〔風船に〕

森川義信




風船にひつぱられて 小鳥は中空たかくのぼつていつた
風船はくるめく日傘をまはし あたたかな銀の雨を降らした
小鳥はむしやうにうれしくなり 力いつぱいそのすずを鳴らした
それにしても風船にのれない重たい心――ぼくは丘のクツサンの中でじたばたする
あばらに生えた青麦の芽をむしりながら





底本:「増補 森川義信詩集」国文社
   1991(平成3)年1月10日初版発行
初出:「ルナ 13集」
   1938(昭和13)年4月
※初出時の署名は「山川章」です。
※〔〕付きの副題は、作品の冒頭をとって、ファイル作成時に加えたものです。
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年3月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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