田木繁に

槇村浩




(前半紛失)

このエピソードを思い出すたびに、わたしらはなぜか最近のあなたの詩を思い出さずにはいられない
昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている
同志田木繁、こんな猫が、あなたの地区の工場の行きすがりに、ふっと道を横ぎりはせぬだろうか
自分自身に限界性をくぎるたびに、何かしらこんなものかと思い出してくるものだ
昔のあなたの「拷問に耐える歌」が、あんなに愛誦されている世の中に
あの記録的な「松ヶ鼻の渡し」の闘いを、なぜまた精悍に開始してはならぬだろうか

―一九三五・八・三―





底本:「槇村浩詩集」平和資料館・草の家、飛鳥出版室
   2003(平成15)年3月15日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年3月8日作成
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