季節抄

〔葩束を編みながら〕

森川義信




葩束を編みながら美しく羞むひとよ
夕べバルコンの影の跫音の言葉なら
はるかな愛情も匂ふでせう

  ★

梢に鴉の喪章はゐない***
新しいアアチの青貝路にペンキの響き
自転車で春の帽子がかけてくる

  ★

樹樹の梯子を登りをりして歌ふものたち***
花に飾られた日射しの緑のブランコの
優しい肩にのりあなたは空まで駈けあがる

  ★

雲がじぶんでドアをあける
光りにまじつて小鳥の声もおちてくる
やはらかい枝や影がぼくを支へる





底本:「増補 森川義信詩集」国文社
   1991(平成3)年1月10日初版発行
※〔〕付きの副題は、作品の冒頭をとって、ファイル作成時に加えたものです。
入力:坂本真一
校正:フクポー
2019年8月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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