![表紙絵](fig54917_01.png)
![口絵1](fig54917_02.png)
![口絵2](fig54917_03.png)
ステファニーへ いとこの Bより
![挿絵1](fig54917_04.png)
むかしむかし つりびとジェレミーさんという かえるが おりました。 すまいは いけの ほとり、 キンポウゲに かこまれた じめじめした こやです。
![挿絵2](fig54917_05.png)
くらも、 うらぐちへ つづく ろうかも、 みずで びちゃびちゃ つるつる。
けれども ジェレミーさんは おみあしを ぬらすのが すきなのでした。 だれに おこられるでもなし、 かぜを ひくでもなし!
![挿絵3](fig54917_06.png)
あるとき おもてを みると、 とっても うきうきしてきまして。 だって めのまえで おおつぶの あめが いけに ぱしゃぱしゃ ふっているんですから ――
![挿絵4](fig54917_07.png)
「みみずでも つかまえて、 つりにでも でかけて、 ばんごはんに もろこでも 1さらぶん とるか。」と つりびとジェレミーさん。「5ひきよりも おおく とれたら しりあいでも まねくか。 じじがめトレミーさんに いもりやアイザックさまだな。 まあ、 じじがめさんは やさいしか くわんけども。」
![挿絵5](fig54917_08.png)
ジェレミーさんは あまがっぱを はおって ぴかぴかの あまぐつを はきました。 さおと かごを とって、 ぴょーん ぴょーんと おおきく はねながら こぶねを とめてあるところへ むかいます。
![挿絵6](fig54917_09.png)
それは まるく みどりの こぶねで、 まるで ふつうの スイレンの はっぱと みわけが つきません。 いけの まんなか みずくさに くくりつけてあったのです。
![挿絵7](fig54917_10.png)
ジェレミーさんは アシのくきを てにして、 ふねを みずの ひらけたところへ おしうごかしていきました。「うむ、 もろこには うってつけの つりばが あるな。」
![挿絵8](fig54917_11.png)
ジェレミーさんは くきを へどろに つきたて、 そこへ こぶねを とめます。
そのあと あぐらを かいて つりぐの したく。 おきにいりの あかい うき。 さおは じょうぶな くさの くき。 つりいとは じょうもので しろげの うまの ながい かみ。 さきに うねうね ちいさな みみずを とりつけました。
![挿絵9](fig54917_12.png)
あめが ぽつぽつ せなかに おちるなか、 こいちじかん じっと うきを みつめます。
「たいくつに なってきた。 ここらで おひるにでも したいかな。」と つりびとジェレミーさん。
![挿絵10](fig54917_13.png)
いけの そこを ついて みずくさの あたりへ もどり、 かごから おひるを とりだしました。
「ちょうちょの サンドイッチでも たべて、 にわかあめが やむまで ゆっくりでも するかな。」と つりびとジェレミーさん。
![挿絵11](fig54917_14.png)
そのとき でっかい げんごろうが スイレンの はのしたに あらわれて あまぐつの つまさきを ぐっと つまみました。
ジェレミーさんは かいていた あぐらを せばめて とどかないようにして、 また サンドイッチを たべていきます。
![挿絵12](fig54917_15.png)
ちょこちょこ なにかが いけのわきの イグサのあたりで かさかさ ばしゃばしゃ うごきまわっていました。
「ねずみじゃあ ないな、 ぜったい。」と つりびとジェレミーさん。「どうも ここから はなれなならんかな。」
![挿絵13](fig54917_16.png)
ジェレミーさんは ふねを つきうごかして ちょっと ひきかえし、 えさを たらしました。 すると いれるなり かみついてくるものが あって、 うきから ぐいぐい ひきが つたわってきまして!
「もろこ! もろこだな! こっちのもんだな!」と つりびとジェレミーさんは こえを はりあげ、 さおを ひっぱりあげます。
![挿絵14](fig54917_17.png)
ところが なんとも まったく びっくり! ふっくら すべすべ もろこのかわりに ジェレミーさんが つりあげたのは、 はりだらけの とげうお、 とんがりジャックくんでした!
![挿絵15](fig54917_18.png)
そのとげうおは こぶねで じたばた、 あげくに ちくちく ぴちぴち。 いきぎれするや また みずに とびこんでしまって。
![挿絵16](fig54917_19.png)
みていた こざかなの むれが あたまを のぞかせ、 つりびとジェレミーさんを おおわらい。
![挿絵17](fig54917_20.png)
それから こぶねの へりに すわったまま やるせなく ―― いたむ ゆびを なめ、 みずのなかを のぞいていると ―― もおっと ひどいことが おこりまして。 ジェレミーさんが あまがっぱを はおってなかったら ほんとに おそろしいことに なってたかも!
![挿絵18](fig54917_21.png)
すんごく でっかい ますが あらわれて ―― ざばっ ―― ばばっ ―― ば ―― ば ―― ば! みずしぶき ―― そして ジェレミーさんを あむっと くわえて 「あう! うわ! ああぁ!」―― と、 そのあと また ひるがえって とびこんで いけのそこへ ずぶずぶずぶ!
![挿絵19](fig54917_22.png)
とはいえ ますは あまがっぱの あまりの まずさに 30びょうと たたず はきだして、 のみこまれたのは ジェレミーさんの あまぐつだけでした。
![挿絵20](fig54917_23.png)
ジェレミーさんは みなもに むかって ぴゅうん、 にげるさまは まるで たんさんを あけたときの せんと あわみたいで。 いけの はしまで ぜんりょくで およいでいきました。
![挿絵21](fig54917_24.png)
とにかく たどりついた きしを よじのぼって、 ずたずたの あまがっぱを きたまま くさちを ぬけて ぴょこぴょこ うちへ いちもくさん。
![挿絵22](fig54917_25.png)
「よかった、 あれが かわかますじゃのうて!」と つりびとジェレミーさん。「さおと かごを なくしてもうた。 だが たいしたこたあない。 もう ぜったいに つりになんか ゆくものかいな!」
![挿絵23](fig54917_26.png)
ゆびの あちこちに ばんそうこうを はっていると ともだちが ふたりして ばんごはんに やってきました。 おさかなは だせませんが、 くらには ほかのものが あります。
![挿絵24](fig54917_27.png)
いもりやアイザックさまは くろ・きん まだらの チョッキを きていました。
![挿絵25](fig54917_28.png)
それと じじがめトレミーさんは あみぶくろに はやさいを もちこみです。
![挿絵26](fig54917_29.png)
もろこの ごちそうの かわりに ―― いなごの あぶりやき てんとうむしソースぞえを みんなで たべました。 かえるには たいへんな ぜいたくなのです。 けれども わ・た・しの くちには きっと あわないでしょうね!
(おしまい)