母を飢えさせ
妻子を飢えさせ
幼き弟を稼がせて
どうやら俺のいない家が保たれている
「
共同井戸の水さえくさってまずい
芋を煮て
仏壇に捧げようとも
心から、真に生命の
諦めぬうらみをこめて手向けとなり
俺が死なないように
むざむざとうらみの手に殺されないように
無言のいのりがひそんでいる
平和な家庭――生活、
平和な生存、
おしゃべりなしの真剣な愛、
他人を
他人と助け合い 他人と共に
輝やかしい生活を夢む
母や妻の胸に、
俺は全身の血潮を感ずる
誰か妻を、いとしき愛妻を
誰か子を、わが血の通
誰か母を、俺を生める肉親の母を、
見捨て 見放し
街頭にさらし得るものぞ
歴史の流れ
たたかいのうずまき
かまびすしき
戦争と革命の時代に生れてきて
明日のわがかばねは冷たくなるとも
止むに止まれぬ確信にもえて
たたかわんとする意志の力
母よ 妻よ 子よ 弟よ
俺は達者でいる
俺は生きている、たたかいの中に。