おっぱい

小川未明




 あかちゃんが、おかあさんの おっぱいを すぱすぱと のんで いました。そばで みて いた つねちゃんは、
「おいしそうね。」
と いいました。
「おまえも こう して のんだのですよ。」
と、おかあさんが おっしゃいました。つねちゃんは きゅうに おちちが こいしく なりました。
「あたしにも のましてよ。」
と、おかおを だすと、あかちゃんが、
「ううん。」
と いって、おこりました。
「いじを つついては いけません。」
と、おかあさんが おっしゃいました。
あかちゃんの いじわる。」
と いって、つねちゃんは おもてへ いきました。
 おとなりの よしおさんと あそんで いると、かぜが ふいて きて、ごみが お目目めめに はいりました。
「ぼくが とって あげよう。」
と、よしおさんが とろうと しましたが、とれません。よしおさんが、つねちゃんを おうちへ つれて きて あげました。おかあさんは、
「よしおさん、ありがとう。」
と おっしゃいました。
 つねちゃんは よく お目目めめを あらいました。
「おちちを さして あげましょう。」
 つねちゃんは おかあさんに だかれて、おっぱいを たらたらと お目目めめに いれて いただきました。
「もう、よく なった?」
と きいて、そばで みて いた よしおさんも おっぱいを こいしそうに ながめて いました。





底本:「定本小川未明童話全集 16」講談社
   1978(昭和53)年2月10日第1刷発行
   1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:Juki
2012年7月16日作成
2012年9月28日修正
青空文庫作成ファイル:
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