朝顔の垣根かな
雲のみねわきてそだたず山のはし
九月三日 大崎会。英勝寺。
草に
露深く育てし虫の
九月十二日 物芽会。
秋の蝶色を見せつゝとびにけり
秋の蝶茶室の軒を渡りけり
秋暑し
九月十四日 二百二十日会。和光。
秋の蚊は
踏石に置く蚊やり
藤豆の
九月二十一日 土筆会。英勝寺。
秋の野の其の紫の
松虫の物語あり虫すだく
九月二十九日 句謡会。鎌倉明治寮。
秋雲は老の心にさも似たり
源平池
玄関の
十月一日 物芽会。八幡宮社務所。
ほのかなる空の
秋風は
二タ寺の境はこゝや秋の山
十月十日 大崎会。英勝寺。
白雲のち切れしところ秋の空
十月十二日 草樹会。大仏殿。
雨露を
十月十九日 土筆会。
十月二十四日 句謡会。婦人子供会館。
我杖の
立つても見
十一月二日 同人会。鎌倉、華正楼。
十一月三日 自衛隊会。若宮荘。
光りつゝ冬雲消えて
十一月八日 大仏句会。大仏殿。
時雨るゝとたゝずむ
我心歩き高ぶる時雨かな
十一月九日 草樹会。大仏殿。
むかご
水
十一月十二日 物芽会。野田武夫邸。
門松を立てゝ静かに世にあらん
子規墓参今年おくれし時雨かな
十一月十二日 新年四句。
谷々の家々にある冬日かな
十一月十六日 土筆会。英勝寺。
我が額冬日
十一月十九日 大崎会。英勝寺。
よき炭のよき灰になるあはれさよ
十一月二十二日 句謡会。婦人子供会館。
余す年いくばくも無き初鏡
同し道歩み来りし老の春
十二月六日 新年の句。
母が餅やきし火鉢を恋ひめやも
洋間にも長火鉢置き意を得たり
よき人によき火鉢をと思へども
十二月七日 十五人会。小庵。
埋火の絶えなん命守りつゝ
十二月十日 大崎会。英勝寺。
別の間に違ふ客ある
十二月十二日 間組 俳句会。草庵。
新居とも人や見るらん年新た
冬浪の
十二月十四日 草樹会。浅羽屋支店。
風雅とは大きな言葉老の春
十二月十四日 新年の句。
梅の
初空や東西南北
初空を仰ぎ
十二月十七日 物芽会。浅羽屋支店。
傷一つ
十二月二十一日 土筆会。英勝寺。
十二月二十五日
元日や午後のよき日が西窓に
初夢のうきはしとかや渡りゆく
十二月二十五日 新年の句。
君は君我は我なり年の暮
ふとしたることにあはてゝ年の暮
十二月三十日 三十日会。香風園。
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吉兆を
一月十一日 上海すみれ会。於鎌倉、浅羽屋支店。
梅あるが故に客も来
白梅の老木のほこり今ぞ知る
一月二十二日 鎌倉探勝会。虚子庵。
梅の客椿の客や
花多き今年の梅の
庭梅の今を盛りと老にけり
老梅の
白梅に住み
二月二十三日 坤者、大寒、秀郎、白水来。年尾、立子も共に。
あしびあり残る雪ありたたずまひ
我一人ありて
(註 以下三句句帖より)
灯をともす
テーブルの下椅子の下春の闇
二月二十八日 如月 会(三輪田)。和光。
寺維持の尼の願ひや牡丹の芽
此椿花多かりし思ひ出で
三月三日 大崎会。英勝寺。
三月八日 草樹会。大仏殿。
思ひ川渡りしといふ花便り
三月十日 玉木豚春より。
梅古木石の如くにかたかりき
三月十五日 土筆会。英勝寺。
三月十八日 物芽会。長谷観音客殿。
三月二十九日 如月会。八幡宮。
幹にちよと
椿大樹我に面して花の数
鎌倉の草庵春の嵐かな
英雄を弔ふ詩幅桜生け
春の山
三月三十日 句謡会。婦人子供会館。
三月三十日 句仏 十七回忌。