碇泊船

今野大力




船腹の色のはげ落ちたみじめさは
遠く波濤とたたかって来た
今は疲労になやんで
ぐったりと体を伸べたような
いたわりの心を感ずる
廃船のようではないか
英蘭イングランドの旗を船尾に立てて
見れば船員が二三人
甲板に出て立っている
あの船員の眼は碧く
頭髪かみは褐色に染み
彼ら異邦を航海する人々
雪降り暮るる港にあり





底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
   1928(昭和3)年5月31日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年2月20日作成
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