高窓に見える青空

……(ブタ箱にて)……

今野大力




小さな高窓
高窓に見える青空
この青空に走っている無数のラジオの声
ブル共はそのラジオで
相場の上下を語り
奴隷の歌をうたわせながら
満洲パルチザンの活動に驚愕のニュースを飛ばし
国際聯盟の脱退を問題にしているだろう、だが、それより
おれたちのこの小さな高窓に見る青空にはすべての日に
あのモスクワのコミンターン(国際共産党)の大放送塔から
おれたちプロレタリアのために闘う世界中の同志の耳へ
輝きにみちた勝利のニュース
中国プロレタリアートの前進や
極東における強盗どもの
反サヴェート戦争のインボーを報じているだろう
そしてそこからは
おれたちの偉大な指導者
スターリン、マヌイルスキー、ロゾフスキーの声もきこえてくるだろう
おお、おれたちはあの青空から
その声なき声をこそ聴こう

一九三二・四・一六





底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
初出:「文学新聞」
   1932(昭和7)年5月15日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年2月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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