樹樹

森川義信




つつましい文字のやうにその指を組み
いま じぶんの脚で立つてゐた
空にとどいた梢に
天使のやうな雲がふとつつかかる

花の咲かない樹樹は
そのほそい指のあひだから
おびただしいいのちを零した
38.11.20





底本:「増補 森川義信詩集」国文社
   1991(平成3)年1月10日初版発行
初出:「荒地 第四輯」
   1939(昭和14)年11月
※初出時の署名は「山川章」です。
入力:坂本真一
校正:フクポー
2020年1月24日作成
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