この刺激食品は香味と辛味がすばらしい特色を持っているところから、成年以上の大人になると、たいがいはこれを好み、日常食膳に喜ばれていることはご承知の通りだ。実さんしょうの佃煮(から煮)はよく知られているが、実さんしょうも[#「実さんしょうも」は底本では「実山椒も」]味噌漬けとなると、あまり知られていないのではないだろうか。この点が珍しいところだ。
若実さんしょうを「辛味噌[#「辛味噌」は底本では「から味噌」]」に三年漬け込んだものは、酒肴としてはもちろんのこと、お茶漬けの副菜としてもこの上なしといえよう。さんしょうは若実、若芽(キノメ)でなくては価値がない。お茶でいえば、玉露にあたるような上等の新茶がよいのである。
(昭和八年)