ねこぬこタムのはなし

THE TALE OF TOM KITTEN

ベアトリクス・ポッター Beatrix Potter

おおくぼ ゆう やく




表紙絵

口絵1
口絵2
いたずらっこの みんなへ ささぐ
―― とくに うちの にわの へいを のぼる こどもたちへ

挿絵1
 むかしむかし 3びきの こねこが おりました。 なまえは ミトンズ、 ねこぬこタム、 モペット。
 みんな それぞれ けなみも みじかく ふわふわ かわいらしく、 とぐちの あたりで ごろごろ、 ほこりを たてつつ たわむれます。

挿絵2
 ところが あるひ みんなの ママ ―― ぐいぐいタビサ ―― が おともだちを おちゃへ まねきました。 そこで こねこたちを うちのなかに いれて、 おきゃくさまが つくまでに よごれを おとして きがえを させようとしたのです。

挿絵3
 まずは かおを ごしごし。(このこは モペット。)

挿絵4
 そのあと けなみの おていれ。(このこは ミトンズ。)

挿絵5
 しあげに しっぽと ひげを すきます。(このこが ねこぬこタム。)
 タムは とっても やんちゃで やたらと ひっかくのでした。

挿絵6
 ママの タビサは モペットと ミトンズに あらいたての エプロンドレスと えりかざりを きせます。 つぎに タンスの ひきだしから、 すてきだけど きちきちの ふくを さまざまに とりだして、 むすこの タムの きがえを かんがえました。

挿絵7
 ねこぬこタムは ぷくぷく ふとって おおきくなっていましたので、 ボタンが いくつも はじけとんでしまって。 おやとして また ぬいつけることに。

挿絵8
 3びきの こねこの したくが できると、 ママの タビサが あろうことか みんなを にわへと だしてしまって。 バタートーストが やきあがるまでの やっかいばらいの つもりだったのですが。
「いいこと、 ふくを よごさないこと! うしろあしだけで あるくように。 はいだめは きたないから ちかよらない、 それから へにぺにサリーにも、 あと ぶたごやも、 みずかきさんたちにもね!」

挿絵9
 モペットと ミトンズは ふらふら にわの こみちを くだっていきます。 たちまち エプロンドレスを ふんづけて、 はなから じめんに つっこんで。
 たちあがったときには みどりの しみが あちこちに!

挿絵10
「あっちの いわの おにわに のぼって、 へいに こしかけよっ。」と モペット。
 エプロンドレスを うしろまえにして ぴょんぴょん スキップしながら いきました。 モペットの しろい えりかざりが みちばたに おっこちます。

挿絵11
 ねこぬこタムは ずぼんを はいたままの うしろあしでは うまく とべず、 あるくしか ありません。 いわの にわまで ゆっくり すすみながら、 しだを ひっかけたり、 ボタンを みぎにひだりに ぽろぽろ おとしたり。

挿絵12
 へいの てっぺんに たどりつくころには もう どこもかしこも むちゃくちゃで。
 モペットと ミトンズが ふたりして タムを なんとかしようと しましたが、 ぼうしは ぬげるわ のこった ボタンも はじけとぶわで。

挿絵13
 と、 なんぎしていると そこへ ぺたぺた みずかきの あしおとが! つづいて 3びきの あひるが かたい じめんの おおどおりを あるいてきまして、 れつに なって あしを のばしたまま ―― みぎ ひだり ―― ぺっぺっ たんたん! よちよち よたよた!

挿絵14
 3びきは たちどまり、 よこに ならんで こねこたちを みあげます。 そのちいさな めは びっくりしているみたいで。

挿絵15
 すると 2ひきの あひる、 みずかきリベカと みずかきジェマイマが ぼうしと えりかざりを ひろいあげ、 じぶんたちで かぶってしまって。

挿絵16
 ミトンズは おなかを よじらせ、 へいから おっこちました。 モペットと タムも あとを おって したに おります。 エプロンドレスも のこった タムの ふくも まとめて そのときに ぬげおちて。
「ねえ! みずかきドレークさん。」というのは モペットです ――「こいつの きがえ てつだってよ! タムの ボタンを とめるの!」

挿絵17
 みずかきドレークさんは よこあるきに うごいて、 いろいろあったものを みんな ひろいあげました。

挿絵18
 ところが それを ぜんぶ じぶんで きてしまって! すると タムいじょうに あわない にあわない。
「うむ、 ごきげんよう!」と みずかきドレークさん。

挿絵19
 そうして みずかきドレーク、 ジェマイマ、 リベカの 3びきは みちの さきへと すすみだしまして ―― あしなみ そろえて ―― ぺっぺっ たんたん! よちよち よたよた!

挿絵20
 そこへとうとう ぐいぐいタビサが にわへと やってきて、 へいのうえで はだかになっている こねこたちを みつけたわけです。

挿絵21
 へいから ひきずりおろされ、 おしおきされ、 こねこたちは うちへと つれもどされました。
「おともだちが もうすぐ つくっていうのに、 これじゃ ひとまえに だせないわ。 はずかしい。」と ママの ぐいぐいタビサ。

挿絵22
 3びきは うえのかいへと つれていかれ、 あんまりなことに ママの おともだちへは はしかで ねていることに されまして。 もちろん うそです。

挿絵23
 まったく それどころか、 ねていないどころの はなしでは なくって。
 どういうわけか ほんとうに おかしなくらい ひどい ものおとが うえから してきまして、 おちゃかいは ふんいきも おちつきも だいなし。

挿絵24
 と ここまで。 ねこぬこタムの おはなしは またいつか もっと おおきな ほんで おはなしすることに なるでしょう!

挿絵25
 さて みずかきさんたちですが ―― そのあと いけに ゆきまして。
 ボタンが なかったから ふくも ぜんぶ そのまま ぬげおちてしまいまして。

挿絵26
 それで みずかきドレークさんと ジェマイマと リベカは いまだに ずっと さがしているのですよ。

(おしまい)





翻訳の底本:Beatrix Potter (1907) "The Tale of Tom Kitten"
   上記の翻訳底本は、著作権が失効しています。
   2011(平成23)年8月20日翻訳
   2011(平成23)年11月16日微修正
※この翻訳は「クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス」(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/)によって公開されています。
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翻訳者:大久保ゆう
2014年3月26日作成
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