小堀遠州といえば、先ず第一に京都の桂離宮を思い出す人も多いことであろう。また、お茶の世界になじんでいる人々は、ここに掲げたような墨蹟や、あるいは遠州作の
茶杓花入れを思い浮べる人も多かろう。総合芸術家としての遠州は、広く芸術のあらゆる部門に優れた仕事の足跡を遺している。信念に成る力強さと同時に、洗練された才気が静かな輝きを放っている。
遠州の書は定家に類した書風で有名だが、
隷書は独得のものである。漢隷にも明隷にも拠る所なく、純粋の幽風を成していて、
石川丈山と共に一家を成しているのがうれしい。殊に、茶碗その他、箱書付に見る隷書は、すばらしい能書として尊敬するに足る。
(昭和二十七年)