狸の化けた憑いたは皆大いなる寃罪で、永い間人と狸との感情を疎遠せしめて居た主因は「カチ/\山童話」であつたと云ふことが、此頃漸く明瞭ならんとするのは自他の爲慶すべき傾向である。狸は人間に於て渡瀬理科大學教授の外に、更に一箇の有力且つ善良なる同情者を得た。それは史蹟天然記念物保存會の戸川殘花翁である。翁は此頃タヌキ考の稿本を自費印刷して我々に頒ち、狸が我々に取つて百の愛すべきあつて一つの憎むべき無きことを理解せしめんと努力して居られる。而して猶全國の同志と聯絡を取つて不當なる誤解を匡正し、且つ今後は大に彼の隱れたる好意を利用しようとせられるのは、大體に於て我々の賛意を吝まざる處である。今些しく二團體間の不幸なる關係に就て史的考察を下すに、垂仁紀の足徂の侵撃以來我々が犬を以て最も信頼すべき附庸と認め、其軍事行動に對し注意深き
