壊滅した――と言う
そうかも知れないと思う
健在だ――と言う
そうかも知れないと思う
地下に追込められたものは
益々深く地下に潜り込んだのだ
俺達にはてんで見当がつかなくなったのだ
灰色の空にちぎれ飛んだ
午前六時の川風が
雪交りの雨を赤煉瓦に叩きつけ
肩をすぼめた俺達の行列が
鉄門の外にまだ長くつづいていた
泥んこの
癪に触るから大股で歩いて行く
口の開いた
ビラが落ちて来た
顔を上げると頭の上に
赤や黄のビラが舞っていた
風が一吹き強く吹いて
むこうを見た
厚いコンクリの塀が立ってるだけだった
何処から舞って来たのか?
どんな人が撒いたのか?
俺達は知らなかった
「俺達の中に居る人かも知れぬ」
――だが、たしかに、今、此の手に
俺達はビラを握っている
日本共産党のビラを!
これは夢じゃない
そら、ひっぱたかれたら痛かろうが?
本当だ!
肌へつけときな
よし……いやもう一度見て
左の下の隅の五つの文字
見つめていると
レーニンの顔になって
笑い出して
躍り出して
ぼやけた……
いけねえ、涙で鼻がつまって
ピチャピチャ……急に足音が高くなり
行列が騒がしくなった
俺達は胸を張って工場に入ってった
俺達はプロレタリアだぜ!
眼の底に染みついた
頭の心に焼きついた
この五つの文字――それが
胸の中を引掻きむしる
お出でなすったな、監督さん
パイ公連れてさ。
出すもんかい、
これあ俺達の御守だ。
………………
へん、ざまア見やがれだ!
俺達は見た
俺達は知った
俺達の党は健在だ!
俺達はやけに嬉しいんだ
(おお、その胸に抱かれているのは
地下に健在な党がチラリと見せた
小さい四角な、赤い横顔 !)
地下に健在な党がチラリと見せた
小さい四角な、赤い
(一九三〇年三月六日作 『戦旗』同年六月号に発表 一九三一年八月戦旗社刊『一九三一年版日本プロレタリア詩集』を底本)