茴香

末吉安持




ながつき下浣すゑの日のゆふべ、
山下やました岩根いはね垂る水の
玉のしづくにさねぐみて、
かつみこぼしいはひつゝ、
かぜぬかづく茴香うひきやう
あゝ姉妹おとゞびの二人もとよ。

化石くわせきもすらむあき
骨立ほねだごは呼吸いきつまり、
天つ御法みのりのおん宣告つげに、
ねては、はぢも葉こそれ、
孕婦はらみめながら茴香うひきやう
優婆夷うばゐか、なやいろもなし

つれにはぐれし赤蟻あかあり
ゑてゆむ湿しめに、
あはれがおのおとどひは
くも[#ルビの「くも」はママ]なよらにぬかづきて、
手弱腕たよわがひなにそと乗せつ、
弘誓ぐせいもさこそ、あゝ茴香うひきやう





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年5月27日作成
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