闇と光と

中野鈴子




時間は流れていたのだ
囚われたまま
盲目となったままに

恐ろしい事実の成立
その日々
よみがえった自覚
日にさらされ
心を閉じ
身をさいなむ
このように
絶対な
過失 捺印
日にいく度
生きがたい闇の淵に立つ

しかもなお
胸に抱く
一つのかがり火
ひろがり照る
時代の暗雲に堪え
辛苦と犠牲を越えて
高く広く
新しき世界
新しき建設
困難とはげましと遠い長い里程
小さい大きいたくさんの仕事
仕事に役立つ
小さき働き手としての願い
一つのあくがれ
信念の星
最後の最大のかがり火

闇に立つ
わたしを呼ぶ
立ちはだかって呼ぶ





底本:「中野鈴子全詩集」フェニックス出版
   1980(昭和55)年4月30日初版発行
底本の親本:「中野鈴子全著作集 第一巻」ゆきのした文学会
   1964(昭和39)年7月10日発行
初出:「文学案内」
   1936(昭和11)年10月号
※初出時の表題は「闇と光」です。
入力:津村田悟
校正:かな とよみ
2024年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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