歓喜

中野鈴子




思っただけでも胸がおどる
裸一貫のわたしらが堂々と乗りこんでゆき

おお
このわたしら
わたしらのタコだらけの手
真黒に焼けたおでこ

ただ一つの心臓
二本の足
二本の腕に
あらゆる権力と最上の美しさを打ちたてる日
働いて笑える
働いて肥える
おお
その日、その世界よ
思っただけでも胸がおどる





底本:「中野鈴子全詩集」フェニックス出版
   1980(昭和55)年4月30日初版発行
底本の親本:「ナップ七人詩集」白揚社
   1931(昭和6)年12月23日発行
入力:津村田悟
校正:夏生ぐみ
2018年11月24日作成
2021年5月28日修正
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