文月のひと日
末吉安持
黒檀のみどり葉末に、
そよ風ながう滑りて、
自然の魂塊藍に
薫りとぶ真夏の昼。
金糸雀にうまゐ醒めて、
夢の世に追ひわびたる、
やわらぎの霊の華を
いま紫陽花にみとめつ。
昨夜詩に寝ね足らぬ
瞳細ういと細う、
わが世永久にかゝらばと、
おもひ入る、あゝ夢心地。
この刹那のたましひを
黄金の龕にひめて、
ひと日だにいつき得なば、
あゝ我ぞ詩のやさ男神。
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