高峯の頌

今野大力




荒蕪の平原に野を耕し
草をみ、木の実をくらえる
人類生存の現象は
高峯の麓にありて
あまりにはかなき生命……
盛夏白熱頂点に達せんとするも
未だに消ゆるなき
雪原の輝きは
天地創造の第一年より
永遠なり
人類生命、億劫おくごうに至るも
一切は幻滅に帰り
無し――一切無し
成体もこれ大地の化身なれば
霊魂も又瞬間にして
遺る何物もあらざるべし
されど
高峯は歴史を超え
時代を超えて永遠……





底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
   1924(大正13)年7月21日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年3月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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