ゴンドラの唄

吉井勇




唄(若い澄んだ少年の聲。)
いのちみじかし、こひせよ、少女をとめ
あかくちびるせぬに、
あつ血液ちしほえぬに、
明日あす月日つきひのないものを。

いのちみじかし、こひせよ、少女をとめ
いざりてふねに、
いざゆるきみに、
ここにはたれぬものを。

いのちみじかし、こひせよ、少女をとめ
なみにたゞよひなみに、
きみ柔手やはてかたに、
ここには人目ひとめないものを。

いのちみじかし、こひせよ、少女をとめ
黒髮くろがみいろせぬに、
こゝろのほのほえぬに、
今日けぶはふたゝびぬものを。
(吉井勇氏作『ゴンドラのうた』――この一節をイタリアの俗謠ぞくえうの調に依つてうたふ。)





底本:「脚本その前夜」新潮社
   1915(大正4)年4月24日発行
初出:「新日本 第五卷第四號」冨山房
   1915(大正4)年4月1日発行
※表題の唄は、1915年4月下旬芸術座第5回公演『その前夜』の第五幕第一場で松井須磨子によって歌われました。
※「唄(若い澄んだ少年の聲。)」と「(吉井勇氏作『ゴンドラのうた』――この一節をイタリアの俗謠ぞくえうの調に依つてうたふ。)」は、脚本のト書きです。
入力:大久保ゆう
校正:The Creative CAT
2022年10月26日作成
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