特殊部落と通婚問題
喜田貞吉
旧幕時代には、エタ非人と普通民との通婚は、国法の禁ずるところであった。これを犯して処罰された実例は別項「エタに対する圧迫の沿革」中に述べておいた。今や国法上に於ける差別は全然撤廃せられて、所謂特殊部落と普通民との間の結婚は、自由に行われて然るべき筈である。また事実に於いてそれが行われている場合もある。「遠州奇聞老人報告」の地方の如きその最も著しいもので大正六年の調査によるに、部落外との結婚数四百五十二件を計上している。しかしそれを同年間の部落内結婚数一万四千五百六十九件に比すると、僅かに総数の三十二分の一にしか当っておらぬ、しかもそれが大阪朝日新聞神戸付録記者の説によると、しばしば悲劇を伴っているというのは遺憾である。元来結婚の事は別問題で、「筋」が違うという理由で円滑に行われない場合が多い。これについて自分は不日沿革的研究を発表してみたい積もりである。
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