夏の日

末吉安持




真夏まなつひる片日向かたひなた
苔すこしひぢばみ青む捨石すていしに、
鳩酢草はとかたばみ呼吸いきほそしずく湿うる
ちぬ、かつ喘息あへぎつゝ。

そのかみれにちひさなる
さがて、またなれひて、その熟実うみみ
かつこぼし、かつちて、
いづかた精進さうじたまぞ。

鳩酢草はとかたばみはえも知らず、
捨石すていしに。――小雨こさめのあとのかぜいきれ、
木々きゞみなぬとにはに、ひとりしづか
おほどかにゆめに入るさま。

蚊帳かやめぐれる名香みやうかうに、
手枕たまくらもひたせて病める身の
横臥よこふしぬ。心こそ、鳩酢草はとかたばみ
たましひにさながら似たれ。

かぜまたくゆ小雨こさめしぬ。
鳩酢草はとかたばみも、一日ひとひ
天地あめつち幸福さいはひありき。





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年6月27日作成
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