血を越えてゆく

松本淳三




われら 血を越えてゆく
はらからが流したる
くろき血をぞ 越えて尚ゆく

おそろしき権力は
ゆくてをふさぎ
するどき刃は
たえず頭上にひらめけども

あらしの如く
泉のごとく
石をおしわけ 春 芽をふく草の
力に似て
彼岸を遠く
たのみ且つ信じ

ああ われら血を越え
たゆまずゆく
はらからに続き また
はらからを後に率いて――
(『種蒔く人』一九二一年十月号に発表)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「種蒔く人」
   1921(大正10)年10月号
初出:「種蒔く人」
   1921(大正10)年10月号
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年9月1日作成
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