あつき手を挙ぐ

中野鈴子




都会、町、部落、
何処にも
朝鮮の人たち満ち溢れ
働き  たたかい
生活を打ち立て

話す言葉 国語正しく
われら朝夕
親密濃く深まりつつ

出征、入営を送る折々には
先んじて旗振り、万歳を叫ぶ
朝鮮の人たち

朝鮮の人等
手に力こもり、唇は叫びつつ

心の底に徹し得ぬものがあるならん
常にわれかく思い 心沈みし


朝鮮に徴兵制布かる

こころ新たに
あつき手を挙ぐ





底本:「中野鈴子全詩集」フェニックス出版
   1980(昭和55)年4月30日初版発行
底本の親本:「国民文学」
   1942(昭和17)年7月号
初出:「国民文学」
   1942(昭和17)年7月号
入力:津村田悟
校正:夏生ぐみ
2019年5月28日作成
2021年5月28日修正
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