山の驛

櫻間中庸




汽車がきてます山の驛
驛長さんと機關手と
お話してます立つたまゝ
生れたお國のことなどを

馬もきてます馬車の馬
プラツトホームは山つづき
月見草など咲いてゐて
虫がこもつて鳴いてます

まもなく出るでせうあの汽車は
時計をみてます驛長さん
空をみながら機關手は
機關車の方へ歩きます

雲が近くてこの驛は
汽笛の音がふくれます
トンネルからきたあの汽車は
またトンネルに入るでせう





底本:「日光浴室 櫻間中庸遺稿集」ボン書店
   1936(昭和11)年7月28日発行
入力:Y.S.
校正:富田倫生
2011年9月27日作成
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