赤兵の歌

江森盛彌




俺達は一度に声を挙げて集まって来たのだ、
反動××の軍旗をへし折って来たのだ、
真っ青になって口も利けなくなった師団長の
高慢なシャッポを蹴飛ばして来たのだ。
俺達は目まいのしそうなビルディングの足塲から下りて来たのだ。
俺達は街の鋪道から――
地下工事の泥水の穴の中からい出して来たのだ。
俺達は汽関車の胴の中から
煤だらけの顔をしてやって来たのだ。
俺達はボイラーの前からスコップを投棄てて来た。
俺達は「就業中面会謝絶」の工場から、
屋根までガタガタ呻らせる動力を止めて来たのだ。
俺達は飢餓の中から
俺達は軒の下から
俺達は寒気の中から
一度に声を挙げて集まって来たのだ!

さア、時が来たんだ!
素晴らしい生活が始まるんだ!
もう昨日の惨めな俺じゃないぞ。
昨日の俺じゃないぞ。
いいか、いいか、いいか!
しっかりやれ!

クレムリンへ向ってブッ放された、
最初の一発!
疾風のように、広場を横切って走った、
最初の×旗!
――さア! 合図だ!
心の底に蓄積されていた全ての欝憤、
復讐と、怒りと、憎悪を、
爆発させろ!

俺達の生きた肉をムシャムシャ喰った奴等。
勲章とシルクハットの反動××共。
泥棒の分前を、
気に入りの片隅で楽しんでた奴等、
あの忌々いまいましい「満足してた」奴等を、
×してしまえ!
国境の外へ押し出せ。
プロレタリヤの祖国を
母を妹を子供達を、老人達を
此の革命××
守れ!

資本家が、地主が、貴族が、坊主が、
俺達の首っ玉を引きずって
吹雪の、戦線に追いやったのではないぞ、
俺達の雨脚は雪の中で石のように凍っているのに、
レーニンは自動車で並木道を滑って行く、
――割が悪いと、ブツブツ云う奴は恥じろ!
ああ! 一人ぽっちだった俺、
失業と餓死の脅怖におびえた眼で、
入口の守衛の顔をオズオズ見ながら
牢屋のような鉄の格子の窓の中で、
働いて居た俺、ボロボロの青服の俺、
投捨てられたように助けのない者だと思っていた俺。
だが、今は知っている!
今は知っているぞ! 俺は唯の一人なのではない!
俺はプロレタリヤだ!
レーニンは俺の足で、俺は彼の腕なのだ。
俺はパリのコミュンの時から生きていた。
そして地球と一緒に、
太陽と一緒に、
いつまでも生きて行くだろう!





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「労農詩集」マルクス書房
   1928(昭和3)年7月
入力:坂本真一
校正:石津大介
2012年12月21日作成
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